SS

140~1000字前後のss。連作お題は終わり次第、加筆修正して短編に。[お題]にせごり様※スマホ閲覧推奨

「明日の来る確率1」(海賊)豹スパ

1.諜報員

 法を司る司法の島、エニエス・ロビー。通称、昼島とも呼ばれるここは、世界政府諜報機関CP9及び裁判所が建設されている。闇に紛れる諜報員を煌々と照らし出す島には、多くの職員が務めている。昼でも夜でも明るい島では常に人の気配があり、任務帰りの気が立っている少年にとって何もかもが煩わしかった。石床を靴のかかとで踏みつけるたびに、こびりついた血が廊下を汚していった。

「うっっわ。くっせ!お前鼻曲がってんじゃねぇ?!」
「うるさい。」

司令官室へいくと長官に書類提出していたらしいジャブラと出会った。ルッチの物ではない血がべったりとついた姿にスパンダインと共に顔を顰めていた。今回の任務は革命軍とつながりがある貴族の屋敷へ、とある情報を手に入れるだけであった。ついでに不幸な貴族は事故死に処理される予定…だったのだが、どこで嗅ぎつけられたのか屋敷は迎え撃つ準備が整っていた。致し方なく全てを処理した際に、最後の悪あがきで肉爆弾が走り寄ってきた。それだけならまだよかったのだが、その手にはこちらの欲しい情報が握られていた。素早く剃で踏み込み、手の中の情報を抜き取って離れるはずが、床に真っ二つで転がる死に体がギラギラと瞳を光らせてルッチの足首を握り締め…ーーー。

「ぎゃははは!よけきれずに、血潮ひっかぶってきたってか!」

濡れ猫め!と爆笑するジャブラに益々眉が寄る。鉄塊を習得している為、彼らの決死の足掻きは徒労に終わったのだが自らの意思ではない血化粧は不快でならなかった。
情報が入った端末を引き渡し、風呂に向かうルッチへ長官は次の任務を言い渡した。任務から帰還して間髪いれずに次を言い渡されることは珍しくはないが、内容はここへ来てから初めてのものだった。


大人二人は長官室を後にする子供の背中を見送りながら、どうなることやらと肩をすくめる。

「アンタも人がわりぃな。あいつに出来きるわきゃねぇのに。」
「できるようになってもらわんと困るんだよ。しかし、天才児ってのも餓鬼なんだなぁ。」
「”クソ”と”馬鹿”が抜けてるぜ。」

意地悪く笑う声が部屋に響き渡る。

『No.xxxxx
隠須摩洲での調査にて、"悪魔の書"の情報を精査。詳しくは、現場にて情報開示。

派遣諜報員:cp9 ロブ・ルッチ

備考:本任務において他部署であるcp5から一名派遣。』
2024/01/17

「ガラス片を埋めた道」(海賊)豹アイ

🐆(→)🍨(w7~後)

 愕然と見上げる顔とは裏腹に、瞳の奥底では”確信”を得ていたのが見て取れる。5年という短くはない月日ですら彼の壁に罅すら入れることはなかった。「貴方の思慮深さには呆れて物も言えない…!」
慧眼に間違いはなくとも、落胆が胸を突く。穏やか過ぎて血に飢えた5年だった。漸く解放されるというのに、ソレが小さくルッチを引っ掻く。縛り上げて炎の中に置いてきた彼と共に、小さなソレに背を向けた。
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海賊に敗北し、政府からも”クビ”を言いつけられた後。療養からの自主休暇を満喫中に目に入った新聞には、長年潜伏していた社の事…彼がのっていた。未だに癒えてはいないだろう四肢を隠して写真に写る彼は、前にもまして背筋を伸ばし前を向いている。
じっと見ていたら、ハットリがルッチの手を軽くつついてきた。指先で撫でながらも視線は写真に注ぐ。微かに目を細めて見えもしない、服の下のけがを思う。あの時の傷は残ってしまっているのだろうか。この先出会うことはないだろう、確かめるすべはない。けれども、残ってしまえばいいと心中で呟く。きっとそれは美しく彼を彩っているだろうから。
2023/11/22

