ブルロ夢 | ナノ


押してダメなら引いてみよ



体だけの付き合いって、期間が長ければ長いほど情が湧くってのは本当みたいだ。

それでもって体から始める関係は友達以上恋人未満、つまりその先へ進める確率が低いというのも、身を持って経験した。

だって少しでも気がある相手なら、手を出すより先に恋人になれる手順を踏むはずだもん。



「うぅっ」
「何故お前が泣く?意味が分からん」

2週間ぶりに会った目の前の男はわたしを見るなりまたかと困ったように眉を顰める。そうして盛大なため息と共に面倒くさそうに言葉を吐き捨てた。

「っだってミヒャエルくんまたすっぱ抜かれてるじゃん!それなのにわたしを呼び出すとかどうかしてるっ!この遊び人!」
「はぁ?あんなのどう見てもただのでっち上げって分かるだろ」
「腕まで組ませて置いてよく言うよ!よりにもよってあの女優さん、わたしの好きな人だったのに!」

世界で名を馳せるスーパーなサッカー選手はお金持ちなので、宿泊するホテルもそんじょそこらのお手頃価格なシティホテルには泊まらない。グレードが高い1泊ウン万円するスーパーな客室を毎度の如く取る人だ。この部屋だってわたしが払うとなれば2、3日考えてしまう程のお値段に違いない。いつものわたしならば部屋から見える夜景に目を煌めかせ、ぎゅうと彼に抱き着いている頃合いである。しかし今のわたしは景色を見る余裕もなければ大型犬がギャン!と吠えるかの如く声を荒らげて可愛らしさの欠片もない。そんなわたしに彼はまたひとつ、あからさまに息を吐く。

「あのな、リップサービスってのご存知ない?誰でもやるだろそんなん。これだからおバカは困るな」

やれやれ、とでも言うように、慣れた手つきでわたしの手からバッグを取りバッグハンガーに掛けたミヒャエルくん。空いた口が塞がらない。

「嘘じゃんウソ!!あんな雰囲気、絶対手を出してるに決まってるじゃん!!」
「お前は俺をなんだと思ってるんだ」
「…誰にでも手を出す遊び人」
「クソ失礼なのはこの口か?」

自分から聞いてきたくせにむぎゅりとわたしの頬を摘んだ彼はマジで容赦がない。鈍い痛みが襲い顔が歪めば「ブサイクちゃんねぇ」とケラケラ笑っている。

「んぐっ、はなじで浮気者
「勝手な妄想ご苦労さま」

こんな大層なホテルで喚く客はきっとわたししかいないだろう。数分前に何事もなかったかのように澄ました顔でフロントマンに挨拶をしたが、そんなわたしを見たら目を丸くするに違いない。ニタニタと口角を上げた彼は存分にわたしの頬を捏ねくり回した後、更に追い討ちを掛けた。

「ってか浮気も何も、お前は俺の彼女でも何でもないだろ」

わたしの反応を伺うように背を屈めて視線を合わせた彼と、ピシャリと固まったわたし。

「ひっひどい」
「褒め言葉をどうもありがとう」

綺麗な天色の瞳が三日月型に細まった。

…このクズ!!全世界の女子(言い過ぎ)を魅了してはダメージを与えバッタバッタとなぎ倒していく女たらしめ!(ヤケ)

そう言ってやりたいのにベッドに寝かされて服を器用に脱がしていくミヒャエルくんに対し何も言えず、その代わり目からはまた涙がぶわっと流れた。





自分のことは、自分が一番よく分かってる。

わたしは流されやすい性格故にハマったら一直線で、昔から恋愛事に関して泣きを見ることも多かった。遊ばれたこともあるし、普通に振られたこともある。どれもこれもあまり長続きせず振られたときにはこの世の終わりみたく落ち込むんだけど、わたしは切り替えの速さもピカイチだからか、次の彼氏が出来るまでそう時間はかからなかった。

