ちょっとあやしいです


「最悪」
汗臭いからだを上半身だけ起こし無駄に高級感のあるサイドテーブルからたばこを一本取った。
「痕残すなっつったのに、何これありえない」
ことの痕、力尽きた臨也がうつ伏せに寝転がりながら何かほざいている。聞く気はなかったが、他に室内で聞こえる音と言えばシーツの擦れる音と息くらいだったので無意識のうちに耳に入ってきた。
「ちょっとシズちゃん聞いてんの」
「るせぇ」
「俺いつも痕つけないでって言ってるよね」
汗だくで息も乱れているうえ、一糸纏わぬ姿で布団に包まりながら鋭い眼光が放たれても迫力などなかった。それどころか、それは再び俺の情欲を掻き立てる。
「―ちょ、」
覆いかぶさるようにうなじに唇を近付ければ焦ったような声が聞こえた。抵抗しようとする腕を押さえつけ噛みつくように吸いつくと軽く体が跳ねる。白い肌に紅い花はよく映えた。
「やめてよ今俺疲れてんの」
「あ?関係ねーよ」
「うわあ横暴…」
下に敷かれている背中をじいと見つめてみた。キスマークはもう言うまでもなく大量に散らされており、他にも歯形や痣もいたるところに残されていて、痛々しい。DVに遭ってる女のようだと思ったが強ちそれは間違っておらず俺たちの関係を割と的確に言い当てていた。
上等だとでもいう風に唇が弧を描くのを感じつつ、背中をまさぐった。痣を指で軽く押すと予想外の痛みだったのか呻き声があがる。
「なにすんの」
「てめえがこんな痣なんか残してんのが悪い」
「シズちゃんにつけられたのが大半なんだけどなぁ…」
こいつは痕を残すのをいつも異様に嫌がる。俺とやったという印を残したくないのか。他の誰に見せるというわけでもないだろうに。白くてきめのいい肌に痕をつけたくなるのは男の性というものなので、そんな抗議など聞かぬ振りをして残しまくるのだが。
がぷりと肩甲骨に噛みつくと犬歯が皮膚にめり込み小さな悲鳴と共に臨也が震えたのがわかった。じわりと口内に鉄の味が広がりだしたので、吐き出すと下の男は自分から噛んでおいて、とも言いたげな目つきをしたが、他にどうしろというのだ飲み込めとでもいう気か。
少量の血が垂れているそこに舌を這わせたところでノミ蟲は抵抗を諦めたようだった
(あんたが残したその、)

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