※目指せギャグ


AM6時30分。
「しずちゃんおはよーっ!」
「……臨美か」
池袋最強と名高い平和島静雄の家に、インターフォンの機械音が鳴り響く。彼の母と父は既に出かけており、弟は朝早くからの撮影があるため建物内にいるのは静雄一人である。
受話器を面倒くさそうにとると、耳元に急に高い女の声が届いて不快感に目を細めた。
しかしながらこうして臨美が朝早くから来ることは最早殆ど毎日あることなので、慣れた手つきで玄関の施錠を解いた。

「ほら静ちゃん、ちゃんと食べなきゃだめだよー」
「あー…」
静雄の目の前に臨美手製のフレンチトーストが置かれるも、先ほど鳴らされた音で目覚めたばかりの彼に食欲など殆どない。する術もなくぼんやりとそれを眺めていると、しびれを切らしたように持参したエプロンを着けた臨美が台所から出てきた。
「もう仕方ないなぁ静ちゃんは」
「…?」
臨美の白く細い手が滑らかにそのトーストを切り分けていく。ある一切れに垂らしたメープルシロップとバターをたっぷり絡ませて、フォークですくい取りそのまま持ち上げる。
「ほら、あーん」
ずい、と突きだされたフォークを普段なら一蹴するのだが、生憎ぼんやりと霧がかかった脳内ではそれを判断できずに静雄はそれを口に含んだ。

AM8時30分。
始業時間ギリギリに教室へと揃って入ってきた静雄と臨美を見て、新羅が携帯から顔を上げた。大事そうに両手で握っている携帯には黒いライダースーツを着た女性との2ショット写真が待ち受けとして表示されており、幸せそうな恋人同士の写真である、その女性に首がないということを除けば。
「おはよー二人とも」
「おっはよー新羅」
「おす」
席順は窓際から順に静雄、臨美、新羅。三人とも教室で最も後方の席であり何かしらの裏を感じさせるがそれは正しく、実際臨美がなんらかの方法でこの席順にさせたのだ。他の人はそれを知らないようだが新羅は薄ら気が付いているように見える。
「あ、」
HRも終わり、ようやく授業が始まろうとした時臨美が小さく声をあげた。小さな声だったが隣の席の静雄には聞こえたらしく、どうした、と言って臨美の方を向く。
臨美は少し俯いたまま、ばつが悪そうに手を擦って静雄の方を少しだけ見る。
「教科書忘れちゃった」
「……見るか?」
「え、いいの?」
途端に輝く臨美の顔。
「ありがとー」
笑いながらお礼を言って机をくっつける。それだけならまだよかったのだが、臨美はあろうことか体までくっつけた。流石の静雄もそれには驚いたようで目を開いて臨美を見るが、何も気がつかないふりをして臨美は静雄の机に置かれた教科書を眺めていた。

PM1時。
初夏の昼の屋上なんて昼食には絶好の場所であるのに、そこに存在する人影は酷く少人数であった。理由は明確で、その少人数が理由はばらばらだとしても学校中で距離をとられている者ばかりだからで。
新羅から彼女からの手造り弁当の話を聞かされ少しばかり疲れている門田の横で、臨美は自らの鞄を漁っていた。そして取り出したものは水色の布にくるまれたお弁当箱。
「じゃーん、静ちゃんにお弁当!」
門田と新羅の動きが止まる。しかし静雄は何の気なしにそれを受け取り、当たり前のように食べ始めた。
「ね、ね、静ちゃんどう?」
正面の静雄に向かって身を乗り出し弁当のでき具合を聞く臨美は傍から見ればとても愛らしいが、一度彼女の本性を知ってしまえばそれはただの恐怖となる。何がどうなってこうなったのだろう。二人の脳内にはそんなことしか入ることができなかった。
「……塩辛ぇ」
「あははは、わかったありがとー」
媚もせずただ率直に自分の意見を言った静雄に対して、臨美はあははと笑っていた。

PM5時。
夕焼けが降り注ぐ放課後の教室の中にいるのは、委員会で残っていた新羅と臨美のみ。
「朝早く押しかけることで静ちゃんの睡眠時間を減らし疲れを貯めさせ 朝ごはんを作ることで餌付させまた料理の好みを知ることでより毒を高確率で食わせられるようにし 教科書を忘れたと言って近づくことで隙を作りより殺しやすくし 高塩分な昼食を毎日与えさせることで将来的に病気にさせる
 この作戦どう思う?」
「結婚すればいいと思う」
新羅の体が宙を舞った。


100511
今回の課題はいかにギャグっぽくするか ということでした…そして力んだ結果がこれですorz
とりあえず無自覚バカップル=傍からみればラブラブな二人という解釈をしてしまったのでこういうことになってしまいました、申し訳ありません…。
こんなものになってしまいましたが、リクエストありがとうございました!

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