小説 | ナノ
姫初め中編 [ 17/21 ]
晩餐会に招待され、美味い飯に釣られてノコノコと出向いた自分を心底罵りたい。
宛がわれた部屋に戻り、風呂を堪能した私は、さあ寝るかとベッドに潜り込んだまでは良かった。
ジワジワと這い上がる覚えのある感覚に眉を潜めた。生理前にヤリたくて堪らなくなるあの感覚だ。
「何でまたこんな時に……」
男と違いある程度コントロール出来るし、トイレやお風呂場で自慰をして済ませることは多々ある。
ルークに聞かれたら寝汗掻いたと言い訳すれば良いかと、私は彼を起こさないようにソッとベッドから降り備え付けの風呂場へと向かった。
着ていた服を脱ぐだけでもシャツが肌に擦れがもどかしい快楽を生むから堪ったものじゃない。
冷水を浴びれば少しは治まるだろうかと考えたが、浴びてからそれが浅はかだったと後悔した。
「ふっ…ん、く…ぅ……」
シャワーから出る水が肌を滑るだけで快楽に直結する。ビクビクッと体が跳ねる。
足に力が入らなくなり、そのまま倒れこんでしまう。ドタンッと鈍い音がシャワールームに響き渡った。
「ティア、どうしたんだ?」
先ほどの物音で起きたのか、ルークがドア越しに声を掛けてくる。
「な、何で……も…な、いっ…」
声を振り絞り何でもないと返したが、様子がおかしいことに気付いたルークはゴメンと謝りシャワールームのドアを開けた。
「ティア!? 具合でも悪いのか?」
ルークは、濡れるのもお構いなしに私より青ざめた顔で駆け寄り抱き起こしてくれた。
まさか、全裸を見られるとは思わなかった。何てこったい!
見た張本人は気が動転しているのか、それとも興味がないのか至って冷静だ。
私の身体を軽くタオルで拭きベッドに移した後、ルークはジェイドを呼びにいくと言い出した。
「イ……ヤッ!」
発情している姿を他人に晒すなんて冗談じゃない。全身で拒否する私に対し、騒ぎで目を覚ましたミュウが首を傾げた。
「どうしたんですの?」
「…ん、で……も…な…っ…」
背を丸めて蹲る私をシゲシゲと見つめたミュウが、小さな手をポムッと叩いた。
「ご主人様にも発情期が訪れたんですの! ルークさん、頑張るですの。仔ライガのことは、僕に任せるですの〜」
勝手に一人で納得したミュウは、仔ライガを叩き起こし部屋を出て行った。
「……」
無言になったルークを訝しみ目だけを動かして彼を見ると、売れたリンゴのように顔を赤らめていた。
「俺に出来ることがあるならするから」
冷静だったら絶対頷かない言葉に、私はあっさりと陥落した。
いや、本当我慢の限界だったんです。ルークの腕を掴み引きずり倒しそのまま圧し掛かる。
「ルーク、ヤラせて」
「へ?」
返事を聞かず、私は形の良い唇に噛み付いたのだった。
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