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少女、事件に巻き込まれるB [ 20/41 ]


 昌浩の貸し出しの許可を貰った私は、早速行動に移す。彼が勤める陰陽寮訪問だ。
 巫女装束を纏い露樹に出かける旨を伝えると、彼女は台所に引っ込んだかと思うと直ぐに出てきて竹の皮に包まれたおむすびを渡してくれた。
「……これは?」
「お腹が空いたら食べて」
「ありがとう御座います」
 お腹が空くまで長居する気はないのだが、つき返すのも失礼かと思いお手製ショルダーバックの中に収めた。
 自称護衛の勾陳も私の後ろをついてくる。歩きながら、人を貶すのは止めて欲しいものだ。
「相変わらず変なものを持っているな」
 馬を小屋から出し門を潜り外へ出た私は、姿を隠している勾陳に呆れた声で言い返す。
「実用的と言って頂戴。私は、馬で行くわ。あんたは、どうするつもり?」
「乗せてくれって言えば乗せてくれるのか?」
「質問で返すなんて非常識ね。乗せるわけないでしょう。走るかして来なさい。待たないけどね」
「だろうな」
 捨てていくと宣言した私は、ヒラリと馬に跨ると陰陽寮へ走らせた。移動手段は、牛車よりも早い。人気のない道をかっ飛ばすこと十五分。
 馬に乗っているだけなのに、半端ないくらいしんどい。乗馬ダイエットが一時期流行っていたが、それを自分が実証することになろうとは思わなかった。
 待賢門の前で馬を止めると、門番が珍しいものを見るかのように私を見ている。
 このご時世、女が馬に跨りウロチョロしていること事態奇異なのだろう。
「陰陽寮直丁の安部昌浩殿を呼んで頂きたい。安部晴明殿からの遣いだ」
 晴明に書かせた手紙を見せると、彼は慌てたように一礼する大内裏へと入っていった。
 流石稀代の陰陽師が書いた一筆は効果覿面である。
「藍、気になったんだが……」
「なに?」
「昌浩も三条邸まで走らせるのか? あいつ、馬には乗れないぞ」
 勾陳にそこまで問われ、私としたことがウッカリしていたと肩を落としたのだった。

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