小説 | ナノ

act98 [ 99/199 ]


 ゆらが京都へ戻り、佐久穂と連絡が取れないことに不安を覚えたカナがリクオを締上げ吐かせた内容に激怒したのは真新しい記憶である。
 急遽『京都の歴史を題材にした自由研究』と銘打って、佐久穂奪還を目論む清十字怪奇探偵団の面々は、京都旅行を企画した。
 破天荒な佐久穂の行動力が移ったのか、異様な盛り上がりを見せる彼らを止めることも出来ず、リクオは万が一修行の遅れで一緒にいけない場合を想定し、氷麗と青田坊を護衛につけたのだった。
 リクオはというと、幸子が言った通り命がけの修行が、遠野の隠れ里で始まっていた。


 一方、竜二に連れ去られた佐久穂は花開院総本山である京都に来ていた。勿論、未だに目を覚ます気配はない。
「竜二、清継は大丈夫なの?」
 魔魅流は、竜二に抱えられた佐久穂を無表情に見つめている。
「死んでないが、大丈夫とも言えん。清継は、我ら花開院の切り札なのだ。死なれては困るからな」
「ふぅーん」
 竜二の言葉に、魔魅流は適当に相槌を返す。シゲシゲと彼の腕の中にいる佐久穂を顔を覗き込み、徐に口を開いた。
「ねぇ、清継は女になったの?」
「アホか、一緒に風呂入ったことあんだろう」
「そうだけど……おっぱいあったよ。それなりに」
 ジッと手を見つめる魔魅流に、竜二は眉間に皺を寄せる。女装とか心底嫌がっていた彼が、性転換などするわけがない。
 恐らく、何らかの事情があるのだろう。
「本家に戻ったら、医者に見せればいいだけのことだ。理由が分かるだろう」
「それも、そうだね」
 魔魅流は、納得すると佐久穂の身体について話題に出すことはなかった。


 佐久穂を連れ帰った竜二たちに待っていたのは、衝撃的な新事実だった。
 十畳ほどの部屋の真ん中に寝かされた佐久穂の顔は、病人のように青白く生気がない。
 診察を終えた医者が、竜二たちを呼んで告げた。
「彼は、半陰陽です。詳しい検査をしてみないと何とも言えませんが、女性の二次性徴が現れていますので本来は女性なのかもしれません」
「でも、チン……」
「口を閉じろ魔魅流」
 ベシッと魔魅流の頭を叩き、放送禁止用語を喋る前に止めた竜二は彼をきつく睨みつける。
「こいつに女性器が備わっていて妊娠も可能だってことか?」
「……竜二も人のこと言えない」
「黙っとけ」
 ギッと魔魅流を睨みつけながら、竜二は医者に答えを促すと彼は恐らくと答えた。
「詳しい検査をしてみないと何とも言えないがね。ただ、彼は脈が弱い。このままの状態だと非常に危険だ。また、何かあったら連絡しておいで」
 医者は、往診鞄を肩にかけると帰って行った。
「早いこと魂を戻さないと取り返しのつかないことになるだろうな」
「昔から憑かれ易かったからね。どうする?」
「暫くは様子見だ。他にもやることがあるんだ。こいつばかり構っていられん。異変が起きても察知できるように式をおいておけば大丈夫だろう」
 竜二は、二体の式を佐久穂の傍に配置し部屋を後にした。

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