「聞いたよ、ナナシ。お手柄だったそうだな」
いきなり、そうエルヴィンに声をかけられた。何の事だかわからずに首を傾げれば、食堂で、と付け加えられる。
「あぁ、あれか」
ギャーギャーと。
あまりにもうるさかったので立ち寄ってみたのだが。
あれだけの人数がたった一匹に随分と引っ掻き回されていたようだった。
「なんの話をしているんだい?って、ミケも何か知ってるようだね」
「想像は付く…我々の所にまで騒ぎが伝わっていた」
「食堂に害虫が現れたそうだ。それをナナシが一撃で片付けたらしい」
害虫。何故か名を呼ぶ事が躊躇われているようだった。
その点あの黒髪の少女は動じた様子もなく始末を手伝ってくれたのだが、あの時の皆の引いた視線は忘れられない。
「一撃って…まさか叩き潰したりはしていないよね…?」
「違う。ナイフを投げただけだ」
青ざめながら、ハンジが恐ろしい質問を投げ掛けてきた。
そこまでアグレッシブな事はしていない。
「ナイフ?」
「狙えるのは巨人だけではないのか…」
「大抵のものなら仕留められる。得意だと気付いたのはリヴァイのおかげだ」
目を潰す。その為に上空から投げている姿を見掛け、なるほど使えると真似をしてみたのだが。想像以上に狙いが上手くいっていた。
余裕があれば蒸発後に残ったブレードを回収出来る。
「それは知らなかったな…ねぇ、今度なにか狙ってみせてくれないかい?」
「年に何度か街で祭りがなかったか…?そこで使えるかもしれないぞ」
「良い提案だ。私も一度見てみたい…機会があれば行ってみようじゃないか。勿論リヴァイも誘おう」
誘って来るような奴ではないが、エルヴィンの命令だとすれば、従う…のだろうか?さすがに、どうだ?
皆で祭りを楽しむ姿など想像できない。それでも、悪くない、と思ったのは、たまにはそんな息を抜ける日があってもいいと思えたからだった。
***
104期生と大人組が別れてしまいました。そしてむりやりすぎるほのぼの感ですが…!
翠嵐さま、リクエスト有り難うございました!(*^^*)
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