※少しだけぐろ?流血表現・暴力表現あり
※ちょっと背後注意


ふわりと浮いた体が背後の壁に叩きつけられて、痛みが全身に響く。そのままずるずるとお世辞にも綺麗とはいえない路地裏にへたりこんだ。
女を殴る趣味はないだとかほざいてなかったっけ、意識の薄らいできた頭でぼんやり考えるも、急に胸ぐらを掴みあげられて無理矢理に意識を戻される。痛い、あれだけ強く打ち付けられてこんなに痛いのに、今もまだ血が出てないのが不思議でたまらなかった。
「なに勝手に寝てんだよ、臨美ちゃんよぉ」
「ははは......ここで寝たら置いてってくれるかと思ったんだけどなぁ」
いつもの調子で軽口を叩くがずきりとした痛みが頭を貫き、顔が歪む。それを見て満足そうににやりと笑う静ちゃんはドSだ間違いなく。
今回はまじで殺されるかな、いやに冷静な仮定がよぎった。流石の私もこの化物には勝てなかったかなんて自嘲じみた笑みを浮かべてゆっくりと瞼を閉じる、と、
「――ッい!?」
首筋にちくりとした鋭い刺激が走った。慌ててそちらを見れば首元に金色が埋まっている。
えーとつまりなんだ、静ちゃんが私の首に噛みついてる、どこの吸血鬼。
ゆっくりと歯が離れる感覚がして一時の安心。そこはずくりと痛み少し赤いものが流れていた。
静ちゃんはというと両手で私の両腕を体に押さえつけていて、お陰で私は録な身動きがとれない。
「...今のなんなの」
「何となく」
「...あの、血」
「あ?あぁ」
血が出てるんですけどー、なんて文句を言ってやろうとしたのが怒らせてしまったのか、再びそこに顔を血か付けられ思わず目を瞑った。噛まれる。
しかし、そこを襲ったのは先程のものとは微妙に違うもの。
「ひッ!?」
どこかざらりとした生々しい感覚。
舐められた、のだ。静ちゃんが私の血、を舐めてる。
認識した瞬間背筋をぞぞぞっとおかしな感覚が走った。それは確かに嫌悪感。
「ちょっ、やだっ痛いやめてっ!、やめろっ」
「うるせえよ」
ごき。
鈍い音が体内から聞こえたと同時に、さっきとは比べ物にならない程の痛み。
「――――!!!!!っあああぁあぁッッ」
どうやら折られたようで片腕がえらく熱い。痛い痛い熱い痛い。情けないことにぼろぼろと流れ始めた涙は止まらなかった。
その間にも静ちゃんの舌は動き続けていて、えぐるように舌先で傷をつつかれると麻痺しかけた思考が再び目を覚ます。
「う、いた、い、やめて…」
体はもう抵抗を諦めていて、それは無駄だとわかったからではなく体に力が入らないからなのだ。
突然舌の動きがうってかわって柔らかく撫でるようなものに変わった。鎖骨近くまで垂れた血を舐めとられると、人の本能なのか思わず声が出る。
「…い、ぁ…や、……んんっ」
ちゅう、と傷口に直接口をつけられ血を吸い取られれば、感じたのは痛みと生理的悪寒と、おぞましいことに僅かな快感。身を捩るが意味などなかった。
その反応に気をよくしたのか、静ちゃんは傷口をちゅうちゅうと吸いだした、最悪やだやめて、しかも少しずつ位置がしたにずれていってる気がするし、怖い。
「ん…ふぅ、うぅっ…はぁ、んっ」
最後にちゅ、と一際強く吸いついてその唇は離れて行った。既に血は止まっているが首元には赤い跡が散々散らされている。
恥ずかしいが少し乱れてしまった息のまま目の前にいる男を強く睨んだ。
嘲笑をたたえた奴はすくりと立ち上がって私を置いて帰ろうとしたが、ふと振り向かれる。とっさに身構えると鼻で笑われた。
「舐めてやったんだよ」
「…は?」
「血、出てただろ」
それだけ言って路地裏を出ていく静ちゃんを私はただ茫然と見つめることしかできなかった。
え、何それ血舐めるとかありえない、っていうかその前に何で噛んだの、しかも舐めるだけだったら痕なんてつける必要ないじゃん、そもそも舐めるというか最後の方完全に吸ってたよね。
さまざまな疑問が雪崩のように押し寄せてくるも、それに答える男はもういないのだ。
混乱をおこしていた頭がようやく落ち着いたのか、鋭い痛みが戻ってきて思わず呻いてしまう。折れた腕を治しに新羅のとこに行こうと思ったが、そのまえにこの首はどうしようかと困ってしまった。
明らかに人のものとわかる噛み痕を折れていない方の腕の指で撫でるように触れると、ずきずきと痛い。
微かに覚えている噛んだ後の静ちゃんの顔は笑っていて、人の首噛んで舐めて吸って笑うとかどこの化け物だよと思ったのだが、忘れていた。
「静ちゃん化け物だったんだ…」
自業自得なのかも、当たり前すぎるその事実、大前提を忘れていた自分を嗤ってやったがやはり痛みは変わらなかった。


100316
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