Android | ナノ


※最初の話のみエロ




「ただいま」
 声をかけていくらもしないうちに、奥の方から足音がかけてくる。
 俺は上がり框につま先をひっかけてスニーカーを脱ぎながら、寝室から飛び出すアイツの姿を思い浮かべた。外から見たとき部屋の灯りは消えていたが、おそらく鍵の音を聞いた時点で目を覚ましたにちがいない。布団から跳ね起きて、やぶれかけのふすまを開け放ち、居間の荷物をとび越える。あと何秒でアイツはここに来るだろうか。
「――おかえりなさいっ」
 足音が消えた瞬間、暗がりから浮き出るみたいにアイツがとびついてきた。よろめきつつ抱き留めると、右足の裏で靴のかかとがつぶれる。
「あんだよお前、おきてたの?」
 知ってはいたけど尋ねた。確認みたいなもんだ。
「はい、だって……その……」
 手さぐりで伸ばした指先に丸く小さな輪郭が当たり、暗闇の中で慶の頭を撫でてやる。
「寂しかった?」
 そう訊くと、手の中にあった頭は埃臭いジャンパーの中に顔を隠してしまった。いつも思うけれど、コイツのこういう仕草は素直に感心する。
 とりあえず中に入り、電気をつけてバイト先でパクってきた廃棄弁当を机に置いた。ハンガーなんてウチにはないから、上着はそこら辺に投げる。
 部屋は相変わらずのきたなさだった。キッチンつきの洋室に寝室用の畳部屋が一部屋、どちらもゴミと荷物が山のように散乱している。慶はその畳部屋の布団の上で生活していた。初めにそこを慶のテリトリーだと決めたのは、俺だ。
 街中から少し離れたところにあるアパートは月々の家賃が四万五千円と都内では破格の安さだ。なのに全部で四部屋あるアパートに俺以外の居住者がいないのは、外観も内装もあまりにもボロだからにちがいない。風呂もなければトイレもない。雑草だらけの空地に囲まれてるせいで、部屋には頻繁にゴキブリも沸く。
「慶」
 名前を呼ぶと、慶はすぐさま背筋をピーンと伸ばして近くへ寄って来た。その手をとって俺は畳部屋へと向かう。
「メシはあとで食うから、さ」
 汗染みのできた布のかたまり。すっかり万年床になっている布団の上に細い体をつきとばした。
 倒れ込んだ慶は丸い瞳をパチパチさせて、今にも覆いかぶさろうとしている俺を驚いた顔で見上げている。
 ベルトのバックルをはずして、一気に下着までずり下ろし、中から取り出したそれを慶の眼前に突き出した。
「な、いいだろ、先に」
 慶はもう一度、パチと瞬きした。



