夕陽 「ぼく、君が好きなんだ.....」 「へぇ」 勇気を搾りきった一言を、君はいとも簡単に切り捨てた。 君はね、ぼくにとっては誇りなんだ。 成績優秀で運動神経抜群だし、......かっこいい。 そんな彼はぼくの誇り。 「だから、つきあっ....」 「無理」 重く圧し掛かるその単語に胃はもたれた。 「そうだ、よね......ごめん」 いつも通りの通学路のはずなのに、何もかもが違って見えるのは気のせいか。 暗くてだるい道のり。 ふと気付く陽気な声。 微笑む彼女と、幼馴染。 なぜ、なぜなんだ。 すきなのに。 すきなのに。 ぼくのほうが彼女よりも好きでいるのに。 「お母さん、お父さん死んでさ.....寂し?」 喪に服している母の姿は服装のせいか暗い。 けれどその表情には曇りは少ない。 「それがね、前よりもお父さんが傍に居るように感じてね」 "死んだ人は心で生きるんだよ" 母の口癖だ。 あぁ、そうか。 綺麗な夕陽。 夕陽に向かって走れ、なんて青春言いたくなる景色だけれど。 走ろうものなら崖から落ちる。 岩に競り立つ波が耳を貫いた。 尖った岩肌が波が引くたび露わになる。 あぁ、また聞こえる彼のこえ。 大丈夫、彼の中にはもう彼女なんて入れない。 大丈夫、ぼくがずっと君の中で生きるから。 「夕汰!!!すきだー――――!!!」 彼はぼくを見るだろう。 彼は絶句するだろう。 彼はぼくの二度目の告白と同時に、ぼくの死を見るだろう。 風が気持ち良い。 水が心地良い。 君は罪悪感につぶされる。 君はぼくを好きになる。 .......絶対に。 高校生の間違った恋。 戻る |