そのせいでわたしを知らない周りの人たちに"男がいなきゃダメな女"と呼ばれていることも知っていた。解せぬ。男がいなきゃダメなんじゃなくて、わたしを好きだと言ってくれる男よりもわたしの方が好きの気持ちが大きくなって振られてしまうのだ。誤解しないで欲しい。…まぁ重いと言われればそれまでだけど、好きだと思ったときに好きって気持ちを表に出していかなきゃ後悔する気がするんだもん。

「それが男にとっちゃ苦痛なんじゃない?」や「だから遊ばれるんだよ」と友人に呆れられ、クールぶって自分の気持ちに蓋をしたこともあるが、やっぱりそれは本来のわたしじゃないから単にキツいだけだった。

「固定の女は作らない」

これはわたしがミヒャエルくんとこういう関係になって気持ちを伝えたときに言われた言葉。耳を疑った。だって女は遊びだけで結構ですと面と向かって口にする人は初めてだったからだ。

「…どうしても、ダメ?」
「ダメ。女は付き合えば例え仕事の関係であっても他の女がどうたらこうたらうるさく縛りたがるからな。そーいうのがクソダルい。特に、」
「ぃたっ」
「お前みたいな女はそうだろ」

ぴしゃりと言い切ったこの男はわたしのおでこを軽く指で小突くとベッドから起き上がる。そんなわたしは瞬き数回。付き合ったらそんなもんじゃないの?え、違うの?

どうやらミヒャエルくんとわたしはお付き合いという観点に相違があるらしく、真逆の考えなんだろうと思う。多分きっと相容れないと分かっているのに自分の気持ちに嘘がつけなくて、骨抜きにされた体をなんとかゆっくりとミヒャエルくんに向けた。

「でも彼女になりたい」
「お前は人の話を聞かないねぇ」

わたしよりも随分と体力が残っているミヒャエルくんは呆れたようにペットボトルの水を口に含んだ後、わたしの両腕を動けないように固定すると可愛らしく鎖骨にちゅう、とキスを落とした。





付き合えないと言っている男に対しそれでも付き合いたいと口にしてしまったから、もう連絡は来ないだろうと思っていた。

気持ちを伝えるまでに会った回数は3回程度で、その3回で恋に落ちたわたしが単純だったのか、それともミヒャエルくんと関係を持った女は過半数がこうなってしまうのか。

ミヒャエルくんて、魔性の女の男版だと思う。

自分のことは教えてくれないのに、わたしのことはある程度把握してるから、切ろうにも切れない。付き合う気がない男と会って毎度心を痛めて泣くのはわたしであり、ミヒャエルくんはやることやって満足気。
だけどわたしの事をおざなりにするんじゃなくて、たまに飴と鞭を使い分けるかのように飛び切り甘い言葉を吐いたりするもんだから、抜け出したくても抜け出せない。

例えば、「お前に会いたくなった」とか気のあるセリフを淡々と述べるミヒャエルくんは、女が何をされたら喜ぶのかを分かっている。だからミヒャエルくんから誘われたら断る女はいないと私は思っているし、1度沼ったら最後、マジで蟻地獄。それでいて間違いなく女から好意を寄せられることも慣れているから、わたしが好きだと口にしたところで簡単に振り向いてはくれないのだ。

振られ続けても、付き合う気がミヒャエルくんになくても、呼び出されたら行ってしまうわたしはきっと彼からすればかなり都合のいい女であり、扱いやすいに違いない。

その証拠に、好き好き言いまくるわたしをミヒャエルくんは切ろうとしなかった。

告白しては振られ、じゃあ諦めようとすれば連絡が来る。そうして月日を過ごして今の今までずるずるとわたしは彼に片思いをしてしまっているという訳でして。






本日もわたしはミヒャエルくんに呼ばれ、指定されたホテルへ出向いていた。1回ならず2回目の行為が終わりを迎えると、時計を見ればもうすぐ0時。ホテルを取っても朝が早い彼は大体わたしを置いて帰ってしまうから、それが毎回寂しく思う。