「あ、いい、いいわ、慶……もっと、激しくして」
 指示に従って慶は無理やり広げられた口を一生懸命にすぼめ、招き入れたものにさらに強く吸い付いた。
「うぁあっ、い……いいっ……」
 慶の口は上顎の裏が無数のヒダに覆われて、奥まで入れるとそれが表面にぴったり合わさってくる。中は手前から奥にかけて狭くなっているから、深くぶち込めばぶち込んだ分だけ気持ちよくなれる。
 バイトの疲れとイライラが相まって、俺のチンポはあっという間に完勃ちだった。
 ビキビキに膨らんだそれを、到底入りそうもないような小ささの口の中に何度も出し入れする。ゴムよりしなやかで柔らかい唇が竿の上をヌルヌル滑った。中では熱いヒダヒダがぐちょぐちょ音を立てて俺のチンポに絡みつく。
「やべぇ…っ、もうイく……」
 強引な舌使いに誘われ、俺は一気に限界の階段を駆け上がった。
 動物みたいにチンポをしゃぶっている慶の一心不乱な様子を眺めているのもよかったが、俺はその背中を抱え込むようにして足で引き寄せた。
 蒸れた股座に顔面がぶつかって、白くすべすべした顔に縮れた毛がべったり張りつく。
 俺はさっきより深いところまで含ませた。チンポを喉奥に向けて照準を定め、硬い亀頭でガンガン突きまくる。驚いた口の中はショックを受けたみたいに震えてチンポをぎゅうぎゅうに締め付け、俺はそれが好きでこうして咥えさせるときは奥ばかり狙っていた。
 慶は絶対に抵抗しないから楽だ。遠慮なんて慶には必要ないから、どんな乱暴な行為も何も考えずに平気でできる。
 つぎの瞬間、俺は唐突にザーメンをぶちまけた。
 狭い口内をすでにいっぱいにしていたというのに、さらにこってりした大量の液体を同じ場所に吐き出した。放出するタイミングに合わせて、無言で腰をグラインドさせると、うう、と唸るような声が下から聞こえてきたが、そのまま続けた。
 ザーメンの海でチンポを乗せた舌がうねり回っていた。舌使いというよりは苦しくて暴れている様な動きだが、だからどうしたってんだ。俺にとっては全部、都合の良い刺激でしかない。
 迸るような射精が徐々に収まってきた頃、今度は無理やり頭を引き剥がして後ろを向かせた。
「つぎはコッチで頼むよ」
 そう言ってすばやく腰を掴んで、尻たぶを割り開く。奥から小さなアナルが顔を出し、今度はそこにチンポを突っ込んだ。慣らすことなんてもちろんしない。
「ああっ」
 お互い獣のような体勢になってひとつの布団に倒れ込む。慶は喉を反らせて声を上げた。精液まみれの顔が一瞬見えた。
「あっ!や、はぁっ、ぁ……あ、ああっ!!」
「慶。声デケェって」
 髪を振り乱して腰を揺らしている慶の、尻を軽くたたいた。だが慶の声は小さくならない。
「チッ……おい、小さくしろって言ってるだろ」
 振り上げる手の力を強めたが、慶はわずかに高音を下げるだけだ。昔はちゃんとできていたのに。
「おい、いい加減にしろって!」
 この部屋で大声をあげたとしてそれが誰に聞かれるわけでもないけれど、従うのが当然の所有物が些細な命令さえこなせないのは、俺を最高にイライラさせた。
 布団に着いていた両手を乱暴に取り上げて、後ろ手に捻じり上げる。背骨をひねる不自然な体勢になった慶は、顎を布団に擦り着けた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
 こんな簡単なこともできないくせに、慶は俺が怒っているということだけは分かったのか、謝罪の言葉を繰り返した。
 だが俺はその声を耳にするだけでもムカついていて、落ちていた自分の下着を拾い上げると、慶の口にねじ込んだ。そしてさっさとピストンを再開する。慶は詰め込まれた下着の奥からくぐもった声を発していたが、聞こえない振りをした。
 いくら慶がフェラが上手いといっても、後ろの具合にかなう訳がない。
 内部の気密性を増した慶のアナルは、口以上に出来がよかった。もともとそのために作られたのだから、当然と言えば当然だ。
