小説 | ナノ

2012Xmas前編 [ 1/11 ]


 時代を超えた初めての年の暮れに事件は起きた。
「……勾陳、これは一体どういう事なのか簡潔に説明して頂戴」
「藍〜」
 べったりとへばりつく昌浩からは、酒の匂いが漂ってくる。
「酔っ払っているな」
 簡潔にとは言ったが、見れば分かることを聞いているのではない。何故、昌浩が酔っ払ったのかという経緯を聞いているのだ。
 ニヤニヤと笑みを浮かべている辺り、勾陳は私の考えていることなどお見通しなのだろう。その上での発言だとしたら、本当に性質が悪いとしか言いようが無い。
「見れば分かるわ。昌浩が、酔っ払った経緯を聞いているのよ。ちゃきちゃき話しなさい」
 首筋に顔を埋めて人の名前を連呼する昌浩の頭を押しやり、さっさと話せと睨みつけるも人生経験云千年の神様だ。たとえ末端だとしても。脅しにもなりはしないだろう。
「昌親が、良い酒が手に入ったからと持ってきてな。昌浩も嫁を貰ったことで妻帯者だ。これから飲む機会は増えるだろうと酒を飲ませてみたらこの通りだ」
「一体何杯飲んでこうなるのよ」
「一杯も飲んでないぞ」
 小さな湯のみ茶碗の半分も入ってなかったと証言する勾陳に、私は呆れた目で昌浩を見てしまった。
「それだけの量で酔っ払えるなんて弱すぎる……」
 どこぞの貴族の姫らに酒を盛られて襲われ既成事実の一つや二つ作りかねないなと私は思った。
「物の怪はどうしたの? 昌浩のお守はあいつの役目でしょう」
 何気にセクハラしてくる昌浩を引っぺがして世話しろと暗に言ってみれば、
「騰陀なら晴明に捕まってベロベロのデロデロに酔っ払って潰されたぞ」
「じゃあ、勾陳が昌浩を引き取って」
「断る。四六時中、藍藍と五月蝿いからな。後は、頼んだぞ」
と言うだけ言って消えた。異界に帰ったのか、それとも酒のある方へ戻ったのか定かではないが昌浩を押付けられたことだけは確かである。
「重い。圧し掛からないで」
「ヤダ! 藍〜」
 んーっとキスを強請るように目を瞑る昌浩に、私はハイハイと口付けを落とした。額に。
 少量の酒で酔っ払うお子様には、これで十分だろう。
「藍、違う。こっち」
 額へのチューはお気に召さなかったのか、私の顔をガシッと掴んだかと思うと強引に唇を重ねてきた。
 歯列を割り昌浩の舌がねっとりと歯をなぞり、縮こまった舌を誘うように絡め吸い上げられる。教え込んだ私が言うのもなんだが、最初に比べると随分と上手くなったものだ。
「むぅ……ん、ぁ…ふぁ…」
 くちゅくちゅと舌を絡められ、ぞわりと背中から這い上がる快楽に身体を震わせながらそれに耐えた。
 顔に添えられた手は自然と下がり、いつの間に抜き取ったのか帯を解き、肩に掛かった内掛けを落とした。露になった単姿の私に昌浩は口付けを止め、ニッコリと邪気の無い笑みを浮かべた。
「これも邪魔だよね」
 手を掛けられ、ずるりと剥く様に単を脱がしていく。流石に、私も焦りが生じた。
「邪魔なのは、その不埒な手でしょう。勝手に脱がすな」
「何で? 脱がさなきゃ何も出来ないよ」
 きょとんとした顔で性交を匂わす発言をする昌浩に、私はジリジリと後退しつつ逃亡を図ろうとしたが無理だった。
「俺は、藍の夫だろう」
「ええ、そうね」
「だったら、当然の権利だ。藍の身体に触れたいよ」
 そう主張する昌浩に、私はなくなく頷いたのだった。

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