小説 | ナノ

act27 [ 189/218 ]


 外出禁止令が出て早二週間が経った。いい加減鬱憤が溜まると言うもので、鴉天狗を捕まえ若菜に直訴していたら、どこから聞きつけたのか氷麗が乱入し嫌な提案を若菜にしていた。
「若菜様は、ちみっ子な藍を見たことないんですよね? 藍の子供服を買いに出かけては如何ですか」
「可愛い娘とお散歩……それ凄く良い! 氷麗ちゃん、ありがとう!! そうね、藍もずっとお家に篭りっぱなしだと憂鬱になるものね。そうしましょう」
「私もお供します! 荷物持ちは必要ですから」
『にゃーん(冗談じゃねぇ)!』
 ペカーッと良い笑顔を浮かべグッと拳を握り高らかに宣言する氷麗に、私は口悪く吐き捨てるも言葉を理解しているのは悲しいかな鴉天狗だけだった。
「今月のシノギが……」
 ボソッと呟かれた鴉天狗の暗い声は、奴良組の財政が圧迫していることをありありと物語っている。
『ニャー……(なんつーかご愁傷様)』
 私に拒否権なんてないわけで、着せ替え人形を拒否して散歩解禁が長引くよりは、一時の苦痛だと割り切り我慢する方が賢い選択なのかもしれない。
 ついでに私もご愁傷様と心の中で呟きつつ、暴走している二人を見て大きな溜息を吐いたのだった。


 嫌がる私を押さえつけリクオから妖気を受け取り幼女化したのは明け方で、その姿では初対面を果たした若菜の狂喜乱舞し猫可愛がりする様は非常にうざかった。
「……はぁ」
「溜息吐いてたら幸せ逃げるわよ」
 私を抱き上げながらニコニコと良い笑顔で構ってくる雪羅に、私はこの状態でなければ溜息も出なかったわ、と心の中で悪態を吐いた。
「藍ちゃんったらご機嫌斜めなのかしら。お買い物が終わったらパフェでも食べましょうね」
 明らかに子供のご機嫌取りをする若菜の言葉に顔が引きつる。見かけは三歳児でも、中身は成人している私に通用……しなくもなかった。
 甘いものは正義だ! そう断言できる私は、コロッと態度を変え食べたいものを主張する。
「いちごパフェがいい。後、オレンジジュース」
「フフッ、じゃあ駅前のカフェに後で寄りましょうね」
 機嫌が少し上昇した私は、気付かないうちにブンブンッと尻尾を大きく振っていた。
 それを見ていた氷麗が、少し離れた場所で悶えていたなんて知る由もなかった。

*prevhome#next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -