リナリア
たとえば、頭を撫でてくれる大きな手だとか。 たとえば、私の名前を呼ぶ優しい声だとか。 たとえば、高い背だとか、整った顔立ちだとか。 挙げればきりが無いほどの"素敵"に満ち溢れた自慢の幼馴染には、酷い欠点があると私は思っているのです。
たとえば、私の手をひくときだとか。 たとえば、私にプレゼントをくれるときだとか。 たとえば、とても自然に、荷物を持ってくれるときだとか。 私の心臓が不自然に大きく脈打つことに、まったく気付きもしない鈍感さは、それはもうずいぶんな欠点だと思っているのです。
どうして、どうして気付かないのでしょうか。 私はこんなにもあなたを見ているのに。 私はこんなにもあなたのそばにいるのに。 わたしは、こんなにも、――あなたのことが好きなのに。
誕生日に贈った花の意味を、考えもしないのでしょう。 滅多に見ないような花なのに、プレゼント以上の意味があるとは思いもしないのでしょう。 やはり言わなくては伝わらないのですか。 他のことは何だって、言わなくても察してくれるというのに。
――嗚呼、考えていたらなんだか腹が立ってきました。 こんどはもっと、ストレートに……バラの花束でも、叩きつけてやりましょうか。
リナリア(私の恋を知ってください)
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