「"ミヒャエルくんに遊ばれたんです!"ってわたし記者の人にタレコミしちゃうかもよ」
「はいはい。出来るならどうぞご勝手に」
「言う!今回ばかりはほんとに言っちゃうからね!」
「はぁ。どーしたら機嫌よくなってくれんのかねぇ」
「…今日一緒に寝てくれたら直る」

友達以上、恋人未満。
こういう関係も、半年に差し掛かれば少しの我儘を言ってみることも出来るようになった。我ながら思う。変に肝が座っためんどくさい女だと。

わたしの小さな脅しもミヒャエルくんは顔色ひとつ変えない。一体この男を虜にする女はどんな人なんだと最近は一周まわって考える。答えなんて見つかったら苦労しないんだけども、ミヒャエルくんが服を着て帰りの支度を始める度に思うのだ。

「明日は早いって言っただろ?」
「分かってる、けど広い部屋に1人で泊まるのって結構寂しいんだよ。ミヒャエルくんも1人で泊まれば分かると思う」
「残念ながら俺はそんな子供じゃない」

彼女じゃないもん。朝までいてくれる訳がない。縋ってしまうのもみっともない。迷惑だというのも従順承知。ちゃんと心では分かってるのにそれでも1パーセントの勝率に期待をしてしまう。

とは言っても今日は平日。まだ若い年齢ではあるものの、日頃の仕事の疲れも相まって好きな人に抱かれるのは幸せではあるけれど、性欲魔人であるミヒャエルくんと2回もセックスすれば疲労した体は悲鳴をあげる。休みたいと言わんばかりに瞼が勝手に重くなって、目を覚ませば空にはお日様が上り出してるのがいつものことだった。

寝たら1人で朝…。
ミヒャエルくんが帰っちゃう…。

そんなことを思っても悪態すらもうつけない。
しょうがない、諦めよう。そう思って再び瞼を閉じかけると、布団を捲られて冷たい空気が忍び込んできた。

「ん、ミヒャエルくん?」
「仕方がないから今日は特別にぎゃあぎゃあ騒ぐお前が眠るまでいてやる。だからとっとと寝ろ」

マジですか?
声に出す代わりにふにゃりと自分の頬が緩んだ。やっぱ言ってみるもんだなぁ、嬉しいなぁって。

そうしたらわたしの前髪をさらりと一定のテンポで撫でられていることに驚いて薄目を開けると、薄暗い照明のなかで天色の瞳と視線がぶつかった。


「喜べ。こういうことすんのはお前1人だ」


俺様何様ミヒャエルさま。今日は何かのご褒美を貰ったみたい。毒のように甘い声色で、そんな優しい顔を向けられたら余計好きになってしまうでしょ。大事な子に向けるような顔でそんなことするなんて、ほんと、ずるい。

「付き合って」
「アホ。それとこれとは話が別」

今ならいけるかも。意味もない自信が眠気MAXの脳内に押し寄せてきたものだから、性懲りもなくわたしはまた告白を口にする。だけどやっぱりその願いは愉しげに笑ったミヒャエルくんに却下されてしまった。







休日出勤という名のパーティがわたしの働いてる社で行われることとなった。なんでも社長が定年を迎えるとのことで、新社長のお披露目会みたいなもの。

ウチの会社はそれなりに名前が大きいので、関わりのある企業等を呼んで紹介するのは恒例であるらしい。

今回のようなものは初めてだけど、こういったパーティは入社してから何度か出席したことがあるから緊張はしない。わたしみたいな平社員は緊張よりも疲れが勝つ。だけど周りの企業にしっかりと挨拶さえすれば、比較的自由の身なので食べることに徹することが出来る。

クリーニングに出したての控えめで形の良いパーティドレス。これを着るだけでいつもと違った自分に見えるから、ちょっとだけモチベーションが上がる。そうして普段より低めのヒールを履いて会場へと向かう為のタクシーに乗り込んだ。