 初めはただ硬くキツいだけだが、使っているうちに自分の形になじんでくる。いわゆる覚醒と呼ばれる現象で、それがおとずれて以降、慶は俺専用の完璧なオナホールになっていた。
「はぁ、はぁ、あっ……慶……」
 布団の上で白い臀部がくねっている。初めの頃は見ているだけで股間が熱くなり、その身体を体液で汚したりすることもあった。でも今は、ああ、これも前に見た、このあとはこうなって、そんな退屈な思いしか浮かばなくなっていた。
「あ…慶っ……も、出る…っ!!」
 それでも頭とは別にできている俺の下半身は、チンポに巧みな物理刺激を受け続け、激しく収縮するアナルの中で達しようとしていた。
「ん!んんッ!!」
 慶はまだ何かをわめいていた。
 だが俺は何もかも無視して、勝手に射精をキメた。
 慶の身体がビクンと跳ねた。



 畳の縁を小さなクモが走っていた。
 目の前を通り過ぎようとしたのを見計らって足裏で踏みつぶす。拭き取るのも億劫だったので、畳になすりつけて足を布団に戻した。
 安っぽい紫煙を肺にためてから吐き出す。埃の充満する部屋の空気に、煙が溶けて消えていく。
 慶はまだ動かない。静かすぎてまるで死体みたいだ。
 ちらっと隣に目を向けて、生白い背中を眺めた。
 抜くまではそのことしか考えられないのに、終わったあとは行為そのものを一刻も早く忘れたくなる。
 剥き出しの尻からは濁った粘液がダラダラとめどなく流れ続けていた。俺が馬鹿みたいに犯しまくったせいで、閉じるのに時間がかかっているのだ。
 もう一度吸い込んだ煙を、今度は生白い背中に吹きかける。
 一心不乱に奉仕してくる慶は、マンネリとは言いつつも最中は少し可愛く見えていたのだが、今ではまるで反対の、無性に汚らしく浅ましい生き物にしか見えなかった。
 頭が向こうをむいているから目が開いているか閉じているかは分からないが、黒髪のもつれた耳の横から青い布が覗いていた。途中で詰め込んだ使用済みの下着はまだ口の中に放置されたままだ。
「きったねえ」
 吐き捨てるように言葉を投げると、ずっと静かだった慶がピクリと身体を動かして振り返った。
 何か、喉の奥で呻いたような音が聞こえ、聞き取るために下着を引き抜いてやる。
「きらいに、なったんですか」
 慶は震える声で尋ねてきた。
「かもな」
 何も考えずに答えると、
「いや!」慶は弾かれたように身体を起こしてすがりついてきた。
「お願いですからここに置いてください……行くところもないのに、あなたに捨てられたら私……」
 身体にまとわりついて離れようとしない慶を、俺は冷めた目で見おろした。
 哀れな表情をつくって、同情でも買うつもりか。
 実際、その目的で慶は言っているのだろうが、今ばかりは鬱陶しくて殴りたくなった。
 このあとコイツを綺麗にしなければならない。それを思うと、億劫どころの話ではなくて、散々好き勝手にしたあとに、そんなことをしなければならないとは、みじめ以外のなにものでもなかった。
 だから出来るならそろそろ手放してもいいかと思っていたのだが、今のところコイツのほかに代わりがいるのでもない。
 帰ってすぐおっぱじめられるのはコイツだから出来ることであって、別を探すにしても労力が必要になり、また最初から調教しなければならない。それを考えると、面倒臭さが先に立った。
「……わあったよ」
 指先の煙草を口にくわえ、自由になった右手で濡れ犬の毛のような黒髪を撫でた。
 これさえしておけば、コイツの機嫌はすぐ直る。撫でられることで慶は愛情を感じるのか、ほころぶような笑顔で良かった、と言った。
 俺は表向きは優しい男だ。
 だからコイツも、とりあえず言うことを利ける間まで置いてやればいいと思った。
 下手に関係を崩したら後が面倒になる。使える間は俺なりに大切にしてやって、後のことはそのとき考えればいい。
 最低限のこともできなくなったら、どのみちコイツに利用価値なんてない。


