※色々ねつ造しております

臨也の葬式はひっそりと行われた。

あいつの実家であるらしい池袋から少し離れた場所の、小さな町で行われたそれに参列者は殆どいなかった。当たり前だ、あいつは表の世界には知られてはいけない存在なのだから。それどころか、こうして死んでしまったことさえも裏のやつらに簡単にばれてはならないことだろう、つくづく面倒くさい奴だ。
意外だったの俺が思っていたよりもあいつを大事に思っている人間がいたということ。新羅はあいつの前で俯いていて、少なからずショックを受けていたということがうかがえた。運び屋もそれは同じようで、あまり前からノミ蟲を好きではないんだろうなとは思っていたもののさすがにいなくなれば辛いと思う。近くの壁によりかかってぼんやりと空を見つめている門田なんて見ているこちらまで息苦しくなってしまう程だった。
俺は、全く泣けなかったというのに。
泣けなかった、というよりは現実味がないとでも言うのだろう。あいつが、あのノミ蟲が消えてしまったという世界は酷く夢のように理想郷で歪んでいて、色がないのだ。そんな世界を信じられる筈がない。

あの田舎で、臨也の体温が著しく低くなっていた朝、俺は何も考えずにただ淡々と新羅へと電話をかけた。新羅は何も追求せずに只一言「わかった」とだけ言って、俺のいるところまでやってきて臨也を包んでいた。その風景さえセピア色になっていて、ぼんやりと霧がかかったようにしか思い出せない。

白くて冷たい手首を触った。
抜け殻のような奴の体を感じた。
全てが全て臨也のままなのに、そこに臨也がいないのを悟った。
どれもこれも感触をのこしていてそれらは確実に現実なのに、どれ一つとして信じられるものがない。
夢だと言われれば全てが終わってしまうような、そんな儚さ。

「静雄さん」

ふと、後ろから声をかけられて振り向くと俺の視点から随分としたに二つ並んだ頭が見えた。ノミ蟲に似た顔の、双子。マイルとクルリだ。
二人の目は真っ赤になっており、恐る恐る大丈夫か?と聞けば何が?と逆にいつもの笑顔で聞き返される、その充血しまくった瞳で。
うっすらと、この兄妹の渇いた関係を悟ってしまった。恐らくこの二人にとって兄は「いなくなって泣く」存在ではないのだろう、それでも人間は近しい人間が消えれば涙がでる仕組みなのでそれは矛盾してしまったというわけだ。
「これ」
湿った両手でマイルから差し出されたものは、一通の封筒。右下には臨也の筆跡で「静ちゃん」と書かれている。
怪訝な顔をしながらもそれを受け取った。
「イザ兄が前に書いてたみたい。他の色んな人の分もあって、私たちのもあったよ」
「…読…」
射抜かれるような視線に耐えかねて視線をずらすと、どうしても他のやつらの行動が見えてしまう。それは嫌だったので敢えてその手紙に視線を落とした。
「…あぁ、後で読む」
何故かそれはここでは読んではいけないような気がして、俺は慣れないスーツの内側ポケットにそれをしまった。ずしりと、何かが重くなった気がしたが気のせいだろう。



100619
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