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誰にでもスキだらけact5 [ 23/23 ]


 目を覚ますと、いつも使っている部屋ではなく化猫屋の奥座敷だった。私の傍で胡坐を掻き座るぬらりひょと目が合った。
「藍、その……悪かった」
 朝起きて、まさか謝られるとは思わなかっただけに眉を潜めた。
「……それは、何に対しての悪かったですか?」
 声が低くなるのは仕方が無いと思う。どんな形であっても、ぬらりひょんを受け入れ抱かれることを承諾した私に対して失礼である。
「その、無理矢理……痛っ! 何するんじゃ」
 あちこち痛む体を起こし、私はバシッとぬらりひょんの顔を引っ叩いた。
「私が、誰彼構わず体を許したと思ってるんですか? ぬらりひょん様だからこの身を捧げたのに……謝るなんて最低です」
「藍っ」
 ギューッと抱きしめられて、私は悲鳴を上げる。酷使された腰が痛み、私は悶絶する。
 エッチした後、こんなに痛むなんて誰が想像できようか。
「大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃありませんっ。腰が痛くて動けません」
 半泣き状態の私に、ムラッと来たぬらりひょんに押し倒される。
「へっ、ちょっと……待ってくださ…」
「嫌じゃ! 藍が、可愛いことを言ってくれるんじゃ。我慢できん」
「ヒィーッ!! 慎みを持って下さい。お願いですからっ!!」
 初心者相手に襲い掛かるなんて、五百年以上生きている爺のすることじゃない。
 いきなり発情したぬらりひょんに勝てるわけもなく、ガッツリ昼がすぎるまで頂かれましたとも。
 グッタリとした私を連れ帰ったぬらりひょんは、リクオを筆頭に説教をされていた。
 私は、布団に懐き起き上がれないので海女に世話をされている。
「初心者相手にガッツクなんて死ねばいい」
 所々鬱血した痕を見つけた海女の恨みの篭った言葉にブルリと体を震わす。
 腕についた紐の痕を見た瞬間、海女の怒りが頂点に達した。
「う、海…畏れが出てるわよ」
「やっぱり殺してくるでありんす」
 スクッと立ったかと思うと、良い笑顔と共に物騒な言葉を吐いて部屋を出て行った。
 数分後、ギャーッと悲鳴が上がり私は心の中で合掌する。
 私が許しても、回りが許さない。これは、良い例かもしれない。
「あ、チョコレート渡すの忘れてた」
 ぬらりひょんに襲われてゴタゴタですっかり忘れ去られたチョコレート。私は、ぬらりひょんにはチョコに代わるものをあげたのだから良いかと納得する。
「自分で食べちゃえ」
 少し背伸びして買ったほろ苦いビターチョコレートを口に含みながら、私はクツリと笑みを浮かべたのだった。
end

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