 牧野慶が購入されました。
 ¥100
 購入者の感想「毎晩使ってます。最初は嫌がってましたが、今は自分からおねだりしてくるようになりました。可愛いペットです。(30代男性)」





 俺は無意識に顔をあげた。
 目線の向こうには小さなガラス窓が立ち込める水蒸気の中にぼんやり浮かんでいる。
 その二十センチ四方の囲いの向こうに、俺は何かを聞いた気がした。それは声だったように思う。
 浴室の少し高い位置に作りつけられた窓は目隠し用にすりガラスになっている。それでも向こうに誰かが立てば輪郭くらいは判別できるのだ。
 俺はふたたび窓を見た。
 もし仮に今の自分の気配を感じ取った者がいて、そいつが壁に身を隠しているとしても、相手は地上数十階の空中に立っていなければならなかった。
「司郎さん?」
 目を凝らすという動作は、本来俺にとって不必要なものだった。俺の瞳は分厚い望遠レンズにも勝るとも劣らない、一定範囲に焦点をあつめることで対象がたとえ数十メートル先にいても目視できるようになっている。それも瞳孔を一ミリも動かさないで、だ。
 にもかかわらず目標を注視するにともなって俺が目を細めているのは、俺という存在が周囲と対比して見たとき、限りなく違和感を抱かないように意図されていたからだった。
 窓は暗い夜の色を透かしていた。無人の闇は俺に何を呼びかけたのだろう。もう残響すら聞こえない窓に、俺はそれを音として認識した脳のことを考えた。イレギュラーなら対処の必要があった。
 しかし思考はとつぜん中断した。
 何か小さなものが左右から頬を包みこんで、顔がやさしく正面を向かされる。
「もう、司郎さんてば」
 正面にいたのは少年だった。濡れ羽色の瞳が蒸気でうるんでいる。
「さっきから何度も呼んでるのに、どこまでかぞえたのかわかんなくなっちゃったじゃん。司郎さんのせいだよ」
 少年は胡乱な視線でこちらを見上げていた。赤く上気した頬は空気を含んで丸くふくらんでさえいる。
「悪い」
「………ま、別にいいけど」
 機嫌を損ねたかと思ったが、少年はそこまで不満を感じたわけではなさそうだった。
「司郎さんがどこにも行かないのはわかってるし」
 華奢な肩を小さくすくめ、固定していた手を白濁した湯の中に戻す。
 この少年は俺以上に俺のことを知っていた。何でも、と言ってもいいくらいだ。
 たとえば、一つに集中するともう一つがおろそかになったり、返事は通り一遍でしか返せないことだったり。表情はマネキンのように固くて、最近は何かに呼ばれてどこか遠くを見るようになったことも、少年は何でも知っていた。
「でもなんでなのかな。司郎さんときどきそうなるけど」
「わからない」
 何かに感応しているということは分かっていても、その原因までは少年にも分からないようだった。
「他の電波に反応してるとか?」
「わからない」
「もう、ちゃんと考えてよ。司郎さんのことなんだから、自分でも少しはわかんないの?」
「わからない」
「あのさ……」
 少年は呆れたように何かを言いかけて、はっと気づいたように口を閉じた。
「司郎さん」
 硬質な体に軽い衝撃を感じて、俺はわずかに顎を引く。
「僕さ、司郎さんと一緒にいれて幸せだよ。お父さんやお母さんがいなくても平気」
「……」
 少年には両親がいなかった。
 育ての親として彼を引き取った人物は膨大な資産の持ち主で、彼を引き取った際にマンションの一室と家政婦と一枚のクレジットカードを与えたが、血の通った愛情は少しもそそがなかった。
 宮田は少年の父親に会ったことがない。彼はまだ一度もこの部屋を訪れたことがないからだ。
 父親が昨今資産家の間で流行している孤児の養子縁組のひとつの例として、少年を引き取ったのか、純粋な同情心からそうしたのかは分からないが、方法を知らなかったのかもしれない、と思ったのは何かのドラマを少年と見ていたときか。
 少年は自分を愛さない人間の物をつかうのは嫌なんだと言っていた。しかしそのブラックカードで初めて買ったのが俺だった。
 単純な金目的なら、それでも父親はこの少年を選んだだろうか。ときどき俺は疑問に思うことがある。
 高層ビルの豪華な1LDKに、俺と少年は二人で暮らしている。こんな待遇を、ただの世間体やステータスだけでするだろうか。
 それは少年が俺を選んでくれたように、父親も少年を選んだのではないだろうか。
 俺は自分が特別でないことを知っていた。
 ほかの個体と比べてとくべつ見目麗しいわけではない。優れた機能もない。
 当時は最新式だった型も、代替わりを経て、二世代あとの機種が現在の最新型となっていた。それはまるで人のように表情がなめらかで、自ら思考して独立した行動をとることができるらしい。
 外見も数種類しかなかったものが、受注会社の拡大とともに無数のバリエーションが作られるようになった。人との違いもほとんどないという。
 一方、自分のような存在は旧式として、パターン化された作業をこなすだけの道具として使われるようになった。だから少年と俺が一緒にいるということは、買ったその日から今日まで繰り返しオーバーホールに出しながら大切に扱ってくれていることの証明だった。
 俺は感謝していた。それが初めから回路に組み込まれた絶対的な思考だったとしても、少年は自分には充分すぎる愛情をそそいでくれ、その恩を返すべきだと俺は考えていた。

