小説 | ナノ

act18 [ 180/218 ]


 突如、原因不明で半獣化した藍です。ノーパン・ノーブラでリクオの芋ジャージ(スペア)を着ています。人間じゃないから良いのだ。
 取敢えず腹が減っては戦は出来ぬということで、いつもより遅めの朝食を強請りに台所へ突撃すると、若菜が大層驚いていた。
「どちら様でしょうか?」
 台所を担う若菜を敵に回す気はないので、取敢えず媚でも売っておくか。
 ニコォと愛想笑いをしながら自慢の尻尾を振ってみる。
「若菜、藍だよ。お腹空いた」
「まあ! 藍ちゃんだったの? あらあら、可愛らしい女の子になっちゃって」
 ニコニコと笑みを浮かべる若菜に、チョロイもんだと内心舌を出し細く微笑んだのは内緒である。
「ちょっと待っててね」
 カチャカチャと食器を用意したかと思うと、残り物を出してくれた。
 お味噌汁のいい香りがする。手渡されたお膳を床に置き、「いただきます」と言った後、がっついた。
 ガツガツガツと効果音が出てるんじゃないかと言うくらいの食べっぷりに、若菜は微笑ましそうに眺めていた。
「ケフッ。ごちそーさま」
 一通り食べ終わりお腹を擦っていると、彼女は良い子ねと私の頭を撫でた。おいおい、これでも一応成人してるんだぞ。
 手を叩き落としてやろうかと思ったが、台所を預かる若菜を敵に回したくない一心で我慢した。
「それにしても、藍ちゃん。どうして、その格好なの? 着物なら沢山あるのに……」
「着物嫌い」
 着物という言葉を聞き、眉間に皺を寄せプイッとソッポ向く私に対し、若菜は物凄く残念そうな顔をした。
「藍ちゃんに似合う着物を着せてみたかったのに……。あ、でも洋服ならOKよね! ジャージだなんて可哀想だわ。折角だから買いに行きましょう」
 良いことを思いついたと言わんばかりに、若菜はちょっと待っててねと言い残すと台所を出て行ってしまった。
 大方、鴉天狗辺りに金をせびりに行ったのだろう。流石に、ノーパン・ノーブラで芋ジャージはきついものがある。
 数分後、パンパンに膨らんだ財布を片手に私の手を取り買い物へと繰り出した。因みに私の履物はトイレサンダルだったりする。


 銀髪が珍しいのか、チラチラとこちらを見てくる人人人。ある程度力が無いと隈取や獣耳尻尾は見えないのだが、やけに視線を感じるので私の機嫌は底を彷徨っている。
 やっぱ芋ジャージにトイレサンダルはアウトだったか。
「どんな服が良いかしら〜」
「なぁ、服よりパンツ買ってくれ」
 スースーして気持ち悪いと訴えれば、ギョッと目をむき真剣な表情でガシッと肩を掴まれた。
「藍ちゃん、つかぬ事を聞くけど下着つけてないの?」
 コクリと頷くと、彼女は声にならない悲鳴を上げていた。
「まず先にランジェリーショップよ!」
 私は、鬼気迫る若菜に引きずられるようにランジェリーショップへと向かった。
 下着を数枚購入し、その足でアパレルショップに駆け込み若菜が気に入った服を片っ端から着せられ買い物だけに5時間費やし、いつまで経っても戻ってこないと心配した奴良組の妖怪達が捜索に繰り出し世間を騒がせたのは言うまでも無い。

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