ブルロ夢 | ナノ


ズレてる幼馴染にご立腹




むかしは本当に、天使みたいな子だったの。

わたしの名を呼んで、わたしから離れないよう手をきゅ、と握り、いつもわたしの後ろを着いて回っていた男の子。わたしが友達と遊ぶと分かればあからさまに口を結び不機嫌になっちゃうような、自分の気持ちを隠せない子だった。

「あしたは必ずおれと遊ぶって約束しろ」

指切りするまでその場を動かない彼にわたしの心を何かが擽った。それはもう言葉で表すならズキューンって感じ。なんだこの生き物。可愛い。マジで天使。尊い。片方の手でサッカーボールを抱き、もう空いた片方の手で小指を差し出すこの子が、どうかこの先よからぬ不審者等に拉致られませんように。

浮かび上がった思考はまさに自分の子を溺愛する母親だった。

わたしはこの子よりたった二つ上の当時まだ九歳のガキンチョであったが、この幼きミヒャを目の前にしてか弱い生き物は守らなきゃ!なんていう母性本能的愛護欲が心の底から湧いてきたのだ。




それが今じゃちょっと会わない間にこんな立派になっちゃって、ドシンと大きく構えて今わたしの目の前に座っているんだから泣けてくる。


「お前は直ぐに目移りするのが悪い癖だ。ガキくせぇ男ばっかり目がいって近くの男には気付かない。俺はお前の頭の中を覗いてみたいと常日頃思っている。何故こんなにもお前のことを思ってる男に気付かないんだ」


ただ今のわたしはかなり焦っていた。彼を知っている者ならばすぐ気付かれる。外で会うならせめて小さなこじんまりとしたカフェ(失礼)で!と確かにわたしが言ったけど、その判断は間違いだったようだ。いまは昼時もありそれなりに混んでいるせいでここは外のテラス席。場所どうのこうのよりもまず会う時間帯から考えなければならなかったと後悔しても時すでに遅し。大通りではないにしろ人は通り過ぎて行くし、変装していたってこれじゃ丸わかりではなかろうかとつい辺りをキョロキョロと見渡してしまう。

「おい、聞いてるのか」
「あっ聞いてるよ。えっと…なんて??」

いくらわたしが「オーラを消そう!もっと一般人っぽい感じで!こうっこうさっ!」と訳が分からぬジェスチャーをしたところで首を傾げて「ンなのは知らん。勝手に周りが騒ぐだけ」と何もしなくても堂々目立ってしまう彼なので、わたしが気を抜いちゃダメなのだ。だって当たり前だがサングラスをかけてもキャップを被っても、ここに居るのはあのミヒャエル・カイザーなので。ほんと、なんで、なんでわたしはこんな公共の場を選んでしまったのだろう。

もしもの場合、マネージャーとかって言えば世間は信じてくれるだろうか。いやわたしも顔バレしないよう同じくサングラスとかかけた方が良かったかもしれない。でもそれじゃ逆に目立ってしまうし、どうすればいいんだ。心の中で頭を抱えるわたしを目先の男はあの頃と変わらない綺麗な瞳で見つめ、そして聞いてねぇじゃんと顔を歪めて大きなため息をついた。

「だから、お前が好きだと言っている」

いつにも増して変だなあと思った。
日本で行われた青い監獄とかいうサッカー関連のプロジェクトから帰国したわたしの幼馴染は、幼い頃からずっとボールを追いかけ今では新世代世界11傑に抜擢されたサッカー選手である。小さな頃からミヒャを知っている身としましては、天性の才能と周りから称賛されようとも現状満足せず、更に高みを目指して見えない努力を積み重ねたきた結果だと喜ばしく思う。しかし困ったことが一つ。それはサッカー選手として名を馳せるのと同時進行で、俺様何様ミヒャエル様、つまり俺の言うことは絶対だ!という我儘な王さま思想も育ってしまったということだ。そしてその強引さがこの数年の中で今回が過去一だった訳でして。

