!注意! 某ドラマ第七話までの展開で妄想 高校受験生SDKと高校一年牧野 二人は付き合っているという設定 宮田は出てきません 幸せもありません レイプ表現あり 内容・設定完全捏造 実際の高●入試とは一切関係ありません 須田は手元の受験票を何度も確認した。 79番。 それが自分の受験番号だった。 自己採点では全教科の総合平均点が91点で、羽生蛇高校の合格ラインである平均点90点を越えていたはずであった。 なのに何故、無い――― 貼り出された合格者の番号の中に、自分が含まれていないのだ。 何度見ても、78、80、…78、80、…78――― 須田の自宅に遊びに来ていた牧野は、仕事で留守がちな須田の両親の代わりに料理を作っていた。 合格発表の日は好物がいいという年下の彼氏のために、今日は特に腕を奮って、少し早い御飯も兼ねて作った品数は片手では足りないほど。 自己採点で合格がほぼ確定的であった彼は「まだ決定ではない」と言いつつも、春から自分と同じ高校に通えることを楽しみにしている様子だった。 最後のサラダを運び終えた牧野は、テーブルから少し離れて料理の配置を確かめる。 須田くんはきっとこちら側に座るだろうから、唐揚げとハンバーグは近い方がいいよね。 飲み物は彼が帰って来てから出そう、ぬるくなってしまうといけないし――― 着けていたエプロンを外して椅子の背もたれに掛け、愛しい恋人の報告を今や遅しと待つ。 牧野自身も、春から同じ学校で学べることを楽しみにしていたのだ。 それに――― 合格のあかつきには、二人はある一線を越える約束を交わしていた。 牧野は頬を赤らめる。 まだ今日すると決まった訳でもないのに、何を期待しているんだろう。 この日が来るまで幾度となく同じことを考え、その度にわざと頑なな否定の言葉を思い浮かべて喜色を打ち消してきた。 学生の本分は勉強だというのに、牧野の心は須田と想いが通じてからというもの、県立ナンバーワンの高校の力をもってしても、彼を上回ることはできなかった。 日が傾いてきたのだろうか、レースカーテン越しの光がやや小さくなってきた気がする。 それでもまだ十分に明るい陽光を浴びながら牧野が外の風景を眺めていると、玄関から物音がした。 須田くんに違いない――― 立ち上がり玄関へ足を向ける。 しかし居間の扉は牧野がノブに手を掛けるより先に回転し、静かに手前に開いた。 「須田くん!」 帰宅した須田はうつむいていたので、表情が一瞬わからなかった。近づいて顔を覗き込むと、明朗快活な彼らしからぬ無表情が顔に貼り付いていた。 「須田…くん…?」 さっと不安が頭をよぎる。 だが牧野はすぐに思い直した、いつもの冗談なのだろうと。 「も、もう!騙されないからね、その手には…」 牧野の知る須田なら次の瞬間にはほころんだ笑顔を見せて、「なぁんだ、牧野さんも引っかからない時があるんだ」などと言うに違いないと思っていた。 しかし須田の表情筋は一切の動きを止めていて、茫洋とした瞳だけがのろのろとこちらへ向いた。 「ま……さか、まさか須田くん…」 「落ちてた」 四文字の言葉が静かな居間に響いた。 「そんな…だって自己採点では合格だったって―――」 「でも無かったんだよ!」 須田は牧野の言葉を遮って叫んだ。 悲しいのか、憎々しいのか、未だ感情の矛先を決めかねて、困惑に全てをぶつけているような悲痛な面持ちであった。 「念のため一緒に来てくれてた先生も確認してくれたけど……無かったんだ!…間違いないんだよ…」 須田はやっとの思いで言葉を絞り出し、最後に「俺、寝ます…」とつぶやくと、牧野から逃げるようにして二階に上がっていった。 それきり、家の中は静かになった。 夕日が差し込む頃になっても、牧野は自宅には帰らず、居間で須田を案じていた。 自分はどうするべきなのだろうか、何と声をかけるべきなのだろうか―――。 牧野は元々この地区の人間ではなかったが、勉強はできた方だった。 