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悪夢到来 [ 22/34 ]
目を覚ますと、ぬらりひょんにそっくりな金色の瞳をした癖っ毛が特徴的な美人が覗き込んでいた。
妖気からして奴良家関係だというのは何となく予想はつくが、私の記憶の中に彼は存在しない。
「佐久穂、大丈夫か?」
「は、はぁ……」
「オメェも災難だよなぁ。鯉華達のイタズラに巻き込まれて池に落ちるとはなぁ」
ダメだ。何言ってんのか分からない。私の目は正直だったようで、彼は嫌な予感をしたのか自分の名前を聞いてくる。
「俺が、誰だか分かるか?」
「……分からん。あんた、誰?」
私の言葉に、目の前の男は表情がごっそり抜け落ち声を張り上げた。
「鴆を呼べ!! 直ぐに呼んでくれ!」
スパンッと襖を勢い良く開き飛び出していった。私の質問には、答えてくれないんだな。
ハァと溜息を吐いていると、首無しが顔を出した。
「佐久穂様、どうされたんですか?」
首無しの馬鹿丁寧な口調に、ゾワッと悪寒が走る。
「首無し、何か悪いものでも食ったのか? 物凄く気持ち悪いぞ。その言葉遣い」
鳥肌が立った腕を必死にゴシゴシと手のひらで擦っていると、彼はヒクッと顔を引き攣らせた。
「随分な言い草じゃありませんか、奥様」
「奥様ぁ? 冗談じゃねぇぞ。俺は、男だっつーの!」
「半分はでしょう。現に、総大将に二代目、三代目と結婚して子を産んだ人が何を今更アホなことを言ってんですか」
呆れた顔で私を見る首無しなど構っていられなかった。あの黒髪金眼は、もしかしなくとも鯉伴だったのか。
「夢だ……これは、夢に違いない…」
ブツブツと念仏のように呟き現実逃避を始めた私に対し、首無しも流石に様子がおかしいと気がついたようだ。
「一体どうしたんですか?」
「俺は、結婚も出産もしてない! 知らない」
軽いプチパニックを起こしていると、奴良家に似つかわしくない小さな子供が三人廊下から顔を覗かせていた。
「おかーさん……」
「ごめん…な、さい…」
「うわぁぁん」
ボロボロと涙を流す子に、今にも泣きそうになっている子、母と呼ぶ子。うわぁ、パネェッ! 悪い冗談か悪夢だと思いたい。
彼らは、ぬらりひょん達の子供時代を彷彿させる。特に、栗色の髪をした子はリクオの幼い頃にそっくりだ。
記憶が無いと知ったら、余計に泣く。私はガスッと首無しの横腹に肘を入れ彼らをこの部屋から放すように視線だけで訴えると、横腹を押さえ私をギッと睨んだ後、ちびっ子三人を部屋から引き離してくれた。
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