「いつもお世話になってますっ。今日は是非楽しんでいってくださいね」
「ああ君か。今日も笑顔がいいねぇ!元気で結構!」

ウチが昔からお世話になっている社のお偉い様に笑顔を向けてシャンパンを手渡せば、顔を覚えて貰えていたことを嬉しく思う。こういう場は気疲れするが、人と接するのは嫌いじゃない。

『よくそんな胡散臭い顔でヘラヘラ笑っていられるな』

ミヒャエルくんと出会ったとき、ロマンチックな過程もなんにもなくこういう場の社交パーティだった。初めこそきっと彼の嫌いなタイプであったろうわたしが、よくぞこんな関係になり今まで続けていられているなと自分でも不思議に思う。

思い出したらふふっと笑いが込み上げてきて、小首を傾げたお偉い様になんでもないと慌てて会釈をしてその場を去った。それからも上司と共に挨拶に周り、やっと少し落ちついてきた頃に息を吐く。

そうしてさっきから何度かわたしの方へチラチラと視線が突き刺さって来るような気がするのは気のせいなのか、そうじゃないのか。

視線の方向へ顔を向けても目が合わないので、やっぱりそれは勘違いらしい。


「あっナマエさん!」

名を呼ばれ、振り返れば瞬く間にわたしの顔が明るくなった。今日は様々な企業がこのパーティに参加をしている。お得意様である大手もいれば、逆にお世話になっている企業等。他にもウチがスポンサーとしてうけもっているサッカークラブも例外でなく、今日ここに招待されている。

「世一くん!お久しぶりです!」
「久しぶり、です。俺こういうパーティあまり来たことないから緊張してたんスけど」
「大丈夫大丈夫!そのスーツ似合ってるよ。ってか世一くんこの間の試合テレビで見たんですけど!凄い活躍だったねぇっ。思わず拍手しちゃいました」
「えっ!見てくれたんすか!?」

双葉をぴょこんと揺らしてはにかむ世一くんは、今じゃドイツで知らぬものはいないくらいサッカーで名を馳せている日本人だ。

「見た見た見ましたっ。ウチの課でも世一くん人気者でしたよ。流石です」
「アッ、っはは。いや、めっちゃ嬉しい…っす」

わたしと確か歳が変わらないと思ったのだが、幾分幼く見える世一くんは顔が真っ赤に染まっていく。
ボーイさんからグラスを受け取りそれを世一くんに手渡した。

「お酒、飲めます?」
「あっウン。飲めます!」
「それは良かった」

乾杯してグラスに口付けて、ウブな世一くんと世間話をする。楽しいんだけども、やっぱりこっちを見ているような視線を感じる。何度かその方向へ顔を向けてみるが、全く視線が被らない。

「…もし良かったらなんですけど、」
「ん?」

お酒が弱いのか、こういう場が苦手なのか。
ほんの少し緊張している世一くんに耳を傾けると、世一くんはグッとグラスの酒を飲み干した。

「もっもし良かったら今度飯でも食いに行きませんか!?」

わたしより頭1個分以上高い背を見上げながら、瞬きを繰り返す。かなり緊張しているように見えるそれは、きっとわたしを誘う為だったのだろうか。

「ああ、はい。いいですよ」
「えっマジ!?…じゃあ、」

わたしが頷いて、世一くんが言葉を繋げようとした瞬間。わたしの肩をグイッと力強く引き寄せて間に入ってきた男がいる。

「あ…カイザーさん」

わたしよりも、世一くんよりも、随分と背丈が高い彼はわたしを見下ろして眉間に皺を寄せている。その顔はひどく不機嫌極まりないという表情で、背筋が凍ってしまいそうだった。

「随分と楽しそうだな」

先程まで笑顔であった世一くんですら表情が固まるような声色に、泣く子も黙ってしまうかのような冷ややかな目付き。

しかしそんなことで屈するわたしではないから笑顔を向ける。この会社で働き何人の人を相手してきたと思っているのだ(ぺーぺーだけど)。新入社員のときに相手企業に向けられた怖い顔を思い出せばなんということはない。するとわたしの表情を見たミヒャエルくんが一瞬怯んだのをわたしは見逃さなかった。

