ANOTHER DAY
「本当に行ってしまうの、カイン?」
「ああ…」
ゼロムスを倒したSatoko達はそれぞれが新しい道を歩き出そうとしていた。
last game-FINAL FANTASY 4-番外編- ANOTHER DAY
バロンの街を見渡せる小高い丘に一人佇んでいたカインを見つけたSatokoは彼に声をかけた。
「やっぱり、まだローザの事…」
「…それもある。が、一番は弱かった俺自身のためだ…」
「そっか…」
街から視線を外そうとはしない目の前の竜騎士に短く返すと、Satokoは彼の背中を静かに見つめた。
「…お前はいいのか?」
「ん?」
「セシルの事だ」
セシルと言う名にSatokoの身体は僅かに跳ねた。
カインがローザを愛した様に、自分もセシルと旅をして長い時間を一緒に過ごしていく内に愛するようになっていたのだ。
だが、Satokoはその気持ちを受け入れる事が出来なかった。これから先の事も知っていた彼女は未来≠壊したくは無かった。
だからセシルに告白された時、彼女は断った。
「私は…セシルを振ったんだよ?いいも悪いも今更じゃない?」
「それもそうだな」
少しいじけた様に言ったSatokoの言葉にカインはふっと笑うと、深いため息を吐き出し空を見上げた。
「俺もお前みたいに強けりゃな…」
「カインは十分強いよ…」
その言葉に彼は苦笑を浮かべるとその視線を街へと戻した。
「ねぇ、カイン?」
「なんだ?」
視線を向けたまま返事を返してきたカインにSatokoは迷った。今自分が言おうとしている事が果たして正解なのかどうか…
目の前の男を彼女は意識はしていた。が、それがまだ恋だと言うほどのものではなかったのだ。
それに、セシルとは結ばれる事が無くても、彼とローザの側にいる方が幸せなのかも知れないとも思えた。だから彼女は迷う。
自身の胸に握り締めた拳をあて彼女は俯いた。しばらく考えた後、Satokoは意を決した。
「私も、一緒に行ってもいいか、な?…」
「Satoko?」
突然の言葉にカインは驚きを隠せなかった。
思わず彼女の名を呼びながら振り向いた彼は、彼女が少し恥ずかしそうに、そして胸もとの手を微かに震わせているのを知った。
「そう言えば…お前、この世界をちゃんと見た事無かったよな…」
「そうだね…」
期待しちゃいけない。そう知りながらも彼女は彼の口から出た言葉に期待してしまうしかなかった。
「だが、俺は試練の山に篭るつもりだ。退屈な日々になる…だから…」
――連れてはいけない――そう言葉が続くのかと思ったSatokoの胸はズキリと痛んだ。
せっかくの決心が駄目になるかも知れないと言う事に泣きそうになる自分を抑えるべく、彼女は何度も深呼吸を繰り返し、心を落ち着けようとした。
「場所…変える必要があるな!」
「え…」
カインの言葉に思わず顔を上げて彼を見上げたSatokoの瞳には、優しい笑みを浮かべた彼が自分に手を差し出してくれている姿が映った。
自然と目頭が熱くなりながらも頬が緩むのを感じた。
「セシルがお前に見せてやれなかった景色…この俺が見せてやる」
「カイン…」
嬉しさを隠し切れない顔のまま、Satokoは差し出された手を取り、そっと彼の名前を口にした。
「まずはSatokoの始まりの町、カイポへ向かうか」
「うん!」
夕日が支配し始めたバロン国付近の小高い丘で今、一人の青年と一人の女性の物語が始まった。
それはそう遠くない未来で起きる新たなる戦いの中で、この国に残った友の血を受け継ぐ王子と、自分たちの意思を受け継ぐ一人の少女の恋の物語への甘い甘い序章となる…
20110216
Satoko様との相互記念に書かせていただきました、カインお相手のショートストーリー。
lgの本編終了後のもう一つの物語、と言う設定にさせていただきました。そして何気なく、FF4TAへと続く事も匂わせて…
誤字脱字確認はしたのですが…もしありましたらお知らせください。そしてクレーム返品受け付けています。
Satoko様。長い間お待たせしてしまい、すみませんでした!!
Satoko様のみ、お持ち帰り可能。
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