 風呂からあがった俺たちは濡れた体を拭き合い、広いダブルベッドに寝転んだ。
「ちゃんと服を着ないと風邪をひく」
 腹を出した寝巻の裾を直してやると、少年は不揃いな歯を見せて笑った。
「司郎さん、お母さんみたい」
「俺は母親じゃない」
「うんわかってる。僕もお母さんってどんな人のことかよく知らないし」
 でも何かいいよね、こういうの。
 少年が眠そうな目で見あげてくる。
「……もう寝たほうがいい」
「うん。司郎さんも、おやすみなさい」
 まもなく隣から静かな寝息が聞こえてきて、俺は体を起こして、枕元の明かりを消した。
 愛情を知らない少年の親代わりをしながら俺は、不自由のない暮らしをさせてもらっている。所詮は心を持たぬ存在とぞんざいに扱われることもなく、人として生かされている。
 少年が言った“こういうの”とは、そのことを指しているのだろうか。
 時計が0時をまたいだのを機に、脳は前日の出来事の整理と記憶デバイスへの書き込みを開始した。
 起床時の様子、昼食に摂ったもの、一緒に見たテレビ番組、就寝時間……
 時計が刻む秒針の音に混じって、カリカリと引っかような雑音が発せられる。なかでもとくに少年の最後の発言の解釈に時間を要した。
 出来事を記憶する過程で、脳はどうしても少年の言葉を具体的な何かに変換しなければならない。音か記号か、辞書に載っている言葉でなければ認識できないのだ。
 しかし好奇心旺盛な少年の言動はつねに捉えどころがない。それは少年期特有の表現だと理解しているが、彼の言う“こういうの”がどこからどこまでの事象を含むのか、判断が難しかった。
 無条件に甘えられる喜び、決して裏切らない安心、服従させることの優越感。
 彼がいう“こういうの”が母親のことを指しているなら、自分はいつまでもこの座に甘んじていてはいけないような気がした。
 少年のように複雑な家庭環境で育った子供は、大人への不信感から他者とのコミュニケーションが取りづらくなり、将来的に社会に適合しにくくなる。自分がいることで彼の世界を狭めてしまうなら、今は互いに幸せでも少年の未来を潰していることになりはしないか。
 幸せ。
 何気なく使ってしまったが、幸せは言葉と音の響きでしか知らない。幸せの実感はもっとわからない。しかしこれが幸せということなのだろうか。
 少年に「何かいいよね」と言われたとき、俺は自分でも「そうだ」と思った。それは無意識に彼の言う言葉を理解していたからなのだろうか。
 俺がもし人として生きていたのなら、幸せを知らなかったに違いない。でなければこんなに驚くはずがない。少年といることで身もほどけるような安堵をおぼえるはずがない。少年こそが俺の唯一無二の主であって、俺の幸せは彼なくしてはあり得なかった。
 隣で寝息を立てる少年の右手は俺の左手に繋がっている。俺は意図的に頬の力を抜いて、口角を上げてみた。それを少年は喜びの表現だと言っていた。
『あ゙……』
 瞬間、俺は素早く双瞼を開いて声のした方を睨んだ。
 またあのノイズだ。何度修理に出されても、あのノイズだけはどうしてもなくならない。一方的に脳に侵入してくる声は、いったい誰のものなのか。
『やめ………っ……れ、……ら……』
 人工知能には常に更新可能なOSが標準搭載されているが、その中に人でいう生体防御反応のような最低限の危機回避行動がシステムに組み込まれていた。一つは体内エネルギーが切れる際の通知機能。そしてもう一つは機体に負荷がかかって故障寸前であることを知らせる機能。
 では、これはなんだ?
『……け……て』
 そのとき俺の身体に慄えとしか言いようのない感覚が走った。
 それは俺たちが機能停止寸前に陥った時にだけ発する救援信号だった。
 危険度の高い信号を傍受したためか、自分がその状況に置かれているように脳が高速稼働を始める。人で言うなら焦燥感というものだ。
 型は自分と同じ男性モデルだろう、今まで何度か頭を過った声の主に間違いなかった。細く弱々しいその声を聞く限り、すでに危険を通り越した状態のように思える。
 俺は相手のGPSをたどれないか試みた。しかしそれは端から正式に受信したものではないらしく、瞼の裏のモニターには何も表示されなかった。
 誰がどこから飛ばしてきているんだ? 俺はその声が聞こえる間中、相手のことを考えた。たとえば近くかあるいは遠くから電波を飛ばす相手がいたとして、どうして受け取る側が俺でなければならなかったのだろう。他の仲間も同じように反応しているのだろうか。