「世一くんとお話してたんです!あっこの間の試合、カイザーさんも活躍なされていましたね」
「んなっ…」

ミヒャエルくんは言葉に詰まる。こんな彼を見たのは初めてなので、なんだか特してしまった気分になった。多分、いや絶対、後付けされたような言い方に気分を害したんだろうと思う。

「…こんなとこで油売ってていいのか」
「あっはい。もう大分挨拶もし終わりましたので、大丈夫です」

どんどんどんどんミヒャエルくんの表情が険しくなっていく。だってミヒャエルくんの綺麗なお顔が、今や誰にも見せちゃいけないような、日本で言うとオニという怪物みたいな顔してるもん。

「…なんでお前は真っ先に俺に会いに来ない?」
「へ?」

そうして低くドスの効いた声音でわたしに問いかけるミヒャエルくんは、顔は笑ってるのに目が笑ってない。言うならばこれはハンニャってやつ。こんな感情表現豊かだとは今初めて知った。

「仕事ですしお客さんとか沢山来ていますので」
「その他人行儀やめろ。それにカイザーさんてなんだ。いつもの呼び方はどうした」
「いやいや、ここは社交的な場ですから」
「関係ないだろ」

世一くんはえ?え?とわたしとミヒャエルくんを交互に見遣る。それもそうだ。わたしも同じ立場ならきっとこうなる。そうして聞こえてきた甲高い声。

「あら?ミヒャじゃない!今日来てたのね!」
「あっちで一緒に飲まない?」
「うるさい。散れ」

「えぇ…」

招待されていた美人なお姉様にも目をくれず、秒で蹴散らすミヒャエルくん。彼の天色の瞳はわたしから視線を外そうとはしなかった。

「いつも好き好き言ってたお前は何処へいった?」
「アッ!?しーっ!だめです!そんなこと言ったら周りに誤解されますよ!」
「構わん。ってか前にお前マスコミに言いふらそうとしてただろうが」
「それはミヒャ…ってか今公共の場ですよ!それとこれとは別!カイザーさんがいつも言うやつです!」
「あ"?」

めちゃくちゃ大きな舌打ちが耳へと届く。場の空気が3度ほど下がったような気もした。いつもわたしを尽くあしらうミヒャエルくんこそ何処に行ってしまったと思わざるを得ないほど、彼は今見るからに怒っている。

「…で?お前はいつもこんな風にいろんな男にしっぽ振ってるのか?」
「しっしっぽなんて振ってませんよ!」
「じゃあさっきから周りの男にヘラヘラしてるように見えるのは俺の見間違いか?」
「それは仕事だって、」

そこまで言って言葉を飲み込む。
ここまでしてわたしのしている行動に口出ししてくるミヒャエルくん。やっぱりさっきから気になっていた視線はミヒャエルくんだったんだろう。でもあれ、ちょっと待って。

「…おい、何を笑っている」
「いえ、別に。ちょっとその…ふふ。ヤキモチ妬いてるのかなって」
「ハ?…ハッ、ハァァ??っそんな訳がないだろ。誰がお前みたいな女に妬くか!!」

勘違いするなと言いきられ、ご立腹のミヒャエルくんに口をへの字に曲げる。だったらなんでそんな怒る必要があるのだ。ミヒャエルくんこそいろんな人と遊んでわたしだけを見てくれないくせに。

「…ヨイチくん。連絡先聞いてもいいですか?」
「エ"ッ!?このタイミングで?!」
「はい。ご飯、一緒に行ってくれるんですよね」


「おいっっ!!」

唖然とその場に立っていた世一くんに顔を向けると、すかさずミヒャエルくんが横槍を入れてくる。そうしてわたしの視線を無理矢理奪ったミヒャエルくんは、何か言いたげなのをググッと堪えたかと思うと、やっぱり我慢が出来なかったらしく声を張り上げた。



「お前が好きなのはこの俺だろうが!!俺がどんだけお前に時間を費やしてると思ってんだ。今更離れようとすんのは絶対ェ許さないからな」










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