例えば今日。本日のわたしは予定があった。友達とショッピングに行くという前々からしていた約束が。それなのにわたしの話を一切聞かず、今日でなければダメだと頑なに引かないミヒャにわたしの口からため息が零れた。ミヒャも忙しいのは分かるんだけど、無理矢理わたしの予定を無視して我慢が出来ない辺り、あの昔の可愛らしい天使はもういない。

「ああ、わたしも好きだよ」
「なっ何!?本当か!?」
「ほんとほんと。ってかやっぱりここはヤバくない?場所移動しようよ。バレたらわたしが死ぬ」

ミヒャは急に昔から突如わたしに好きかと問うてくることがある。なので返しはもうお手の物だ。初めこそ心臓が跳ね上がったけれど、長年ミヒャと接していて分かった。彼は意外と構ってクンなのだ。本人は否定をするが、横を向いても後ろを振り返っても斜めに顔を向けても全員ライバルという過酷な環境に立っているせいか、時折心が挫けそうになっちゃうんだろうな。そんな境遇にわたしは立ったことはないけど、心細くなる気持ち、分かる気がするよ。だから安心材料となる昔なじみの愛情を求める、多分それ。家族みたいなニュアンスに近いと思う。だからミヒャの好きは恋愛の意味合いでないことが分かるので、わたしも一々真に受けないで家族的なノリ、またはお友達感覚で好きだと返すようになった。

これはもうミヒャと会った際の日課みたいなもの…というかそんなことよりも今である。

何処で誰がわたし達を見ているか分からない。ゴシップ関係の記者、はたまたミヒャガチ勢のファンがすぐそこの低木から覗いているかもしれない。その人たちにこんな場面を撮られて拡散でもされたらわたしの明日の保証はない。刺されるかもしれん。それくらい、今のミヒャはもう有名人であった。

「何故死ぬんだ。ってか話変えるのやめろ」
「変えてないよ。こんな所だれかに見られたり聞かれたりしたらわたしも危ないけどミヒャも危ないって」
「周りは関係ないだろ。そもそもこの場所を指定したのはお前だクソ我儘なヤツめ。いいから俺の話を聞け」
「んなっっ……」

一際低く放った言葉にわたしの口は線を結ぶ。
場所の指定を誤ったのはわたしだけど、そもそも我儘言ったのはミヒャの方じゃないかと言いたいのを我慢して、その代わり分かりやすいよう眉間に皺を寄せた。

「…なんだその顔は。男に口説かれてる顔じゃないな」
「口説いてる?またまたぁ」
「…ハァ。元からバカなのは従順承知しているがまさかここまで疎いおバカちゃんだとは思わなかった」

失礼過ぎるほどのため息を吐かれた。いつも一言余計なんだよな。小さな頃からミヒャにはこんな節があり、直しなさいって何度か注意したが聞く耳持たず。慣れたわたしですら時折ムッとするので、これじゃミヒャのチームメイトは大変だろうな(一名除き)。そんなミヒャは不服そうにテーブルの上に腕を置き両手を顔の前で組んでわたしの返答を待っている。チラりと視線をミヒャの横へと移すと、その人物はストローを咥えたままわたしからスイッと目線だけを逸らした。

「……」

本日晴天。青空の下のランチタイム。いくらわたしがおバカだとて伊達にあなたの2年多く生きてはいない。この状況で口説いてる?何を言っているんだミヒャエルくん。流石に誰でも騙されないような冗談はやめて欲しいとわたしの口からフッと笑みが零れた。

「だってネスくんも横にいるじゃん?」
「僕のことは空気と思って下さい」
「無理あるよそれ

ネスくんはツッコまれると思っていたのか即座に返答が返ってきた為、わたしの顔は苦笑いになる。だってわたしがここに着いたときからミヒャの隣に座ってたんだもん。これを空気と思うだなんて存在感強すぎてキツいし、こんな公共の場、それも真横にネスくんがいるのに口説いているのが本気だなんて思えない。それこそからかわれてる感が半端ないのですが。