「いつのひか喪失はうしなはれるだろう」海賊

 ifパラレル/公式では南だがどこかの情報で北出身と聞いたことからの幼少期であっていたらの話。
 「別に。俺も食料が欲しかったから」
そう言って一回り大きい男はドフラミンゴにパンを幾つか投げ渡し、氷の腕を地面から離した。興味なさそうな態度の反面、瞳の奥に兄弟を気遣う色が見える。地上に墜とされてから初めての行為だった。当時のドフラミンゴは不器用に差し出された其れに、手を伸ばす余裕はなく寧ろプライドが傷つけられたのをよく覚えている。暫くの間男とは食料を漁る度にであった。何度か追い立ててくる人間から助けてくれることもあった。どうしてそんなことをするのか。奉仕されるべき神の血筋だから当然という気持ちと、弱さを浮き彫りにされ、憐れまれているのかと憤った。しかし、男は怒るでもなく「助けたつもりはない」と宣った。挙句、ドフラミンゴが偶々そう思っているだけであると。「…誰かを救うなってことは、俺の柄じゃないし。んな力、ないよ」煤けた顔に浮かぶ表情は彼が心底そう思っていると。「ただ……そう、なれたら…いいなぁ」微かに口元を和らげた瞬間を、きっとドフラミンゴはこの先一生覚えているのだろうと思った。

そんな男は白を纏い、いつかの言葉を体現している。やっと七武海という地位まで乗り上げた。交わした言葉に覚えているのは己のみということに、思った以上にダメージを受けた。ポッカリと失われてしまった温度。しかし、ならばその喪失は別のもので埋めれば良い。都合よく最上の者がいるのならば、尚更に。海賊とは欲しいものはどんな手を使ってでも、獲りにいくものだから。それまでにはこのいたみなど等に無かったことになるだろう。
2023/09/15

「花咲くようにはいかないもので」海賊(赤青)

 毎日水をやった所で、上手く育つとはいかないもので。幾度目かのため息をついて頬杖を付く。クザンは目の前の真っ白な紙を前に思案していた。先程からピクリとも動いてくれないペン先は渇き始めている。拝啓…なんて始めるのはクザンの柄でもないし、送る相手にもそんな堅苦しい書き始めを送りたい訳でもない。そも、手紙を書こうなどと言う事柄自体が普段からして考えられないだろうなと、また溜息をつく。何故手紙を書こうとしたか。理由はただ一つ、あまりにも鈍い頑固でクソ真面目な同僚へ思い知らせてしまいたいからだ。いつからと言われたら小っ恥ずかしいが、クザンがまだ訓練兵時代の頃。自覚したのは数年前だが、無自覚にずっとあの背中を追っていた。それでも今まで異性が恋愛対象であり、先輩から同僚となったあの男に惚れた事をすんなりと受け入れれた訳ではない。悩んで、いっとき徹底的に避けた時期もあるが、本部半壊始末者を提出したとだけ言えばお分かりだろう。その時のすったもんだでクザンも漸く観念した。想っているだけでなんて殊勝な性格をしていないクザンは、吹っ切れた日からアプローチをした。掲げる正義が反対な為ぶつかる事も多いが、腹が立っても言い返すのを我慢して、なるべく会話をする様にもしたし、食事にだって2人で行った。あのボルサリーノにだって恥を忍んで協力してもらっても気付かない鈍ちんである。「…はぁー…。やっぱ、脈なしか?」いや、そんな事はないはず。手を握っても抱きついても、あからさまに女性との会話に割り込んでも、家に行きなり訪ねて同じ布団に入っても拒絶は無かった。「流石に襲うのはなぁ。…面と向かって思い知らされるのは、しんどいし」だからこその手紙なのだけれど、手が止まる。余りにも馬鹿馬鹿しい言葉しか出てこなくて。ゴミ箱の中に幾つも捨てた書き損じにも同じ言葉が連なっている。「ガキじゃねぇんだから…もっとまともな言い回し思いつけよ」たったふた文字の余りに赤裸々な言葉に、途方にくれた。


