白の披瀝


 主君が望むならとしているだけで、俺自身はこういう行為には淡白な方だと思っていた。


 主君の固くそそり立つ隆起で柔らかい体内を何度も擦られ穿たれる度、どうしようもなく跳ねる腰と、堪らず唇から溢れる媚びと艶を纏った自分の声。身体中を巡る刺激は快感だけでなく、隣り合わせの苦しさをも伴っていて、気持ちいいのか辛いのか分からなくなる。

「もう、……ゆるし。しゅ……く」

 これ以上は無理だと限界を訴え、自分より薄い胸を手のひらで押し、体を引き離しながらもうやめて欲しいと懇願するが、いたずらっ子の様な無邪気な笑みでその願いは虚しく却下された。

「そんな蕩けた顔でやめてくれと言われてもな、タケミカヅチ」

 鍛え方が足りないんじゃないかと言われたが、そういう問題では無いだろう。こんな事、誰にでも許したりはしないのに。


 君だから。君だからこそ、俺は自身を明け渡したんだ。


「う……あ、ああっ!」

 また高みへと導かれ、一瞬真白に視界が霞む。同時に吐き出す精はすでに薄く、申し訳程度の量しかない。収縮した肉壁の動きに呼応するように、埋め込まれた主君の物が爆ぜた。


 じわりと下腹部に広がる熱を感じながら繋いだ身体を離そうとして、ふと終わりを迎えた寂しさに囚われた途端、俺の内で再び力を取り戻していく陽物に驚きが隠せない。

「タケミカヅチ」

 主君はその腕で俺を引き寄せ、真剣な表情で言葉を紡ぐ。

「本当にお前が嫌がっているのなら、無理強いはしないし、したくない」

 頬や額、髪、目蓋、唇に触れるだけの口づけを次々に落とし恥ずかしさに惑う俺を置き去りにしたまま、さらに言を重ねていく。

「俺は、お前の感じてる顔や姿に欲を、想いを煽られて止まらなくなる」

 未だ萎える事無く上を向いたままの、体液で滑る俺の一物に指を這わせながらいつもと違いうっそりと笑んで囁く。

 お前が、足りないのだと叫んでいると。手が、足が、眼差しが、心が、身体中がもっともっと欲しいと訴えているのだと、そう告げた。どこまでも緩やかで無慈悲な真実が、自身の胸の内に突き刺さる。


「タケミカヅチ……お前はお前が思っている以上に、ずっと淫らで欲深い存在だよ」


 暴かれた本質に眩暈を覚えながらも、俺はそれに抗おうとはせず、目の前の主君を自分の腕に閉じ込める。

「気付かせるなんてひどいな、君は。だったら……最後まで責任を取ってくれ。俺を満足させてくれるんだろう?」

 潤む瞳で滲む主君が頷いたのを確認し、俺は自分から口付けた。再び熱を身に纏い、淫らに乱れ溺れていこう。粘着質な水音と高く鳴いた自らの嬌声を背に、歪の中で微笑みながら――。

2017/09/13
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