昨日、跡部とテニスをした。けれどそれは昨日の事。
今日、何時も通り起きて、何時も通りの通学路を歩いて、何時も通りの一日が始まる――






・・・はずだった。










俺は、学園内で一番の話題にすら上がらない地味な奴・・・だったはずだ。

もちろん例外はおらず、話しかけてくる奴などいやしない・・・はず。いや、居て欲しく無いんだ!!!


だというのに、昨日必要以上に目立ってしまったせいか、こちらを見てヒソヒソと話している声が絶えない。
教室の人口密度が他クラスの奴まで来ている所為でいつもの2倍程にまでなっている。

なので、今日は一日いつもの場所でサボります。







・・・そう、思っていたんだが。











『・・・・・・何故居るんだ。テニス部レギュラー陣』

「あーん?そんなのここにテメェが逃げてくるって思ったからに決まってんだろ?」

何当たり前のこと聞いてやがる、とでも言いたげな視線にイラッときた俺は悪くない。

暫く黙って睨み合っていると、向こうから口を開いた。



「お前のこと、調べさせて貰ったぜ?

――――丸井颯太」


『・・・・・・・・・(・・・へぇ・・・流石跡部財閥の御曹司・・・か?)
ふーん?んじゃ、どんだけ調べたのか聞かせろよ』




「じゃあ説明するより先に、その眼鏡とウィッグ外して貰おうか」




その言葉に、颯太はニヤリと笑った。




『へぇ・・・お見通しってか?』





「俺様を誰だと思ってやがる。

――その程度の変装じゃ俺の眼力(インサイト)は騙せねぇよ」







そう言う彼に笑みを返し、流石セイトカイチョー様、と皮肉気に言うと、颯太はウィッグに手を掛けた。




手を横にずらせば、スルリとウィッグは外れ、そこから覗いたのは、紅い髪だった。




そして顔の大部分を隠していた眼鏡を外せば――――













「え?ええ?えええええええ!?なんで丸井くんがいるんだCー?!」

真っ先に声を上げたのは、ブン太に憧れを見せる慈郎。
跡部以外は知らなかったのか、全員目を見張っていた。






『・・・にしても、ばれんの早かったなー。
こっちは必死で隠してったってのに』



「俺様に調べられねぇ事なんざねぇよ。
あと・・・お前と丸井ブン太の詳細情報は体重以外ほぼ一緒だったからな。


共通点が多い分、見つけやすかった。」




しれっと言う彼に、颯太は溜息をつく。
そして諦めたように口を開いた。




『んー・・・じゃ、まず自己紹介でもさせて貰うさね

俺は丸井颯太。あんたらの知ってる、丸井ブン太の双子の兄な。
プレイスタイルはオールラウンダー。得意技は・・・まぁ色々。
よくするのはコピーテニス・・・かな?
あ、ブン太とは違って甘いモンはあんま得意じゃない。


姿隠してたのは単に暇だったから。以上!』




全員の沈黙。




『・・・・・・どうかした?』


「・・・・・・暇やったからって自分普通変装するんか?」




『え?だめ?っつーかこれ俺から始めたんじゃなくてブン太にさせられてたんだけど』




全員が感じ取った。
こいつの弟は、ブラザーコンプレックスであることを。








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