「殺せよ」
それが情事の後真っ先に言うことだろうか

「んだよ突然」
「何殺せないの」
ベッドの端に座っていまだ仰向けに寝転がっている臨也に視線を移すと、紅く鋭く光る眼とぶつかった。
にやり、なんて擬態語がぴったりな歪み方をした唇はやけに艶かしく、最中の様子を思い出させる。ぞくりと背中を這い上がってきたのは嫌悪感と肉欲であった。
そこまで挑発されて俺が黙っている筈もない。そもそも俺はこいつを殺したくて殺したくて仕方がなかったのだから、願ったり叶ったりな展開なのだ。
抵抗しないことを示すかのように両手を左右に放った臨也の上に覆い被さる。そのまま両手でその細く白い首をやんわりと掴んだ。
じわじわと力を込めてゆくと次第に奴の顔が歪んできた。が、嘲笑するその口の形だけはそのままなのだから驚いた。ひやりと脳が冷えてゆくのを感じる。
首は掴んだまま右の親を顔に伸ばした。唇下の窪みをなぞると臨也が身動いた。長い方である指でも唇には届かなかったらしい。
今ここでこいつを殺したら、この温い熱も柔らかい唇も固くなって冷えてしまうのだろうか。そうに決まっている。
それは困るなと思い手をゆっくりと開いた。げほごほと臨也が咳き込む。見れば顔は大分赤く染まっていて眼球には膜が張ってあった。ぼんやりしているうちにどうやら大分危ない所にまで来ていたらしい。
あと一寸、力を込めていたら。長く熱を味わっていたら。一瞬力を込めるだけでもよかった。崖ぷちに立たされた人間を軽く押せば落ちるように、それほどまで簡単に、こいつは白い美しい無害な人形と化していたのだろう。
美しいだけものは俺にとってただ不気味であって、つまりこいつには少し毒が入っている位が丁度いいのだろうか。毒を受けるのはごめんだが。というか毒が全身に回って死ねばいい。

まるで俺が手を離すことを予測していたように臨也は両目を細めて笑っていた。

100337

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