※オリジナルキャラが出てきます
※前後編です。後編は裏あり
※ギャグだと思います


恋人である臨美から電話を受けたのは日曜のこと、ちょうど昼飯を作ろうかとしている時間帯だった。
「静ちゃん、ごめんちょっと早く来て!」
「はぁ?」
「いいから、ちょっいいから早く!」
そんな風に完全に一方的に切られた電話を受けた俺は、仕方なく臨美の家へと行くことにしたのだ。
それが、始まり。

「……」
「あっおいこら食べ物で遊ぶな、っていうかちゃんと野菜も食べろ!」
「やぁだー!」
「…おい」
「あっ静ちゃん」
臨美の家へと一歩踏み込めば、本来なら聞こえるはずのない他の人間の声。というか、子供の声が聞こえる。訝しく思って中へと踏み込むと中には臨美の他にも一人、5・6歳ほどの年齢の子供がいた。
目が合った臨美は助かった、という表情をして俺の名を呼ぶ。つられてその子供も俺を見る。臨美と似た赤系統の瞳に、黒髪。少し臨美に似ている少年だった。臨美に襟首を掴まれ、今にも逃げ出そうともがいている。
まさか、まさかまさかこいつは。
「……お前のガキか!?」
「んなわけあるか!」

話を聞くと。
いつもこいつが仕事上世話になっている所謂お得意様という奴から依頼を受けたそうなのだが、それはそいつの子供を預かる、というものだったらしい。その子供というのがまたひと癖あって、苦労していたという。
「もうさぁ、着替え渡せば嫌がるしご飯食べさせようとすれば好き嫌いは多いし野菜は食べないし?」
「いや野菜はお前も食えねーだろ」
「うるさいよ」
先刻お昼をなんとか食べさせ、今その少年は昼寝をしている。名前を聞けば、劉灯というそうだ。臨美はぐったりと疲れたように仕事椅子の背もたれによっかかっている。
「子供って苦手なんだよねー、予測できないっていうか」
「へえ」
俺はどちらかといえば子どもは好きな方であるし、子供というか可愛くて小さいものが好きだ。ロリコンとかではないが可愛いと思うのは事実なのでそこら辺は理解してもらいたい。
「んー…」
「あ、起きちゃった?」
ふと後ろから声がしたので振り向けばそこには劉灯がいた、寝相のせいでTシャツが少しばかりよれている。まだ眠いのかうとうととした瞳を擦っているのでもう一度寝ればいいのにと思ったが、きっと一度起きてしまったからには二度寝というのは子供的にはしにくいのであろう。
「大丈夫?まだ眠いんじゃないの」
「平気…」
「そう?」
臨美は俯きがちな劉灯にかけよって、しゃがんで目線を合わせている。そういうところがやはり慣れているというかなんというか。
「じゃあ、何かおやつでも食べようっか」
そう笑いかける臨美は、綺麗だと思った。惚気だと言われるだろうか。

臨美の作った抹茶色のホットケーキをほおばる劉灯はやはり子供らしくてかわいい。口の横に少しかけらが付いていたのでごしごしとふき取ってやると、ありがとうと笑いかけられた。どこが生意気なんだ、可愛いじゃないか。
そう思って見つめていると、臨美からちくちくとした視線を送られる。
「…なんだよ」
「べっつに。ただなーんか劉灯くん静ちゃんに対していい子じゃない?」
「そんなことないもん!」
「どうだかー」
顔をよこにそむけため息をつきながら、はぁこれだから静ちゃんは、と臨美は言う。いや何で俺。しかしこのままだと間違いなく静寂が訪れてしまい、気まずくなることは間違いない。どうにかして話題をつなげようと思い何か言いたいことを考えていると、前から気になっていることがあったのでそれを聞いてみることにした。
「…なあ、これ何入ってんだ」
「え?」
「このホットケーキ、抹茶色してんだろ、抹茶いれたのか?」
「ううん、違うよ。青汁粉。」
思わず噴き出しかけた。今これで口内に何かものが入っていたら間違いなく噴き出していただろう。劉灯もぷるぷると震えている。
「え、え、え?これ青汁?」
「そうそう、割とおいしいって評判の通販で見つけた青汁粉なんだけどね、やっぱり直接だと辛いじゃん?でもケーキに入れると案外おいしくって。わかんないでしょ?でも栄養はあるし、これ結構いいよね」
「へー…」
野菜が苦手である臨美が褒める上に、野菜が苦手だと(臨美が)言っていた劉灯が気づかずに食べれた位なのだから、相当分かりにくくなっているのだろう。そういうところまで気が回るあいつはすごいと思った。
「うまいのか?」
「え?」
「いや、そのケーキ」
「…うん」
味が気になったので聞いてみたが、間があったのはきっと照れ隠しだ、小さく俯いている様子は年相応の少年に見える。そうか、と言っておけば劉灯は何を思ったのか突然手慣れた手つきで綺麗にケーキを切り分け、フォークにぶっさした。そしてそのフォークにささったケーキを、俺に向けて来る。
「…いる?」
「……いいのか?」
そう聞けばこくこくと頷く劉灯。ここで遠慮するのもなんだと思ったので、少しかがんで素直にフォークから口の中へと運んだ。これは俗に言う「あーん」というものなのだろうか。口の中にふわりとした甘みと抹茶のような風味が広がる、確かに本当にあんなものが入っているのかと疑いたくなるような味だ。
次に劉灯は、臨美にもそれを差し出した。一瞬え、と拍子抜けしたような表情を浮かべた臨美だったが、すぐに笑ってありがとうと言いながら再びそれを「あーん」式で食べた。もくもくと確かめるように食べてから、よかった大丈夫だったと劉灯に笑ったのを見て、俺が恥ずかしいことに少しばかりの嫉妬を抱いたのは秘密だ。




100706
次からぬるいですが裏です
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