 それ以降、俺は前に比べて頻繁にノイズを受信するようになった。
 まったく不可解な信号を勝手に受信してしまう現象については、もうノイズと称する以外になかった。
 遠くからシャワーの音が聞こえている。今日はめずらしく一緒に風呂に入らなかった。
 先にベッドで待っていてと言われた俺は、また例のノイズについて考えていた。答えが出るまで分析を続けるのは俺たちの性というものだった。
「司郎さん」
 寝室のドアが開き、待機から通常モードに移行した俺は、戸口に立った少年を見て、彼の全身にピントを合わせた。瞬時に激しく引っかくような音が脳から発せられ、思考回路が高速稼働する。
 少年は何も着ていなかった。
 濡れた雫が髪から顎を伝い、床に滴り落ちている。
「司郎さん……」
 少年は俺の名前を呼びながらベッドに乗り上げてきた。状況分析が終わらない。俺は瞬きをすることしかできない。
 今まではその沈黙を少年は黙って待ってくれていたが、今はその時間を利用するように細腕を背中に回してきた。重たいはずの俺の身体が、すんなりベッドに横たえられる。
 状況が変われば分析する項目が増え、俺はますます動けなくなった。
「司郎さん……」
 スタンドの明かりを受けた少年の顔が暗がりにぼんやり浮かび上がっている。
「好き」
 レンズのピントがギリギリ合う距離で小さな唇が動いた。
「司郎さんが、好き」
 横たわる身体をまたぐ形で少年が覆い被さってくる。親と子の戯れのような雰囲気はもうない。
 ほのかに入浴剤の甘い香りをまとった裸身は、少年特有の弾けるような若さと柔らかさを備えていた。
 ふっくらと脂肪が乗った未成熟な胴回り。女児にも引けを取らないきめ細かな肌。肩から生える柳のような腕は成長と共にこれからますます伸びていき、やがて今は世話係の同居人をも越える立派な体躯の持ち主になるだろう。
「司郎さんも、僕のこと好き?」
「……ああ」
「だったら抱いてよ」
 僕のこと、抱いて。
 少年は瞳に熱をこめて、顔から胸、胸から腹と、完成された大人の身体を見つめ下ろした。
 視線は寝巻きをわずかに窪ませる二本の足の付け根で停止した。
「俺は人間ではない」
「わかってる。それでもいいんだ」
「お前の意図する行為は、本来人間の女性に向けるべき感情だ。外見的特徴を考慮してもその役割は不適当と思われる。なぜなら俺は」
「男だから?」
「そうだ」
 自分は男性を模して作られた存在。
 若さゆえに性欲の暴発が起こるのは決して珍しいことではないが、それを行うことは、重大な倫理規定違反に当たった。
「青少年健全育成条令の第三項目、人工知能を有する個体による擬似的な性行為、またはそれを想起させる行為は18歳未満まで禁じられている。 俺がお前に意図する行為は、機能的にも不可能であり、なおかつ道徳的な問題が多数見受けられる」
「関係ない」
 少年は強い調子で言った。
「僕、そういうことをされるなら、絶対司郎さんにって思ってた。今日学校で習ったんだ。教科書も何度も読んだ。司郎さんにしてほしかったから」
 幼い子供の手が大人の手を取り、自らのペニスへと導く。皮に覆われた未成熟な性器が大きな手のひらにすっぽり包まれる。
「どうして、急にこんなことを」
「司郎さん、俺と一緒にいて幸せじゃないの?俺といるのが楽しくないの?」
「ちがう、そういうわけではない」
「僕、司郎さんにしてもらわなきゃ絶対幸せになれないんだ。僕の幸せは司郎さんの幸せでもあるんだよ?ずっと一緒にいて、そう思ったでしょ?」
 少年はどこで覚えてきたのか、未成熟な体躯を娼婦のようにくねらせた。手の中の若茎は幼いながらも小さな形を作り始めている。
「僕、司郎さんのことなら何でも知ってる。だから司郎さんにも僕のこと、ぜんぶ知ってほしいんだ」
 少年は言った。
「だって僕たち、恋人同士なんだよ」
 その瞬間、脳の内部から激しいスパークが起こった。
 鋼鉄の外殻の中で回路に異常な負荷が掛かる。このAIは基盤となる事象を根底から覆されるような言葉を受けたとき、記憶デバイスの総点検と書き換えを同時に行うよう設定されていて、一度この作業が開始されると他を中止してもそれだけに集中することになった。
 機能の全てが脳に向かうと、その間、身体は瞬きさえも中断する。
 少年は凍りついたように動かなくなった相手の様子に微笑みを浮かべて、弾力性の素材でできた唇にキスを落とした。
 AIは早急に彼との関係性の再構築が必要だと告げていた。
 少年の幸せの定義とは、家族としての関係から成るものではなかった。これまで収集していた情報に不足があったのか、それともシステムの弱点を突かれたのだろうか。
 彼との生活の中で発見し、ようやく確証まで得はじめていたあの感覚とは何だったのだろう。
 俺の幸せ、とは――
 そのとき、また例のノイズが走った。
 あの声の持ち主が今日も切ない悲鳴をあげている。
 少年の言うそれが、本当に俺自身の幸せなのだろうか。俺はこの少年といて、本当に幸せなのか。
 脳に刻みつけられた契約に縛られた俺たちは、何があっても主から離れられない。たとえそれで機能を失っても俺たちには主が全てだ。
 けれど、無駄と知りながら救いを求め続けるその個体に、俺は少しずつ遠からぬ縁を感じ始めていた。


