「だからね今治せるような薬はなくって時間がたたないと治らないただだだだだだだだ」
「んだと…?」
「いだいいだい静雄ちょっと手首が折れるから!!」
「静ちゃん新羅の手が折れたらもう治療してもらえないよ」
「……チッ」
ぱ、と離された新羅の右手首は青く変色していて痛そうだったが自業自得である。
静ちゃんに連れられて新羅の家に押しかけたとき、扉を開けて一瞬目を見開いた新羅だったがすぐにこうなることがわかっていたかのように中へ入るのを促してきた。
手首を押えてセルティセルティ嘆く新羅より、来客用のソファにどっかりと座りこんでいる静ちゃんのほうが余程この家の主らしい。
「いつ治るんだ」
ようやく痛みが落ち着いたのか、向かいのソファに浅く座る新羅、ちなみに俺は静ちゃんの隣に座っている。
「あー…薬を飲ませてから今もう三週間くらいたったから、たぶん一週間くらいじゃないかな?」
「…………」
少なからず不機嫌さのにじみ出る表情をした静ちゃんだったが、俺はいまいち静ちゃんの意図が読めずに困っていた。
彼は女の俺の見た目が好きなのであって、だったら男に戻らないほうが好都合な筈なのに、どうして。
奥の部屋から電話の音が響く。慌ててとりにいく新羅の背中を見送っていると、突然静ちゃんが寄っかかってきて、え何これ。触れている場所が熱い。新羅がいなくてよかったと思ったがもしかして新羅がいないこそやってんのこれ?
「し、静ちゃん?」
「……ざけんなよ」
「は?」
片手を閉じた目の上に押し当てて、唸るように眉をひそめる静ちゃん、かっこいいとか思ってないしまぁ思ってるけど。はぁ、とひとつ盛大な溜息をついたのち目の位置を合わせてしっかりと目をあわせてこられて慌てる。
「一週間も持たねえ」
何をだ、と聞く前に、あ、 煙草の香り。
入り込んできた舌に自らのを絡め、お互いの唾液が混ざりあう。すごいドキドキする顔が熱くなるちょっと気持ちいい、静ちゃん好き。
少し苦しくなったところで離された濡れた唇を見詰めながら、酸素を補充。こぼれた唾液は静ちゃんは手でぬぐった。
「お前、さっさと治れよ」
「…え」
「えってなんだえって」
「いやだって」
君が好きなのは女の俺の見た目じゃないの
そういった途端静ちゃんはこの世の終わりみたいな顔をしていて、ああ今の写真に収めておけばよかったと思っても遅すぎる。頬を抓られひぎゃ、なんて声が出た。静ちゃんにとってはかなり手加減したほうだと思うけど俺にとっては痛すぎるんだよ。
「しひゅひゃんいひゃい」
「てめえ…わかってると思ってたんだが何もわかってねえな…」
「ひょ、いひゃいいひゃいっひぎれるっ」
ぐいぐいと引っ張られてちょマジ痛い痛い
静ちゃんが何に怒っているのか判り兼ねる。なんで俺今こんな目にあってるんだ。
ようやく離されたと思ったら、熱をもったそこにひんやりとした掌があてられた。反対側にも同じように、つまり顔を両手で挟まれて目をあわされている状態。はずい。
「俺は手前が好きだっつったんだが」
「…うん」
「それは手前が女だろうと男だろうと変わんねえ」
「……ん」
「言いたいことわかったか?」
わかった。と、思う。その証拠に今ひどく体が興奮している。うまく声がでない。
「俺、男 だよ?」
「知ってる」 
「性格、最悪だよ?」
「知ってる」
「…それでもいいの?」
答えの代わりに降ってきたのは甘い口づけで、もうやだこの人何なのかっこつけめ。
でも、そんなかっこつけが好きだったりする俺も大概だな。

「俺が好きなのは折原臨也だからな」
「うん」

ぎゅう、て上半身をひねった状態で抱きしめられたのはちょっとつらかったけど、そんなのも気にならないくらいなぜか嬉しかったのだ。


100403
砂はここにどうぞお吐きください(′・ω・`)_[バケツ]
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