「ネスくんいつもミヒャにこき使われてない?大丈夫?」
「は……っはァァ?大丈夫に決まってんでしょう!なぁんであなたにそんな事言われなきゃなんないんですか!」
「ミヒャの練習に毎日付き合ってるよね。それもミヒャがもう下がっていいって言うまで。毎日ご苦労さま」
「こっこっちは好きでやってんですよ!労いされる筋合いなんてありません!!ってかなんなんですかその上目線は」
「えぇ…」

ネスくんは一瞬固まりかけると顔を赤く染めて怒りだした。前にも一度会った際にミヒャがわたしを幼馴染だと紹介しただけで彼の逆鱗に触れたらしく怒られた訳だが、「ネスはこういう奴なんだ」とミヒャが言っていたからきっと物事の沸点が異常に低いに違いない。わたしに威嚇しながら敵意を剥き出しにするネスくん。「カイザーのことを一番知っているのはこの僕です!」と言わんばかりに延々とミヒャの何処が素晴らしいか、何処に魅力があるのかを熱く語られた苦い思い出が蘇る。聞いていて楽しいには楽しいのだがミヒャの話題一択なので段々と同じ反応になってしまって困ってしまった。口が止まらないネスくんを前にして、集中力が切れたわたしは今日帰ったら何をしようなんて別のことを考え始めたそんなとき、「ネス、ステイ」とミヒャの一言でやっとお喋りしていた口がぴたりと止んだのだ。わたしが保証しよう、ネスくんあんたが一番、立派なミヒャエル信者だ。ファンクラブだったらもうハイグレードランク行きです。おめでとう。

「相変わらずだね、ネスくん」
「うるせえです!今日だってこんなにも忙しいカイザーが会いに来たんだからもっと泣いて感激したらどう、」
「ネス黙れ」
「はあい!」

躾された犬のように即刻口を閉じたネスくんに引きつった笑いが一つ込み上げた。それをネスくんはジト目で圧をかけてきたものだから慌てて背筋を伸ばすと、ミヒャが話を続ける。

「おいナマエ、何故お前がそんな事を知っている?」
「へ?」
「なぜお前が俺とネスのやり取りを知っているかと聞いているんだ」

天色の瞳を細めてわたしをじぃ、と見続けるミヒャに、ケーキを食べようと持っていたフォークを皿に置いた。

「BLTVだっけ?それにミヒャも映ってるって聞いたから見てたんだよ」
「は?」
「因みに有料会員だよ。ミヒャ頑張ってるかなぁなんて思ったら気になっちゃってさ」

テーブルに置いていたスマホを手に持ちチラチラミヒャの前に揺らせば彼は切れ長の瞳をぱちくりとさせる。

そうして一拍、いや二拍俯き黙ると突然肩を震わせた。

「ふっ、ふふ。そうか、そうかそうか。お前は俺を見たいが為にわざわざンな意味分からんアプリをインストールし有料会員にまでなったと、そういう事か」
「え?あうん?そう、だね?」
「ンなことしなくたって電話でもLINEでもすりゃあ相手してやんのに。ナマエチャンは素直じゃないのねぇ」
「そうですよ!素直になさい!子供じゃないんですから!!」

何故だろう。めちゃくちゃ負けた気がするしとっても勘違いされてる。絶対。百パーわたしがミヒャに構って欲しかったように捉えられてない?大丈夫そ?
それになんだかミヒャの表情はここ最近見たなかで嬉しそうに見えるし、意味分からん。というかネスくんはなんなの。なんでここにいるの。

「大体あなたって人は、」
「まぁ待てネス。俺は今非常に機嫌が良い。だからお前がした事も今回限りだが許してやる」
「ん?何を」

首を傾げるわたしにミヒャはパチンと指を鳴らした。すると真横にいる忠犬ネスくんはわたしにスマホを差し出したのだ。

「…わたしのSNS?」

写真投稿を主軸としたSNS。このSNSのアカウント名はわたしのもので、スマホとミヒャ達二名を交互に見やる。

「え、これがどうかした?ミヒャのことは載っけてないよ?」
「それが問題なんだ」
「はい??」

頭にハテナが沢山浮かんだわたしにミヒャはネスくんの名を呼ぶ。

「はい、カイザー。"○月×日。今日は久々のメンツで朝まで飲み。明日会社なんて信じたくない"」
「ちょ、」
「"今日朝からツいてなかったけど△△君(若手俳優名)拝めたから頑張れる!"…これは×日の投稿ですね」
「やめてよ!やめてったら!!」
「まだまだこんな意味不明な投稿がありますよ」