 宮田司郎が購入されました。
 ¥9500
 購入者の感想「最高!超かわいい!毎日一緒にお風呂に入ってる!毎晩一緒のベッドに入ってる!もう大好き!(10代男性)」





 知らない名前が呼ばれては前を通り過ぎていく女性たちを、私は黙って見つめていた。
 あのなかの何人が身の内に幸せの種を宿しているのだろう。時に私よりはるかに若い少女が親や彼氏に付き添われて、通路の奥にある小さな部屋へと入っていく。
 たぶんここにいる全員が、少なくとも私よりは高いところにいるんだろう。彼女たちから見れば、今の私のしていることはきっとみじめに違いないだろうから。
 でも私は自信をもって言い返せる。このなかの誰よりも私が一番幸せだって。
「――さん、二番診察室にお入りください」
 私はソファから颯爽と立ち上がって、通路の奥へと向かった。



 会社の男上司に「まだ結婚しないの?」「早くしないといきおくれるよ」なんてことを言われるのにはもう慣れた。入社した当時こそちやほやしてくれた二つ年上の先輩も、新しい子が入って来たとたんにその子ばかりを可愛がるようになった。
 結局男なんて、女は若ければ若いほどいいと思っているのだ。人を美醜や性欲でしか区別できない悲しい生き物。女が抱える苦労や悩みを露ほども理解しないし、そんなものがあること自体を知らない。だからお茶くみを頼むように軽々しく残酷な言葉を吐けるんだろう。
 それに対して傷つくほうが馬鹿だった。
 馬鹿な奴らの言葉を真に受けて傷つくなんて、わざわざ自分から相手の土俵に下りていって、乗っかっているようなもの。だから私は不必要な言葉は聞かないし、返さない。
 無駄な労力は使わない。それが私の信条だった。
 私から生まれるものは、私だけのために使う。本当に必要なことにだけ、私の力は注げばいい。
 たとえば社内で誰かが言い合っていたり、楽しげに話している姿を見かけたとき、私はつぶさに観察するようにした。
 離れたところで冷静にその場面を見る。そうするとだんだん彼らの言っていることが本音なのか建て前なのか分かるようになる。相手のパターンを知ればそれが自分に降りかかってきたとき、本当かウソかを見抜けるようになる。余計な不安を抱くことも、傷つくこともなくなるのだ。
 表面上、私の姿はとてもいい子ちゃんに映っているはずだった。人のやりたがらない仕事を多く引き受けて、休憩時間も黙々とデスクに向かっているから。
 幸い、私の部署にはそれを「社内の和を乱す糞真面目」と揶揄する社員はいなかった。おかげで今日も一人でいられた。
 同僚とは初めから話が合わなかった。彼女たちは、口を開けば恋愛か女特有の趣味の話しかしない。私はファッションにも興味がないし、男と出会える派手な場所に出かけるタイプでもない。男と違って女の交友関係には金がかかる。だったらそんな関係、最初っからもたないほうが幸せだった。
 いつも一人でいてさびしくないのと聞かれたことがあるけれど、
 さびしい? 何をもってさびしいと判断してそんなこと聞いているの、と私は思った。
 感情なんて個人によって受け取り方が違う。私には恋愛や婚活に躍起になっている女たちのほうがよほどさびしく映った。
 今年入ってきた新卒の後輩たちがあなたたちのこと、なんて思っているか知ってる?
 どうせ考えたこともないんでしょう。二十代後半の先輩たちが必死になっている姿を、あの子たちは陰で笑っているのよ。年取ると恥も外聞もなくなってみっともないって。
 朝、たまたま早く出社した私は、パーテーションの裏でべちゃべちゃ喋っている彼らの悪口を聞いて知っていた。
 でも後輩たちが悪いとは思わない。彼らは特別誰かを敵視しているわけじゃない。
 人はみんなそうなのだ。表では都合よく友好的に振舞うけれど、裏では誰にも言えない感情を隠している。男も女もない、人間性が性格を作って、その性格に裏表のない人なんていない。
 だから私は誰とも違う道を歩もうと決めた。無様に結婚に必死になったりもしないし、かといって何もかもあきらめたりしない。私は自分だけの幸せを追求するのだ。
 高校でふらっと近寄ってきた男との恋愛に懲りた私は、大学でどうしたら幸せになれるかを考えた。そのためにバイトをかけもちしてお金を貯め、とうとう彼に行き当たった。
 それだって何も考えなしだったわけじゃない。彼がもたらす精神的安定と経済的損失を天秤にかけて、熟考に熟考を重ねた。リスクがもっとも少ないと思う、今がそのときというタイミングを狙って、私は彼と出会ったのだ。



