小説 | ナノ

ONE PEACE in ぬら孫 中編 [ 15/34 ]


「か……」
 目の前の女は、ブルブルと震えたかと思うとチョッパーに抱き付き頬擦りしている。
「可愛い〜 癒されるぅ。癒されるよぉ」
 小さくも柔らかい胸に抱きこまれたチョッパーは突然のことで焦った。
「は、離せ!! 何だお前ら」
「はうぅ……このフカフカ、モコモコ感。暑くても許す」
 チューッと頬にキスしている佐久穂に、幸子が顔に手をやり溜息を吐いていた。
「ご主人様、それ以上抱きしめたら窒息死します」
「へ? うわっ、ごめん!! 大丈夫か?」
 佐久穂の胸でぐったりとしているチョッパーを揺するが反応は薄い。
「それにしても、ここはどこなんでしょう?」
「うーん、本の世界……とか言わないよな?」
 妖怪が存在するくらいなのだ。何が起こっても不思議じゃない。
「誰か別の人探すか」
「それは、置いてって下さい」
 シッカリと胸に抱かれたチョッパーを指差して置いていけと幸子は言うが、佐久穂は放すまいと抱きしめている。
「これ持って帰っちゃダメか?」
「ご主人様、ナマモノは止めておきましょうよ」
 幸子の言葉にショボーンとする佐久穂に、家鳴りが何かを知らせるかのようにキュイーッと啼いた。
 顔を上げると、特徴的なくるくる眉毛に思わず噴出してしまった。しかし、相手は佐久穂に釘付けで目がハートマークになっている。
「おお、何て美しい。俺はサンジ。お嬢さん、甲板で一緒にディナーでもいかがですか」
「俺は男だっ!」
 佐久穂の手を取ったかと思うと、チュッと手の甲にリップキスを落とした。
 ゾワッと全身の毛が逆立ち、容赦ない蹴りがサンジの股間に減り込んだ。
「気持ち悪っ!! な、何だこの変眉男はっ」
「ご主人様に何するです! 殺す」
 どこから取り出したのか幸子の両手には日本刀が握られていた。サンジに切りかかろうとする幸子を佐久穂は慌てて止める。
「幸子止めろ!! 殺しちゃダメだ」
「止めないで下さい、ご主人様。害虫は、早々に抹殺した方がご主人様のためです! 奴等の二の舞を踏ませるもんですか」
 フーフーッとサンジを威嚇する幸子は、完全にプッツン逝っている。
 これがリクオやぬらりひょんならGOサインを出すが、相手は一般人。殺したいくらい気持ち悪くても一般人なのだ。
「ダメったらダメだ。それより、俺ら元に戻る方法を考えるのが先決だろう」
「……チッ。そうですね」
 殺し損ねたことに不満を持つも、佐久穂の云うことは一理あるので幸子はあっさりと引いた。
「取敢えず甲板に出ますか?」
「そうだな。船もこんなにしちゃったし。謝らないと」
 サンジを踏みつけながら、腕にはチョッパーを抱え甲板へと向かうことにした。

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