※ただのギャグです。酷い。


それは本当に、災難としか言いようがなかった。
「しーずちゃん!」
後ろから聞きなれた大嫌いな声がおかしなテンションで聞こえて、てめぇ臨美、と怒鳴る前に背中にぽふんとぬくいものが当たる。
驚いて振り返るとそこには俺の腰に手を回し、背中に顔をこすりつける臨美の姿があった。なんだこれ。
咄嗟にフリーズした脳内。
俺は折原臨美が嫌いである。殺したいと思っている。臨美も俺を殺したいと言っていて、よく刺される。お互い殺したいと思っている存在なのだ。なのに、
「えへへしずちゃんー」
ぐりぐりと額を背中にこすりつけられる。臨美の髪の毛がぐしゃぐしゃだ。
満足したようにひときわぎゅーと抱きついてくる臨美は顔を赤くして息も荒くて、つまり
「酒飲んだなてめえ…」
ものすごく完璧に酔っぱらっていた。
「のんでないよー!」
「超酒の匂いすんだがな…」
何がおかしいのか臨美はあはははと楽しそうに笑った。まぁ酔っぱらいなんて皆そういうもんだろ。
こんな酔っぱらいを相手にするのも馬鹿らしいので、あいつが離れるまで俺は突っ立っていることにした。それが悪かった。
「しずちゃん眠い…」
「はぁ!?」
「…寝る」
あろうことか、奴は俺の背中にだきついたまま器用に寝始めようとしたのだ。え、何、立ったまま人って寝れるもんなのか。って今はそれどころじゃない。
「おい臨美、起きろお前!!」
「やら…もお動けない…」
「どんだけ飲んだんだてめえはあああぁ!!」
さすがに堪忍袋の緒が切れた。力づくで背中にへばりつく臨美を引き剥がした。ぐらりと後方に倒れかけるそいつの手をひっぱって立て起こした頃には、周りからの視線がものすごいことになっていて。
そりゃそうだろう、あの平和島静雄と折原臨美がこんなことになっているのだから。
「ふへ、しずちゃん…」
ふやけた笑いを浮かべる臨美。やめろそんな顔すんなお前顔だけは良いんだからなんか変な気分になるだろうが!
とにかくこのまま人の目にさらされるのは厳しすぎる。諦めた俺はふらふらな臨美を引き連れ路地裏を通った。
後ろからぽてぽてとついてくる臨美がものすごい静かだ。普段からこれだけ静かならまだ可愛げがあるのに。
初めて見る酔った臨美は、ふだんとは考えられないくらいにかわいかった。
「しーずちゃんー」
「…なんだよ」
「今日泊めてぇ」
真横の壁にこぶしがめり込む。
こいつ 今 何て
硬直する俺の背中にぶつかったのか少しのうめき声が聞こえた。馬鹿じゃねえのこいつ、可愛い。  とか思ってない。
ぎぎぎとおかしな音をたてて振り返った俺の胸にすがりつくように体を寄せてきた臨美。なんか柔らかいものがあたるとか、ないないない。
「電車乗るのめんどくさい…」
いやねえよねえよだってこいつほら折原臨美だしうんありえねえ、べつにそういう顔とかかわいいとか思ってねえから断じて。
「ねえしずちゃん」
「泊めて?」
顔をあげて赤い頬でそう言った臨美が目に入った瞬間、普段の俺はどこかへ消え去ってしまった。


100419
これ、実は企画用に書いたものだったり…
余りにもリクエスト内容と違ってしまったのでこちらにまわしました
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