それ以外にすることがない田舎だったということもある。だが義理の両親は牧野に家業を継がせるため、相応の教養を求めた。 だからといって楽々と合格を手にした訳ではない。 しかし選択肢は県で一番のこの高校以外、あり得なかった。 自分は挫折を知らない―――牧野の胸中で障壁となっている事柄であった。 あの村で挫折とは存在価値の喪失に等しい。一般家庭で育った須田には理解不能な世界が常に牧野を追い詰めていた。 それは牧野にとって苦しみの連続であり、村の外の高校へ通い始めたとき、自分は初めてあの村の呪縛から解き放たれたのだと思っていた。 だがそれは錯覚であった。 村で身に着けた「当たり前のこと」が村外では異常として捉えられ、牧野には同年代の者たちの考えが理解できなかった。 将来に対する明確なビジョンもなく、何をしてでも成し遂げようという気骨がない。すぐに根をあげて、親や教師の助けを求めようとする。 そんな周囲に牧野は違和感を抱きながら生きていた。 村での経験がなければ今の牧野もないといえるのは確かなことである、だがそうなるまでの代償は小さくはなかった上にそれ以外の事象への拒絶的な意識が引き出されるという反作用もあった。 結局どこへ行っても村は牧野に付きまとっていた。 ふとしたきっかけで出会った須田は一風変わった人間であった。 牧野の知る同級生らと何ら変わりがないように見えて、誰も持ち得ないカリスマ性のようなものを有していた。 もちろん、中学生の須田のカリスマ性など、まだ原石も原石、時折見え隠れするほんの一部分程度のものであったが、牧野はそれを見抜いていた。 言われるがまま生きるだけの存在であった牧野が心惹かれるのはごく自然で、当然の成り行きだったのかもしれない。 誰とでもすぐに心を通い合わせることができる須田は牧野にとって、まさに太陽のような存在であった。 それは逆もまた然りで、須田が陽だとするなら牧野は陰の気を持っていて、須田にとって牧野は必要とする要素を兼ね備えていた。 歯車が噛み合うようにして出会った二人の仲は急速に縮まった。 今では唯一無二の存在として傍にいる。 だから何としてでも、という思いがあった。 彼の支えになれたら、相手の気持ちが分からなかったとしても、何とか力になりたい―――。 人が抱く感情に愛情以上のものがあるとすれば、それは今の気持ちである。 長い葛藤にようやく踏ん切りがついた牧野は、意を決して須田の自室へと向かった。 ノックの返事がない部屋の扉をそっと開けると、中はわずかに開いたカーテンの隙間から漏れる夕日が差し込む以外、真っ暗であった。 「須田くん…入るよ…?」 須田は窓際に置かれた小さなソファに身をかがめるようにして座っていた。 視線の一切を眼前の一点から動かさない須田の隣に牧野は座った。 そして肩を抱き寄せて優しく語り掛けた。 「須田くん、あまり気に病まないで…羽高だけが全てじゃないよ、また頑張ればいいじゃない」 牧野としては憂慮と熟慮の末の慰めの言葉であった。 しかしその台詞に弾かれたように顔を上げた須田は、苦悶の表情をさらに歪めた。 「牧野さんは…っ、牧野さんは羽高に通ってるからそんなことが言えるんだ…!」 「そんな、私なんて…」 「しかも二年になったらホームステイでいなくなっちゃうじゃん…っ、全部上手くいってる牧野さんに…俺の気持ちなんか分かりっこない!」 言葉が終わる前に牧野の視界が反転した。 一瞬の間に須田は自分を見下ろしていた。背後は部屋が暗いせいで真っ黒にしか見えないが、おそらくそこには天井がある。 牧野は背中に当たる肘掛けの感触で、自分に何が起こったのかを悟った。 「須田くん…?」 「ねえ、いなくなっちゃうなら…今してもいいでしょ?どうせ俺にくれるつもりだったんだから…」 処女、須田はそう言って牧野のシャツの裾から手を差し入れた。 「ダメ須田くんっ、こんな時に…ダメだよ…っ、もっと、これからどうするか考えていこう?」 「…っ、これからって何だよ!」 