ネスくんマジで性格悪いと思う。こんな楽しそうに目をキラキラさせてるネスくん初めて見た。わたしの顔は羞恥心と怒りが混ざりブスになっているだろうがそんな事を気にしてる余裕なんてなかった。

「さっ最低!ミヒャもネスくんも最低!!」
「最低?最低はどっちだナマエ」

ミヒャは心底意味が分からないと眉を顰める。

「プッ、プライバシーの侵害だから!読み上げる必要なくない?!」
「見られたくないなら何故鍵をかけない?というか好きな女の日常を知りたいと思うのは自然なことだろう」
「すっ好きな女ったって、」
「俺は常日頃お前を忘れたことはない。朝起きたときも、寝る前も、サッカーをしている時間ですらお前をふと思い出す。今までお前には好きだと思う度に言葉にして伝えてきたはずだ。それなのになんだお前ときたら。俺が日本に立っている間、連絡も俺からしなきゃ送らないだろ。ってかそのSNSとやらでお前が格好いいとかほざいた芸能人とやらより俺の方がクソかっこいいだろうが。俺のことを好きとか言う割に、お前は俺がいなくても毎日こうして楽しんでいるのも俺にはよく分からん。クソ理解が出来ない。そうかと思えば俺を見たさにBLTVに入会して何をしたいんだ。そんなわざわざまどろっこしい事をしてまでして俺の気をもっと引きたいのか」

早口で言い切ったミヒャに対し、わたしの口はポカンと開く。そのミヒャの横で「立派です!流石カイザー!」と何処に褒める要素があったのかネスくんはぱちぱちと手を合わせて叩いていた。

「おい、またお前の思考能力は空に旅立ってるのか?」
「え…あ、ううん」
「ならいい。…で、お前の気持ちを知りたい」

心地よい風が吹いた。今日は雲一つない蒼空が広がっている。アイスコーヒーのグラスの中の氷がカラン、と揺れた。

「えと、ミヒャの言う好きってさ、幼馴染マジック的なものじゃないの?」
「は?」
「いや小さい頃からずっと一緒にいたからさ、その…なんていうか家族みたいな感情を恋愛的な好きと間違えてるんじゃないかなぁって思って」
「…………エ?」
「だって本当にわたしのこと好きならバカにしないし、ちゃんとした告白するなら失礼、かもだけどネスくん呼ばないでしょ?」

ミヒャは固まった。隣のネスくんも。
冷凍庫に随分としまってあったアイスのようにカチコチになって動かない二人を前に、わたしはコーヒーのグラスに口付ける。

「そもそも好きな人を前にしたらもうちょっとしおらしくなるというか、まぁこれは人それぞれかもしれないけど」
「まっ待て!俺の好きは絶対勘違いじゃない。俺はお前と出会ったときからずっとお前以外の女に興味がない!本当だ。これが幼馴染なんとやらで済まされる話じゃないだろ」
「っぅですよ!癪…ですけどカイザーがどれだけあなたのことを思っているか日々散々聞かされてきましたから!耳を塞ぎたくなるくらいにっ」
「そうなの?」

こくこく頷く彼らにわたしは考える。ネスくんも一言余計だがそれは置いておいて、ミヒャがわたしをずっと恋愛感情として好きだったとはにわか信じられなかった。上手く返答出来ず口を閉じているわたしを察したのかミヒャは柄にもなく頭をかいて、それから頼りない声を漏らした。

