小説 | ナノ

ねこねここねこ [ 162/218 ]

そこのけ×夢をのコラボSSです。
オリキャラが、きゃっきゃウフフしているだけのお話です。
ネタは、鯖煮のさば様より頂きました。ありがとう御座います。



 散歩にお供が着いてくる今日この頃、暫くの間は我慢していたのだがストレスが溜まったのでプチ家でしている藍です!
 浮世絵中学校に顔を出し、白蛇の弁当をせしめた後、苔姫のところで饅頭でも集ろうかなぁと思っていたら道に迷ってしまった。
 あっちをウロウロ、こっちをウロウロして途方にくれていたらジーッと人の顔をガン見する子供と出会った。
「ネコたんだ!」
 ぱぁっと顔を明るくして近寄ってくる幼児に、私はジリッと後ずさりする。
 女子供と妖怪は、私にとって鬼門。こっちの状態などお構いなしに構い倒すのだからマジ勘弁してくれとなるわけだ。
 取敢えず威嚇して蹴散らすかと、手を伸ばしてきたのでフーッと唸り声を上げて見るが全然気にした様子も怖がった様子も見せず、私の体を意図も容易く捕まえた。
『ミャッ! (放せクソガキ!)』
「しゃくら、クソガキちあうもん」
『ミャーミャー(どーでも良いから放せっちゅうに)』
「しゃくら、ネコたんとあしょぶ! ね? あしょぼ」
『にゃーん(猫違う! 私は虎だ)』
 ニコニコと笑みを浮かべて遊ぼうと誘ってくる桜と名乗る幼女に、私ははてと首を傾げた。
 何でこいつは、私の言葉が理解出来ているんだ。桜からは妖気は感じられないのに。
「しゃくらー!」
「どこぉ」
 甲高い子供の声が二つ聞こえてきて、私はゲッと顔を顰めた。一人でもウザいのに、ガキんちょが増えれば更にやかましくて鬱陶しくなる。
 何とか腕から逃れようとジタバタと暴れてみるが、一体どこにそんな力があるのがガッチリ私の胴を掴んで離そうとしない。
「あ! ねこしゃんだ。あたちもだっこしたい」
 幼女は、躊躇いもなく桜に向かって両手を伸ばし私を引っ掴んだ。小さな手は、力の加減なんて知らないのだろう。
 ムギュッとお腹に顔を摺り寄せている。なんだこのデジャブは。
『ニギャーッ(私のお腹に顔を埋めてもふるな)』
「ふわふわちてきもちー。おひさまのにおいがしゅるよ」
 ぐりぐりと鼻先をお腹にくっつけて匂いを嗅がないでくれ。
『ニャー(やーめーれー)』
 両手を突っ張って嫌がるが、桜も一緒にくんかくんかと匂いを嗅いでくる。
 藍色の髪をした幼女が、ジージーッと私の顔を見つめていたかと思うとベロンッと舐めた。
『フギャッ(うわっ、舐めやがった)』
「んー、あたちとおんなじ?」
『ニャー(何がだよ!)』
 コテンと首を傾げる幼女に思わず猫パンチならぬ仔虎パンチで突っ込みを入れたら、その手をアムアムと食んでいる。
「かしゅみ、ネコたんたべちゃメッよ」
「ペッしなちゃい」
 吐き出せと体を引っ張る桜と九重に、霞は物凄く残念そうな顔で手を吐き出して私をジーッと見ていた。
 身の危険(命)が感じられるのは何故だろう。私、虎なのに。
「なんかおいちちょーなにおいがしゅるんだもん」
 クーッとお腹を鳴らした霞に、桜と九重も自分のお腹と私の顔を交互に見て言った。
「たしかに、おなかちゅいたよね」
「……うん」
 このままでは、捕食されてしまう!? ゾワッと背筋を走る怖気に、私の胴を掴んでいた九重の腕に噛みついた。
 一瞬緩んだ隙に腕から飛び降り脱兎の如くその場を後にした。敵前逃亡と言うなかれ。
 まさか幼女相手に誰も身の危険を感じるとは思うだろうか。
 私を呼ぶ声を振り切りながら闇雲に走っていたら見知った道に出たので、私は一目散に奴良邸へと駆けて行った。
 門前で鯉伴の姿を見つけ、飛び掛るように彼の腰にしがみつく。
「うおっ!? 藍じゃねーか」
『に"ゃーに"ゃ(マジ怖かったよー)』
「藍、爪立てて登ってくるんじゃねぇ。痛い痛い」
 痛いと言う割には、鯉伴は私の好きにさせてくれる。腕に寄りかかる形でしがみ付く私の体を撫でながら首を傾げていたが、鯉伴は珍しく甘えてくる私ににやけた顔をしたのだった。


おしまい


おまけ


 小さな仔虎が消え去った方向を眺めていた子供達は、どこか寂しそうにしょんぼりとしていた。
「桜、霞、九重、ご飯よ」
 己の名前を呼ぶ母親の声に、落ち込んだ気分は一気に浮上した彼女達は一目散に母親の元へと走り寄った。
「ママァ!(かーたん/かーしゃま)」
 ビタンッと足に張り付き甘える子供達の頭を撫でるのは、母親というには若すぎる娘だった。
「おめぇら、足に張り付いたら佐久穂が歩けねぇだろう」
「りあんたん!」
 そう言いながら桜と九重を抱き上げる男に、子供達は無邪気に手を伸ばし抱きついた。
 霞は、佐久穂の腕に抱かれフカフカの胸に顔を埋めている。
「あのね、ネコたんにあったんだよ」
「おなかがとってもフカフカなの!」
「とってもおいちちょーなにおいがしゅるの」
 ネコのことを身振り手振りで話す子供を微笑ましそうに見ている藍だが、鯉伴は美味しそうと零した霞を凝視している。
「なめたら、あたちといっちょのにおいがしたの」
「そ、そうかい」
 どう答えを返せば良いのか迷った挙句、鯉伴は聞かなかったことにしようと娘達の言葉を流した。
 不思議な日のとある光景である。奴良家は今日も平和だった。

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