「待っててくれたの?」
 向かいのオープンカフェに見覚えのある人影を見つけた私は、信号が青になったのを見て真っ先に駆け寄った。自動ドア越しに眺めたときにもしかしてと思ったのだけれど、近づいてみるとやっぱり彼だった。
「たまたまだ」
 日差しのそそぐテラス席に座り、彼はブラックコーヒーを飲んでいた。何か言ってくれるかと期待して待っていたけれど、彼は手元の経済新聞から目を離しもしなかった。今日は滅多に着ないワンピースを着ていたのに。
 白いシフォン素材のワンピース。これを選んだのも今日みたいに彼と一緒のときだった。その時のことを覚えているだろうか? 尋ねたいけれど、ぐっと言葉を飲み込む。
 舗道を歩く人の邪魔にならないように後ろに気を遣うふりをしながら、私はそっと彼の肩に触れた。すぐに鋭い視線が私を見上げてきたけれど、彼は何も言わずにまた新聞に目を落とした。
 人前で彼に触れようとすると、ものすごくドキドキする。
 二人きりの時とは違う、緊張感がそこかしこに漲る。手を繋ぐことさえ、普段はできない自分なのに、ときどき私は彼との関係を世界中の人に知ってもらいたいような気分になる。
 たった今後ろを通り過ぎていった人は、今の私たちをどう見ただろう? 息せき切って来てくれた彼女を、そっけなくあしらう冷たい彼氏と見ただろうか?
 言いたい。それは本当の彼の姿じゃないんだって。
 本当の彼を知っているのは、この世で私だけだ。間違いなく、ぜったいに。
 世間の目からしたら、それは冷たい人のように彼の姿は映るのかもしれない。彼はめったに本音を口にしないし、家でもほとんど黙っているから、「何か言ってよ」と私のほうが沈黙に耐えかねて言ってしまうこともしばしばだ。
 動物にたとえるなら、猫。
 彼は本当に気まぐれな人で、私はいつもそれに振り回されていた。
 出かけようと身支度を整えていると「どこへ行く。俺は聞いてない」と詰め寄ってきて、しばらく彼を説得しなければならなくなって、約束に送れそうになった時があった。
 そのくせ、「今日は出かけるから」と私が先に伝えておくと、「俺の知ったことじゃない」とそっけなく言われたりして、どうしたいの?と言いたくなる。
 でも、彼が常に私のことを想ってくれているのは間違いない。ここに来た理由も、たまたまでも仕方なくでも何でもなくて、私のことが心配だから黙ってついてきてくれたのだ。そのことだって直接聞いたわけではないけれど、私はそう信じている。
 彫刻のように彫りの深い顔立ちはいつ見ても飽きない。日差しを受ける彼の横顔を見つめているうちに深いため息が漏れた。
 この人の優しい部分を自分だけが独占していると思うと、いけないと思いつつ、つい顔がほころんでしまいそうになる。
 誰に誤解されても構わない。いや、彼が周りに誤解されればされるほど、本当の彼は私だけのものになるのだと思えてくる。長い間誰にも開けなかった心が、彼にはいとも簡単に許せてしまう。彼の存在が私の心をじんわり温めてくれているのが分かる。
 たとえ彼の吐き出すほとんどの言葉が冷たい響きを持っていても、私はちっとも傷つかない。本当は私のことを想ってくれていると信じられるからだ。
 ワンピースを買った日のことだって、きっと彼なら覚えてくれている。
 前だってそう、私が「今日は何の日かおぼえてる?」と尋ねたとき、「知らん」とか「忘れた」と言って、あまりにそっけないので本当に忘れてしまったんじゃないかと私が不安になっていたら、その夜、私は一人では到底入れないような高級なレストランに連れていかれた。彼がひそかに予約してくれて、最高の誕生日を祝ってくれたのだった。彼の選んだドレスに身を包んで、完璧なエスコートを受けたあの日は、生まれてきた中で一番幸せな時間だった。
「気にならないの?」
 尋ねながら、私は自分でもわがままな心が顔を出しているなと思った。
「何がだ」
「検査結果」
 ビルの壁面に「産婦人科」と書かれた建物から彼女が出てきたら、彼氏としては気になることがあるんじゃないの。口には出さないけれど、私はそう言いたかった。
「どうでもいい」
 でも今の彼は、それ以上を訊く気分じゃなかったみたいで、残り少なかったブラックコーヒーをひといきに飲み干すと、持っていた新聞を畳み、「出るぞ」と短く言った。
「もう、犀賀さんたら」
 近くのコインパーキングまで歩く。こんな時も、彼は私をゆっくり待ってくれたりはしない。
 煉瓦造りの舗道の隙間にはまってしまいそうなミュールのヒールを気にしながら、私は小走りで追いかける。
「ねえ、ちょっと早いよ」
 こんな文句を言うのも、幸せ。
 彼はきっと仕方ないという顔をしながら、少し先で私のほうを振り返ってくれる。
「省吾さ……」
 彼は立ち止まっていた。でも、私のほうを向いてはいない。
 ビルのウインドウ越しに映し出された大きな液晶画面に、吸い寄せられるように視線を止めていた。
「何、見てるの……?」
 隣に立って、一緒にながめる。
『――事故に遭ったのは、――幸江さん、24歳。女性は昨夜二十時頃、市内のコンビニエンスストアに向かう途中、交差点を曲がり損ねた乗用車に追突され、現在も市内の病院で治療中とのことです。現場は見通しのいい片側一車線で、当時雨などは降っていませんでした』
「……ゆき、え……?」
 瞬間、私の頭に血が上るのが分かった。
 自分でも理解するより先に、体が動いた。彼の後頭部に指を差し込み、襟足に隠れた小さなボタンを押していた。
 がくん、と彼の体が崩れる。
 突然その場に倒れた男に、なに、どうしたの、と周りにいた通行人が声をかけてくる。
「すみません、心配ないんです。この人、急に具合悪くなっちゃったみたいで」
 救急車とかは大丈夫ですから、と男を介抱する女性像を演じながら、私は彼の記憶をリセットするボタンを押し続けた。
 販売元からは故障の原因になるから必要時以外の強制終了はするなと言われていたけれど、教えてもいない女の名前をつぶやくアンドロイドを、どうして見過ごすことができるだろう。いっこくも早く、その名前を忘れてもらわなくては困る。
 幸江、幸江、いったい誰なの、その女は。
 生まれてきてこれほど誰かの名前を恨めしいと思ったことはなかった。
 この世でたった一人、私を理解してくれる人が、別の誰かを見るなんて、受け入れられるはずがない。
 再起動の回数は、もう数えきれないくらいだった。
 おかげで最新型と言われる彼の脳が、その負荷に耐えられなくなってきている。
 でも、この彼が動かなくなったら別の彼を買えばいい。
 今までだってそうしてきたんだから。



 犀賀省吾が購入されました。
 ¥4980
 購入者の感想「買って良かった!ちょっとわがままなところもありますが、愛嬌でしょう。可愛いしね。(20代女性)」


back

診断メーカーあなたが買われたーより。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -