※静ちゃんちょっとこわい。二人とも何かおかしい。



数日前に折られた両腕の痛みは既に慢性化してしまい今はもう何も感じない。
それに対し、昨日折られたばかりの右足は今もそりゃあもう痛くて堪らないのだ。
どうしてこんなことをするのかと聞いたことがあった。答えは貰えずに殴られてお終いだった。
ここに連れてきたとき男はお前が嫌いだからするんだ、と言っていたのを俺は今も覚えている。それは嘘であるということも知っている。
彼は俺が好きなのだ。だから、逃げないようにこうして足を折って手を折って目隠しもされて手錠や猿轡まで念入りにしているのだろう。それを考えて、まだ目がつぶされていないことに感謝した、だってされたら痛そうだし。足や手は折られても何時かは治るけど、眼は治らないんだよ。
四肢切断でもされたら終わりだ。そして男はそういったことも簡単に成し遂げてみせる狂気を持っている。これは発言にも気をつけないと、と心に刻んでおいた。
扉が開いた音がした。ビニール袋のかさつく音がするので、恐らく彼は今日の食事を買ってきたのであろう、俺の分と共に。
彼は俺を嫌いだ、大嫌いだ、殺す等と言っておいて俺を殺そうとはしない。食事だって用意して、おかげさまで俺は犯された後なんかは生きているのか死んでいるのか中途半端な状態となる。
この男とのセックスは嫌いだ。慣らしはするものの、痛くて苦しくて、でもそれと同じくらい気持ちいい。少しでも抵抗すれば俺の体の一部は無惨なことになるのだが。
「…おかえり、静ちゃん」
毎日繰り返すようにそれだけを言わされる。きっと彼は今満足そうな顔をしているのだ。頭をやんわりと撫でられて、ただいま、という声が耳に届いた。
彼が俺に発することを許す言葉は、おかえり、と喘ぎ声と、彼の名前と、
「静ちゃん、好き」
愛を欲した彼は俺に愛の言葉を言わせる。ちゅ、と軽いリップ音がして唇同士が触れ合った。
こんなことをしておいて最中にはちゃっかり俺の体を壊すのだから厄介だ。殺したいという感情でさえ今では彼に飼いならされてしまったらしい。軽く抱きしめられて体が軋む。
きっと近いうちに左足が折られるだろう。もしかしたら目を潰されて手足もなくなっているかもしれない。それでも彼を愛すことができるなら、側にいることができるのなら、されてもいいとさえ思える。
折原臨也は完全にこの男の所有物となるのだ。彼は俺だけを愛し、俺の世界は彼だけになる、他は何もいらなくなる。
とてつもなく盲目的な愛だが、それは同時に最高に純粋で一途で歪んだ愛なのだ。

100311
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