雪を踏みしめながら歩く。
寝袋や携帯食料の詰まった鞄を二人分担ぎながら、どうしてこうなった、と背後を歩くサシャをチラリと振り返った。
もともとは、ジャンやマルコと組む予定だったのだ。三人から四人。雪山行進は各自でグループを作る事になっていた。
それが当日になり、サシャとアルミンとの三人組となったのだ。謎のメンツである。
ライナーとジャンが二人を引っ張ってきたのだが、その時点でほぼ強制的な班分けは決定されていた。
アルミンに、エレンやミカサと組まなくてもいいのか?と聞いた時の反応が曖昧な苦笑だった理由が今になってわかってきたような気がする。
取り敢えず、俺とサシャとを組ませたかったのだろう。あの二人は。そして、俺とサシャだけでは生き残れるか不安になったのだ。あの二人は。
だからこそのアルミンの抜擢。なんて可哀想な役回りだ。
「居ました!」
サシャが小声でそう囁く。
即席で作られた弓矢が、その視線の先、白く動く小さな獣へと向けられていた。
立ち止まり、鞄を下ろす。俺に出来る事は、今は荷物持ちくらいだ。
アルミンは少しだけ先に進み、休息出来る場所を探している。はぐれないように、木々には糸が結び付けられている。さすがだアルミン。
そうこうしている間に、サシャが獲物へと狙いを定め、矢を放っていた。
狩猟民族だと名乗ったのは伊達ではないらしい。
方言について言い訳する流れで聞いただけの話ではあったが、手慣れた動作は思わず見とれてしまう程、様になっていた。
「やりました!」
真剣な表情から一転、パッと顔を輝かせて、サシャがこちらを振り返ってくる。
冷気で鼻を赤くしながらのガッツポーズ。
歓喜の声音と共に、白い吐息が吐き出されている。
「……すごいな」
「ふふん、見直しましたか?」
「ものすごく」
「珍しく素直ですね、ナマエ……。あ、はやくアルミンにも見せましょう!」
「その前に、サシャ」
距離を詰め、サシャへと右手を伸ばす。
フードから飛び出している、ぴょんとはねて凍りかけている前髪に触れた。
「まずその変な癖を直せ。ずっと気になってたんだ」
折角の見せ場が台無しだ。
幸い、触れてみるとすぐに固まりはほどけてくれた。
今日はサシャも変に逃げたりはしないようだ。おとなしくしている。
おとなしいサシャというのも、妙な感じはするものだが。たまにはこれもいいかもしれない。
捏造、無理矢理設定な上にお題の癖はそっちやない状態でした……
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