「…あの、」
「イザ姉ほっそーい!ちゃんと食べてんの!?」
「棒…」
「てゆーかお前軽すぎんだよ」
今の状況を一言で言うと、うん、重い。
左腕にマイル、右腕にクルリがひっついていて、後ろには静ちゃんの背中があたっている。なんだこれ。
後ろの筋肉バカが体重をかけてくるので重さでつぶれそうになるが、左右にも軽いとはいえ男子高校生がいるので碌に動けず正直辛い。
両手に花ってあるけどそれは女の子にだけ使える言葉でいくら顔がよくたって野郎には使えないんだよこの男共!!

どうしてこうなったのか、事の起こりは約一時間前、私の家でくつろいでいた静ちゃんと私の元に突然双子が押しかけてきたのだ。
「やっほーイザ姉、あ静雄さんもこんにちはー!」
「姉…」
「会いたかったよイザ姉―!」
静ちゃんの存在なんか目に入らないかのように私にばかり構ってくるこの双子は、我が弟とはいえ肝が据わりすぎていて怖い。案の定静ちゃんは殺気だしてるし。
「マイル、クルリ…」
「なぁにー?未来の義弟に何するつもりなのかな?」
「恐」
火に油どころかガソリン撒くような行動は本当つつしんでくれ。今のでキレて家具とか壊さなかった分前より静ちゃんは成長しているのだろうか、あとでご褒美に頭でも撫でてあげよう。
そんなことを考えていると、いきなり左右に人の温かみ。カーペットに体育座りしている私の左と右に、双子がそれぞれ寄りかかってきたのだ。
「ちょ、」
「あー、あったかーい!ここ寒くてさぁ」
「…熱」
いやいやここ十分暖房効いてるからね、もし寒いのだとしたらこんな真冬に学ラン一枚だとか体操着にジャージとか変な服装してるお前らが悪いから!
しかし、この状況は結構不味い。ただでさえ独占欲の強い静ちゃんのことだ、そろそろほんきでキレるのではないだろうか。
恐る恐る静ちゃんの方を振り返ってみると、そこには何故か怒っても切れてもいない、不機嫌そうな顔をした静ちゃん。思わず拍子抜け。そんな様子もちょっと可愛い。
と、静ちゃんは何を思ったのか私の後ろに座って背中あわせの体制になる。背中同士がくっついてあたたかい。
「あれあれー?静雄さんどうしたの?」
「謎」
「なんでもねえよ」
なんでもなかったらそんなにこちらに寄りかかってこないと思うのですが。そう思っても言えるはずもなく、私は仕方なしにさっきまで読んでいた本に目を移した。
双子が何読んでるのーなんて密着度を上げてくると、逆に静ちゃんはよりこちらによりかかってくる。双子が離れれば多少背中は軽くなる。二人は隙を見て私の腕をひっぱるが、それも静ちゃんとの密着度を上げることになるということに気がついたようで、仕方なしによりかかってきた。
「静雄さんちょっとイザ姉に寄りかかりすぎじゃなーい?」
「姉…折…」
「折れねえよ、前から俺と色々やってんだから鍛えられてる」
「えー何!?静雄さんイザ姉に何してんの!?イザ姉大丈夫DVとか受けてない!?」
「してねえよ!」
「だいたい静雄さんてちょっと独占欲強すぎじゃない?」
「幼」
「嬲り殺すぞ…」
  なにこれ、かわいい。
思わずにやけ顔になりかけたが左右にいる双子の存在を思い出し、慌てて頬を引き締めた。
正直この三人があって碌なことになったためしがないけれど、なんかこんな風に取り合いみたいなのされるのも悪くなかったりとか思、「ちょ痛い重い腕引っ張るな寄りかかるな!」
悪くなかったりとか思わないこともないけど、それは私に害の及ばない場所でお願いしますまじで。


100407
リクエストが静雄VS性転換双子だったのですが…あれ?
どこら辺がVS…というか最早ただの取り合いですすみません!
こんなもので申し訳ありません…
リクエストありがとうございました!

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