俺らの生前 | ナノ






俺らの生前



生まれ変わっても愛してる.......




今日はわりと涼しい。

男は誰かを待つように、今日もその場所に現れた。

川のせせらぎに眠気を誘われ男は眠りに落ちた。


俺は男を見下ろした。

羨ましいほど整った顔立ちは俺を笑っているようだ。

んんっ、と寝返りを打つのに驚いた俺は、今日この日はやめにして、家に戻った。






今日もまた、男は河川敷に腰を下ろした。

誰かを探すように、遠くを見つめていた。

用意がいいことにこの日は本を持ってきた。

転がって読む姿は寝ているのと相違ない。

よく見れば男の瞼は伏せていた。

やれやれと俺は歩み寄った。


「起きろよ」


俺は男に声かけた。

反応はなかった。

暫く待っては見たが、中々起きない男に呆れ、

この日も帰った。






「やぁ」

この日は男から声をかけて来た。

珍しいことだな。と見上げた。

「お前、いつもここいいるよな」

男は俺に言った。

男は俺に初めて話をかけた。

「人を探しているんだ」

男は俺の話などいいように、今日もまた持参した本を読んだ。

たまに俺に目を向けて、優しい笑顔をくれた。

俺は暖かな男の横で、寝た。

起きた時にはそのぬくもりは無かった。






俺の探し人の名は牧生(まき)。

暖かくて、優しくて、

なんてったって、笑った顔が好きだった。




おれの探し人の名は前季(ぜんき)

強くて、意地っ張りで、

なんてったって、そんな彼からは想像もつかない寝顔が好きだった。





「久しぶりだな、牧生」

「久しぶり、前季」







「はぁ、一体何したんだぁ、牧生」

「はは、ごめん」

わけあって、俺らは追われた。

何百年も、前の話。


「ここでいいか」

「うん、ここいいね」


天国でも愛してやる。

だからお前も俺を愛せ。

生まれ変わってもお前を覚えておいてやる。

だからお前も忘れるな。

生まれ変わったらお前を探してやる。

だから、お前も全力で、俺を探してくれ。



この場所で、ずっと待っている。





「前はここ森だったのにねぇ」

「そうだな」

「あれから何年たったかな」

「さぁな」


他愛も無い会話。

それでも俺には、しんでもいい程、幸せだ。


「人間って猫にも生まれ変われるんだね」

人だけだと思ってた。と俺を撫でた。




「なんだっていいだろ」

「そうだね」


猫×人?



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