小説 | ナノ

act92 [ 93/199 ]


 夏休みに入り、私は京都へ行く準備をしていた。
 リクオ無線機でゆらに連絡を取ろうと試みるも応答はなし。
 彼女が借りているアパートにも寄ってみたが、大抵が不在で会うことは無かった。
「清十字怪奇探偵団の出番かねぇ」
 ゆらを回収して花開院に出向かなければならない。一人先に行っても良いのだが、竜二のことだ。ゆらに新幹線のチケットを渡さないだろう。
 金に困ってないくせに、変なところでケチる癖は頂けない。
「幸子、悪いんだが荷造りしておいてくれないか」
「あい! ご主人様は、どうされるんですか?」
「俺は、ゆらを探しに行ってくる」
 ゆらの名前を聞いた瞬間、つくも神の顔がムッとする。
「野蛮な陰陽師を探してどうするんですか?」
「野蛮って……(強ち間違ってないから否定できない)。ゆらに用事があるんだよ。ここ数日連絡がつかなくてな。清十字怪奇探偵団のメンバーに手伝って貰って探すつもりだ」
 私の言葉に心底嫌そうに顔を顰めたつくも神は、オドロオドロシイ空気を醸し出しながら言った。
「ご主人様のお手を煩わせるなんて呪ってやる」
「止めろって。折角可愛い顔が台無しだ。拗ねた顔より笑った顔の方が幸子は可愛いんだから、な?」
「ご主人様……」
 ポッと顔を赤く染めテレテレするつくも神に、何とか話をそらすことができホッと息を吐いた。
「じゃあ、頼んだぜ」
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
 機嫌を直したつくも神に見送られ、私はゆらを探すべく家を出たのだった。


 リクオの家に行き、リクオ・氷麗・倉田を回収して彼の近所に住むカナもついでに回収する。
 その際に、カナから巻と鳥居に連絡を入れてもらい島には私から連絡を入れ、ゆらを除くメンバー全員が揃った。
 急遽呼び出された面々は最初こそ不思議がっていたが、ゆらを見つけたら豪華景品が進呈されると嘯くと俄然やる気になってくれた。
「ゆらちゃん、一体何処にいるんだろうね」
「浮世絵町からは出てないだろうが、さっぱり検討がつかん」
 ンーッと考え込む私に、情報収集に長けた凛子が助言をくれた。
「花開院さんの行動パターンとか分析して、行きそうなところを当たるしかないですよね」
「そうなんだが……。幼馴染の俺が言うのもなんだが、あいつ、一般常識欠けてるところがあっから予測がつかん」
 プロファイリングが出来れば、既に自分で見つけ出していたはずだ。
 私の言葉に、皆一様に口を噤む。否定がないのは、彼らも少なからずそう思っているのだろう。
「ゆらちゃん、終業式にも出てなかったし。確かに心配だよね……」
「清継君、ゆらちゃん見つけたらデートしてよ!」
 ゆらを心配する鳥居と裏腹に、巻がハイハイと挙手しデートを強請ってきた。
「デート、そんなんで良いのか?」
 巻のことだから、ブランド品とか言いそうだったのに意外だ。
「一泊旅行でもOKよ」
 ウフッと笑えない提案をする巻に、私は冗談じゃないと顔を引きつらせる。
「まー、ただ遊びに行くってんなら構わねーけど」
「やったー!!」
 デートと浮かれる巻に、まだ見つけてもいないのに気が早いなと思っていたら、ガシッとカナに肩を掴まれる。
「何でそうホイホイと承諾しちゃうのかなぁ」
 ドス黒いオーラがカナから吹き出て怖い。
「別に出かけるくらい問題ないだろう」
「じゃあ、私がゆらちゃんを見つけたらデートしてくれるわけ!?」
 声を荒げるカナに、私は勢いに飲まれカクカクと頭を縦に振った。
「お、おう」
「分かった。なら良い」
 一瞬にして毒オーラを引っ込めたカナに、私はホッと息を吐いた。
「ゆらを見つけたら無線で連絡な」
 こうして、ゆら探索がスタートしたのだった。

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