大空者への報復 | ナノ






大空者への報復



「最近大智(だいち)が構ってくれない」

「へぇ」

そう、これが僕の悩み。
折角付き合ったのはいいが、会社も忙しいしで構ってくれない。
僕は残業が割かし少なく、会いたくても会えないのだ。

「じゃあさ、俺とヤるか?」

「......は、....ま、まじ?」

彼の無言は僕のいいように肯定に変わる。

「あれ、でも空智(あけち)ってノンケじゃなかったっけ」

「いいの」









「じゃ、じゃぁね.....」

事故の後悔に俺は飲まれた。
大智にバレる。
ただそれだけが気掛かりで仕方なかった。



「お、おはよ」

休日は大智と過ごすのが日課。
だったが、今日は気まずくてしょうがない。

キスマークは隠した。
空智の香りも消した。

きっと、バレやしない。


「どうした?者智(さち)なんか様子へんだぞ」

「え、そんなこと無いよ」

ハハハと誤魔化す。

いつもは愛おしい大智が怖い。






「おくるよ」

有難い大智の言葉。
途切れぬ緊張に疲れた。



《黄色い線までお下がり下さい》

ホールのアナウンスはラッシュの人ごみに消える。

大智の送りは終わり一安心。
人ごみに逆らうように進んだ僕は、ドンッと外れに飛ばされた。

踏み止まろうとしても、そこはもう足場などない。

僕は重力に身を任せるように、電車へと自身を投げつけた。




近づく電車を横目に感じた。
浮気なんて、するもんじゃない。


大空者=浮気者



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