8点。
そう記された答案用紙を眺めて、サシャが固まっている。
心なしか顔色が悪い。
それをひょいと覗き込んだコニーが、軽く目を見開いた。
「うわ、お前……それはヒドいだろ」
「コニーは何点だったんですか?」
「5点だ」
「まさかの下!?」
ドヤ顔で告げたコニーに、二人の会話を聞いていた全員がずっこけた。
あのベルトルトですら驚いていた。ゴホゴホと咳き込んで誤魔化しているようだが、バレバレだ。
5点て。サシャよりひどいじゃねーか。
「あれっ、もしかしてこれって10点満点でしたっけ?」
「そんな訳あるか」
現実逃避なのか何なのか。
ボケた事を言い出したサシャに、反射的にツッコむ。
さっきまで、明らかにマズイという顔を自分で浮かべていただろうが。
「100点満点をアルミンとマルコが取ってるだろ。しっかりと現実を見ろよ」
「そのアルミンとマルコに教えて貰っていたのに、何故でしょう」
「……二人に謝っといた方がいいんじゃないか?」
コニーもサシャも、テストが近付いてから慌てて二人に泣きついていた。
いくらアルミンとマルコと言えども、あまりにも遅すぎたのだろう。
自分達の時間を割いてまで一から丁寧に教えていたというのに……この点数。
気まずそうに苦笑を浮かべている二人が不憫だ。
「……ナマエは何点だったんですか?」
「75点だ」
「普通ですね」
「なんだと!?」
そりゃ高得点と言える程のものでもないが。
8点にだけは言われたくない。
8点にだけは!
「ま、まぁまぁ。落ち着いて、二人とも」
アルミンに宥められる。
最近、このパターンが多い気がするがきっと気のせいだろう。
「そうですよね!終わった事を嘆いていても仕方ありません!」
「いや、そんな話だったか?」
「サシャは他で取り戻せば大丈夫なんじゃないかな?立体機動とか、得意分野でさ」
「まぁ、運動神経はいいからな」
「もしかして褒めてます?」
「それについては褒めるしかない」
立体機動では、俺はサシャやコニーには敵わない。
野性的な勘のなせる技なのか、天性の素質なのか。
スピードや技術、空間認識に把握能力。
ミカサは群を抜いているが、俺にしてみればサシャも充分凄かった。
総合成績で負けているのも、この為だと言える。
実践の方が重要なのだ。
が、8点や5点に負けていると考えると泣きたくなってきた。
せめて何か言ってやろうとサシャを見れば、褒められた事が余程嬉しかったのか、滅多に見ない満面の笑みを浮かべていた。
いや、確かに凄いとは思うが、お前8点だからな?
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