近づいてきた手首をソファに押しつけて、そのまま握力を強める。 「…っつ!」 軋んだ骨が悲鳴を上げ、痛みに牧野の顔が歪んだ。 「俺には…これからなんてないんだよ?このまま…牧野さんと離れるくらいなら―――今ここでエッチする」 須田は牧野のシャツのボタンに手を掛けた。 「嫌だっ、止めて、」 手の甲に添えられた指先は冷たくなっていた。 言葉と共に手の温度も須田に制止を呼びかける。 しかし須田の中にあるのは何もかもから見放されることへの焦燥感である。 それだけが関心事であり、自分を受け入れるものとしての役割を求めていた牧野の反応は、須田にとってあり得ないもので、たとえそれが本人の言動であっても須田の心は動かなかった。 「…何で嫌がるの?俺のこと好きじゃないの?」 「そうじゃないっ、そういうことじゃないよ、ねぇ須田くん、まだできることはきっとあるよ、だから―――」 「ねぇよそんなの!」 須田は手を思い切り振り払った。 牧野の善意はことごとく須田の勘に障ることばかりを口にさせていた。 首元まできっちり留められたボタンは粗暴な手つきの侵入を拒み、苛立ちが増幅していたところに先の発言で怒りが沸点に達した須田は、面倒になっていたシャツの合わせ目に手を入れると、左右へ力任せに引っ張った。 テレビの暴力シーンのようにボタンが弾けてどこかへ飛んでいく。カラカラという音が遠くで聞こえた。 「何だよできることって!好き勝手なことばっか…、そんなに俺とヤりたくないの?」 「違うっ、そうじゃないけど」 「ならヤらせてよ」 「や…須田くんお願い…落ち着いて?」 「もういい、牧野さんの言うことは利かない。俺が勝手にやるから」 須田の手はシャツを剥ぎ取ると、その下にあったインナーも乱暴に脱がせた。 「須田く、んぅ――!」 一方的なキス。 上から押し込まれた舌は、牧野の抵抗を呼吸ごと奪う。 それはこれまで交わしてきた、稚拙でも愛情を確かめ合う行為だと実感できるものとは違っていた。 今感じるのはどろどろとした醜い愛憎―――。 牧野の口内は料理の味見によるものか、ソースの味を残していた。 自分のために早くから作って待ってくれていたのは分かっている。彼の想いも本当は分かっている。 分かっているけれど、食欲も失せるほど自分が落ち込んでいるこんなときに、食べ物の味をさせている舌が憎くなった。 快感や相手の気持ちなど全て無視して、須田はただその味を消すことに躍起になる。 技巧など知らなかった。 ただがむしゃらに逃げ惑う舌を追い詰め、縮み上がっているところを引っ張り出して吸い上げる。 飲み込まれそうなほどきつく吸われて痛みが生じたのか、牧野が須田の胸を何度も叩く。 しかし手の力はすぐに弱まった。 息苦しさにもうろうとする意識とは逆に、牧野の中ではっきりしていく思いがあった。 ―――彼をおとしめたのは自分。 良かれと思って彼を傷つけた。彼の心を受けとめることもできない、恋人として、それ以前に人間としても自分は失格なのだ。 勉強ができて良い学校に通えても何の意味もない、人間的な中身が空っぽでは――― 牧野の脳内に「役立たず」という文字が浮かび上がった。 口端から何とか空気を取り込もうとする牧野をさらに押さえつけて、須田は自分の唾液を送り込み、舌の味を薄めようとしていた。 飲み込むことを知らない牧野の口内は唾液であふれ、端から幾筋も雫がこぼれ伝う。 舌についた味が唾液に移ると、須田はそれを飲み干してさらにまた唾液を送り込む。 牧野の舌の味が無くなるまで、須田は続けた。 唾液を吸い上げる水音と、嚥下の度に鳴る喉音が、無音の室内に卑猥に響く。 味も感触も反応も全部、自分の色でなければ気が済まない――― 何にも渡したくない、目の前から自分以外の痕跡を全て消し去ってしまわなければ、正気でいられない。 須田は牧野を介在することで心身の安寧を保とうとしていた。 果たしてそれを正気と呼べるのだろうか。 → back |