「今日ちゃんとお前に好きって言おうと思っていたんだが、その…なんだ、ネスを連れてきたのは自信がなかったっつーか」
「自信?」
「お前は俺が好きだと言う度に明るい顔して好きだと口にするくせに、すぐ話を逸らすから…そうなるとどうも上手くいかん」
「別に逸らしてたつもりはない、けど」
「僕から言ったんですよ。カイザーが良ければ後ろ盾させて下さいって。ほんとどうしてこんなにカイザーが真剣なのにあなたはバカなんですかね。ハッ、呆れました」

後ろ盾って絶対ミヒャの行動を把握したくて言ったんだろう。わたしには分かる。何故ならネスくんはわたしとミヒャが会話をしただけでただならぬ空気をさらけ出しているので。それに普段のミヒャならこういった事に応じない筈だ。それなのに許可したのは、やっぱりそういうことなんだろうか。

でもなんで今まで気付かなかったんだろう。
ミヒャがわたしを見つめるその目つき。その顔色。常に視線が合うのに、目が一秒合うだけで逸らされる。

そんなことを思ったら、途端に胸の奥がきゅうと掴まれような感覚がわたしを襲った。それに自分が一番驚いている。

わたしの後ろをついてきて、思うままにいかないと拗ねちゃって、それが可愛くて堪んなくて。段々と年齢を重ねていったら小さな頃のようにはいかなくなったがそれでもわたしに会いたいと連絡をくれて。横暴なところはあるけれど、優しいところも勿論ある。

そっか。それってわたしのことを女の子として見てくれていたからだったのか。


「付き合って欲しい」


胸が一つ大きく鳴った。ミヒャのことは好きだ。我儘な王様だけれど、わたしのたった一人の幼馴染。ミヒャの気持ちをやっと理解したら、申し訳なかった気持ちとありがとうって気持ちが入り交じる。

「ミヒャ?」
「ん、」
「ミヒャの気持ち、とっても嬉しいよ。でも今まで家族っていうか、幼馴染としてしか見てなかったからえっと…ミヒャが良ければだけど、お友達から始めてみる?」

羞恥心に駆られながらのわたしの言葉が耳へと届いた瞬間、ミヒャは口を緩ませてわたしに笑顔を向けた。それは幼き頃見たわたしの大好きな笑顔。隣に座っていたネスくんが感激して涙するくらいの、表情だった。


今までミヒャがわたしに思いを寄せてくれていた分、わたしもちゃんとミヒャと向き合いたいと思う。ってかわたしも単純なので、途端に心臓バクバクし出してきてそれを隠そうと目先のケーキを頬張った。食べている最中ミヒャがずっとわたしを見つめ続けるものだから、恥ずかしくなりいてもたってもいられなくなって何か口にしようとケーキを再度注文したのだ。


しかしこれがいけなかった。


「まだ食うのか?朝飯遅かったって言ってたろ。太るぞ」
「ぁえ?」
「ふん、まぁ太ってもお前が可愛いことは俺が一番よく知っているし、例え子豚になったとしても俺が痩せるようレクチャーしてやるから問題ないが……ナマエ、どうした?」

ネスくんは「…もう僕のここにいる存在意義はありません」とかなんとか言ってフラフラ帰っていったが、ここにいなくて良かったと心底思う。だってあんなミヒャに感動していたのにまた怒らせてしまうだろうから。

フォークを持つ手に力が入った。ミヒャはわたしへの地雷を踏んだとは到底思ってはおらず、未だ柔和に微笑んでわたしに首傾げている。


「そっ、」
「ん?なんだ」


「そういう所だよ!そういうこと言うから恋愛対象として見られないんだってば!!アホ!バカイザー!!絶対付き合ってやんないからっ!もう帰るっ」


席を立ちわたしは即座に背を向ける。ミヒャは驚き過ぎたのか声も出せず目を丸くしたままだった。




明朝、ミヒャからの連絡は鳴り止まず、それでいてテレビをつけたら唖然。ミヒャエル・カイザー女に振られ呆然!?と大きくニュースで取り上げられ、やっとミヒャと仲直りした頃にネスくんにブチ切れられた。






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