への確執


 ルーは普段からかっこいいし、背が高くて頭も良い。褐色の肌にざっくりと編んだ金色の髪と非常に目立つ外見の上、嫌みなくらい整った顔立ちと、青い瞳から放つ理知的で涼しげな眼差しは、多くの者を惹きつける。

 自警団の元、一隊員の自分。今は第三部隊の隊長になったとはいえ、基本ごく平凡な作りの自分としては、未だにルーといわゆる恋人同士になった事に内心動揺を隠せない時が有るのは、俺だけの秘密だ。


 ルーの身体に跨った俺を寝転んだ状態の彼が見上げている。嬉しそうな視線が全身の至る所に絡み付く。普段は仏頂面なくせに、どうしてこんな時ばかり、俺をそんな愛おしげな目で見つめてくるのか? ただただ恥ずかしくて、非常に居たたまれない気持ちになる。

 今、改めて自分を見たとしたら、きっと朱色に染まっただらしない姿を晒しているのだろう。そう意識したら羞恥のあまり、いっそ眩暈でも起こして倒れてしまえばいいのにと、どこか他人事な感じで考えてしまう。

「たまにはこうやって、下からお前を見上げるのも悪くないな」

 改めてそう言われると、ますます顔が赤くなる。今の自分は今から腰を下ろして、隆々と猛るルーの一物を自らの体内に収めようとしているのだから。飲み込み切れない唾液が荒く短い息を吐く口の端を伝う。

「あ……まり、見る、な……あぁ、っ!」

 焦れた彼に腰を掴まれ、ぐいと引き寄せるように落とされる。自身の重みも加わって、一気に最奥まで貫かれ、閉じた目から生理的な涙が辺りに飛び散った。

「いきな……なんて、卑怯、だ」

 滲む視界の向こう側で、上体を起こしながら笑っているであろうルーをキッと睨む。

「悪い。恥じらうお前が可愛いから、つい我慢できなくなった」

 少しも悪いとは思っていない表情を浮かべながら、頬に触れるだけのキスをして俺が馴染むまで待ってくれるが、その先を知ってしまっている身としては、緩やかな責め苦として苛んでいくだけだ。

「もう、大丈夫……から、動、て……ほしっ」

 自分から言うのは、はしたなくねだっているみたいで好きじゃないけど、そうする事でルーが喜んでくれるから。照れ隠しにぎゅっときつく抱き締めると、小さく笑う声と微かに伝う振動。

「俺を煽るのが随分上手くなったな、どこで覚えてきたんだ」

「……ルー以外、いるわけな、」

 ーーいるわけがないだろう、バカ。

 そう反論しようと開いた口は彼からの口付けと動きで敢え無く封じられた。巡る熱に抗う事無く、俺も合わせて腰を揺する。重なった二人の水音と心音が、耳を伝い身体を高みへと導く。

「ル、るぅ。もう……イキた」

「ああ、一緒にいこう。緋沙留……」

 体内の最奥に叩きつけられる白い飛沫は、まるで嵐の様な激しさと熱さを中に残し、沈む。


 慣れない恋に惑う俺を翻弄し、自分の腕の中に閉じ込めたお前は、本当に狡いと思う。

 だけど、好きになってしまったから。

 完璧に見えた、ルーの弱さと傷に寄り添いたいと。そう、俺自身が願ったから。だから、これからも側に居る。

 お前の隣で、離れずここに居るよ。


 分け合う体温の心地良さに微睡みを覚えた俺は、ルーの長い髪を少しだけ掬い唇を一度落としてから、そのまま深い眠りへと溶けていった。


あなたに寄り添う、
私でありたい。


2017/09/15
----------------------------
▲text page