そうだ 好きなのだ、
自分が男の時からこの男だけは大嫌いで、裏を返せばそれは大好きというその想いだったのに、気づくのが遅すぎた。
俺が今更好きだと言ったところでもう遅いだろう、俺は今まで散々静ちゃんに酷いことをしてきて、そもそも静ちゃんがすきなのは俺じゃない、きっと折原臨也の精神が宿っただけの美しい女の姿に決まっている、静ちゃんホモとかじゃないし。
そう思うと途端に悲しくなって、またじわり、ああもうやだ。
「、ん、」
顔を両手で包まれて、上を向かせられてキスをされる。ドキドキする、顔が赤くなる、胸が痛くなる。ものすごく嬉しくなって、それと同じくらい空しかった。
唇同士が触れ合うだけの幼いキスを数秒間続けて、やっと離れたところでどういう顔をしていいのか分からずに俯いてみると抱きしめられた。大嫌いなヤニ臭さと大好きな静ちゃんの香りが混ざった広い胸にすっぽりと収まってしまうくらいのこの小さな肉体が恨めしい。
静ちゃんが俺を好きでいてくれるのはこの体のときだけなのだきっと。
「臨也」
不可抗力とはいえ女になんかなるんじゃなかった
「好きだ」
男のままであったなら
「……好きだ」
この暖かさも響く声も香りもこの気持ちにさえ気がつくことはなかっただろうに。
散々泣いた筈なのに涙は止まらない、家に帰ったら水を飲もう。
ところでぎゅうと抱きしめてくるこの腕は一体いつになったら外されるのか。
いっそのこと永遠にこのままでいたい、できる限りこのままでいて、この感覚を覚えていたかった。そう思う反面これ以上いたらいけないと本能が叫ぶ、暖かさに慣れてしまったらもう二度と戻れないから。
「……あの「おい」?」
「新羅んとこ行くぞ」
恐る恐る言った言葉が遮られて、え、なんで新羅んち。
きょとんとした顔で、少し間をとって静ちゃんの瞳を見つめる。静ちゃんははじめてみる穏やかな顔をしていた。
「…なんで?」
「決まってんだろ」
くしゃりと頭をなでられた、ちょっと乱暴なその手つきが静ちゃんらしい。
決まってんだろ、といわれても静ちゃんは俺にだって予測不可能なんだからわかるわけがない。静ちゃんもそれをわかっているようで口を開いた。
「お前を男に戻してもらうんだよ」
「……は?」

ほんと、静ちゃんて読めない。


100331
短いですすみません
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