「でぇ?いつ、君はクザンに返事してやるのぉ~?」「何のことじゃ」素知らぬフリをしながら、ボルサリーノの言葉を受け、微かに笑う男は嫌に様になっている。元後輩兼、現同僚に男の趣味が悪いと忠告してやるべきだが…。同じくらいこの同期の男が嬉しそうにクザンを見ている穏やかな姿が好きなので、ただ黙って2人を見守ることにした。
直接的な言葉を聞きたいがために、あの積極的なアプローチを交わし続ける男の忍耐と根気良さに若干の呆れもしながら。
2022/12/31

「氷の指が融けるまで」海賊(赤青)

 ケホ、朧げな意識の中乾いた音が耳につく。数度続く音が鬱陶しく感じるが、其れは己の喉から出ているのかと気がついた。ぼんやりと視界に移るは自宅の天井。何故寝たままなのか、今はいつで何もしていたのか。喉の違和感に顔を顰め、もう一度吐き出された咳と共に寝る前の事が思い出される。数日前から立て続けに大将が出る規模の任務が続いていた。サカズキだけでなく、同僚である年上の同期と後輩であった大将も慌ただしくしていた。どこかの地方ではこの時期は
師走と呼ばれて、正に走るが如く年の瀬まで日々が過ぎると誰かが雑談で呟いていた。決済書類やら年が変わると言う事でいつもよりも締め切りも早まり、本当に息を吐く暇もなかった。普段サボりがちなクザンでさえ抜け出す事なく仕事をしていた。そんな折に任務に就いた島で、さあ帰るぞと言う時に大寒波がサカズキ達に襲いかかった。地元民によれば数年に一度あるかないかと言う大雪で、帰るに帰れず、あまりに積もり民家が埋もれるという被害が出た為、サカズキ達は総出で雪の除雪作業を行った。やっと帰れた時には部下は数人寒さに倒れて、残った者達で倍になった報告書やらで徹夜した。漸く落ち着き、数週間振りの家に就いた後の記憶が無い。「起きた?」カラリ、襖の向こうに盆を持ったクザンが居た。「…なんでおるんじゃ」「嘘だろ?…まぁ、あれだその…いいだろ別に」布団のそばにきてサカズキの額にヒヤリとした掌が当てられる。熱いな、と溢れる言葉に漸くサカズキは風邪を引いたのだと理解した。した途端身体がとてつもなく重くなった。「情けなぁ」「俺は楽しいけどな」カラカラ笑う恋人をギロリと睨むが、益々目を三日月型にされた。額に当てられていた掌が離されるが、咄嗟にその手を掴んでしまう。己の無自覚な行動に目を丸くするが、目の前のクザンも驚いている。思った以上に弱っている自身に情けなくなる。顔を顰め手を離すサカズキにクザンは遂に吹き出して腹を抱えて笑い出した。「お前さんを可愛いなんて、思う日が来ると思ってなかったよ」「うっさいわ。気の迷いじゃアホタレ」「是非偶には気の迷いを起こしてよ」「お前だけには、二度と見せん」「なんでよ、いいでしょ」誰が見せれるかと内心吐き捨てる。ねぇねぇと五月蝿い口を黙らせる為、枕を掴んで投げてやるが力が入らず顔に当たる前にキャッチされた。そして暫く手に枕を持って考え込んだが、にまぁ~と顔に笑みを浮かべる。その顔は正しくいつも要らん事をする時の顔だった。「一緒に寝てほしいのな。サカズキも風邪の時は寂しがりになんのか」「ぶちまわすぞ」やめろと言ってもクザンはそのままサカズキの静止を押し除けて布団の中に入ってきた。ふわりと香るクザンの匂いと、程よい体温にぐらり、と頭が溶かされる。「お前さん専用の氷嚢抱き枕…なんて」飄々としているのに何処までも柔らかい声音に、不覚にも目頭が熱くなった。思った以上に熱で頭がやられていたらしい。情けない顔をこの悪餓鬼に見せたらどんだけ揶揄われるか。それに…いつだって恋人には情けない姿ではなく、かっこいいと言われる姿で有りたい男心を分かれと内心でキレ散らかす。こんな無様を晒すのは今回だけだと自身にいい含め、腕の中の身体を抱きしめる。そして、情けない面を誤魔化す為に、顔をサカズキ専用氷嚢の頭へ埋めた。
2022/12/22
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