※死ねたっぽいかもしれません


じゃらり。
臨也が腕をだらりと下ろすと不快な金属音が響いた。剥き出しの手首に擦れて痛いと感じる。
臨也の両手首と首、そして足には首輪がつけられており、かろうじて残っている服はもう布切れという言葉しか似合わない。服で隠されている部分も隠されていない部分にも、見るに耐えないような青あざや切り傷擦り傷打撲痕が印されているので、服の有無などもう関係ないのだけれど。
こんなイレギュラーな状況になった次第は、別に至って普通のことであった。
いつものように喧嘩をして、運悪く一発腹にきまってしまって、そのまま気絶した臨也は天敵の静雄の家へと運ばれて。そして臨也を待っていたのは強姦と暴力、いや、している最中に殴られたり慣らさずに挿れられたりと、最早あれは強姦どころか只の暴力と化していた。
馬乗りになった静雄にぐい、と首輪を引っ張られ、臨也の喉が一瞬絞められる。ようやく首から手が離れたかと思えば今度は臨也の前髪を掴んで、強制的に顔をあげさせた。
静雄はぼろぼろとなったその顔を侮辱するような視線で臨也を眺め、一言歪んだ唇で「汚ねえ」とこぼした。
その言葉に対し、臨也は屈辱だとは思わない、思えない、思ってはならない。それを表すようにいつものような嫌みたらしい笑みを浮かべて、まだ塞がれていない口で話し出した。
「静ちゃんは何で俺にこういうことするの?」
「てめえが大嫌いだからに決まってんだろ」
「じゃあ何で、俺を首輪とかで拘束するの?」
「てめえが逃げないようにするために決まってんだろ」
矛盾している、と笑った臨也を静雄が再び殴った。しかし前髪を掴まれ頭を固定されているので頭部を揺らすこともできず、余りの衝撃に口のなかが切れる。それでも臨也は言葉を紡いだ。
「違うよね、静ちゃんは俺にいなくなってほしくないんでしょ、逃げてほしくないんでしょ」
「黙れよ、てめえは…」
「俺をこうして殴って犯して拘束しておけば、逃げようにもにげられないもんね、だって俺がいなくなったら静ちゃんを理解できる人いなくなっちゃうじゃん」
「殺すぞ…」
「一人になりたくないから俺をこうして閉じ込めて逃げないようにして。可哀そうに静ちゃん、馬鹿なんだね、」
「死ね」
ご、と鈍い音がして臨也の頭が床へと打ち付けられる。頭の中で閃光が走り咄嗟に息ができなくなった臨也は痛む頭を押さえることもできずに、それでも酸素を欲しがり思わず口を開ける。
しかしその前に、静雄の手が臨也の首へと巻き付いた。
首輪の上からぎゅうと力を込め、臨也の細い首を締め付ける。食い込む爪で皮膚が破れ、一筋の血が流れ出した。
「  は、」
「死ね死ね死ね死ね死ね」
最早意味をなさないような静雄の口から紡がれる言葉。それを聞きながら、臨也の意識は遠のいていた。
(まあ、君に殺されるなら本望かな)
どこかの映画のような陳腐な台詞を素で吐き出す。青くなった唇がわなわなとふるえた。
(もうちょっと、一緒にいたかったのだけど)
どんな、歪んだ形でさえ。臨也は、静雄と一緒にいられるのなら受け入れていた、この状況も。
(…あ、駄目だ)
ゆっくりと瞼が降りて、意識が堕

    ち




         る。





別に俺を留めるのに 拘束具なんていらなかった。

ただ、その腕で
優しく抱きしめてくれればよかった。

(そうすれば、俺は絶対にどこへも行かなかったのに)

そんなこともわからないなんて、

(やっぱり、君は馬鹿だね)



100430
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -