小説 | ナノ

  大丈夫。少し、眠るだけ


「…レン、エレン…!」

遠くで声が聞こえた。

「エレン…頼むから、頼むから目を覚ましてくれ…!」
きいたことある声だ。
…いや、きいたことあるどころじゃない。
これは、愛しくて愛しくて誰よりも大切な人、

──兵長の、リヴァイさんの声だ。

起きなくては、起きなくては、リヴァイさんが待っている。

でも、なんでだろう、力がはいらない。
起きたいのに、リヴァイさんのこと抱き締めたいのに。

「っ…エレン、泣くな」

ぽた、ぽたぽた

全く、泣いているのはどっちですか。

「エレン、エレン…」

お願いだ、最後に最後に一度だけ、

「へ、ちょ…」
「っ!エレン!」

やっぱり、泣いているのは兵長じゃないか。
兵長を泣かせるやつなんて駆逐してやりたい…のに、
俺が泣かせている。大好きな人を悲しませているのは俺なんだ

「大丈夫です。兵長少し、眠るだけですから…ね」
「わかった、わかったから…」
「兵長…ありがっゴホッ、ぁ」
「もういいしゃべるな、エレン」

兵長、兵長、笑ってくださいよ、最後ぐらい。泣かないで…

「──ありがとうエレン。愛している」
「俺もで、す、リヴァイさん。大好きだ…」

そこで俺の意識は途切れた──。


***


「おはようございます、リヴァイさん!」
「あぁ、おはよう」

この世界は、驚くほど平和だ。
確かに、犯罪や貧困は耐えない。
しかし、あの頃に比べたら─。

そう、だから今度こそ、幸せに…いつまでも笑って過ごするように。

「なにぼぉっとしてやがる、いくぞ」
「あ、はい!リヴァイさん」

いつまでも、いつまでも──。



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