小説 | ナノ

act16 [ 178/218 ]


『ギニャァアアッー!!』
 口元を押さえて蹲る私に、ベロチューした張本人は引っかかれた頬を押さえながら笑っている。
「美酒を飲ませてやっただけだろう。嫌がんなよ」
 ニヤッと人の悪い顔で笑う鯉伴に、私はギッと睨みつけるも涙目になっていて効果は無い。
 喉が焼け付くような熱を持ち、頭がくらくらする。
『ふにゅぅ〜(も…だめ…)』
 ベショリと鯉伴の膝を褥にし、私は不覚にも爆睡してしまったのだった。


 スベスベとした肌触りが気持ちよく、思わず擦り寄るとくすぐったいのかクツクツと笑みが聞こえてくる。
「くすぐってぇよ」
「……五月蝿い」
 顔を殴るつもりで手を出したら、当たることなく逆に腕を掴まれ動きを封じられる。
「こんな別嬪に夜這い掛けられるたぁ光栄だが、あんた誰だい?」
 口調は穏やかなのに、鯉伴の纏う空気は荒々しく殺気が滲み出ている。
 幾ら私でも、殺気塗れの中で寝る趣味は無い。眠たげに目を開き身体を起こした。
「昨晩、私を酔い潰したくせにしらばっくれるとは良い度胸だ」
 そこまで言って、私はハタッと首を傾げる。何で鯉伴は、私の言葉を理解しているのだろう。
 手を尻へ伸ばすと白いふわふわの尻尾に触れる。頭にやると丸い耳があった。虎の姿に変わりないではないか。人に戻ったかと思ったのに期待して損した。
 不機嫌MAXで欠伸を噛み殺し、ゆるりと尻尾を揺らせばチリンと鯉伴がつけた鈴が鳴る。
「お前、藍か?」
「あ?」
「そいつぁ、俺が藍にやったもんだ。首輪はリクオがつけた形状記憶なんたらって奴だな」
 一人でうんうんと納得している鯉伴に、私は眉を潜める。固まった身体を解すべく前足を前に出し伸びをしようとして固まった。
「……手?」
 肌理細かい白い肌が見える。仔虎から人に戻ったのか? いや、しかし尻尾と虎耳は健在だった。
 信じられずグッパーグッパーと手を握ったり開いたりを繰り返していたら、鯉伴の手が伸びムニュッと胸を鷲掴みされた。
「Bの65ってところか」
「ニギャアアアアッ!!」
 無遠慮に揉まれる乳。一瞬呆気に取られた私だが、すぐさま正気を取り戻し悲鳴と共に鯉伴の顔面をぶん殴った。
 私の悲鳴に駆けつけた彼の下僕が見たのは、全裸で仁王立ちになり鯉伴を殴り飛ばす私と頬に赤いあざを作り気絶する鯉伴の姿だった。

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