あぁ…もう。
面倒だな。

隣の男が低くそう呟くのを聞いて、リヴァイは動きを止めた。
壁外での拠点。補給ルートと呼ばれる場所に二人は居た。撤退命令は出ているが、運悪く──と言えばいいのか、運良く、と言えばいいのか。他の班員と離れたタイミングで、二人だけが巨人に囲まれてしまったのだ。
次から次へと現れる巨人に、ナナシの機嫌が降下している。

長い年月と多大なる犠牲を払って築きあげた補給所だ。
出来る事なら無傷のままで離れたかった。人がいなければ、奴等が興味を示すものは此処にはない。

極力戦闘は避け、脱出の機会をはかっていたのだが。
それもどうやら限界のようだった。
どこから沸いて来やがるのか、わらわらと群がり始めた巨人が俺達を捕まえようと屋根を崩したところで、ナナシが切れた。

巨人の事となるとナナシの沸点は低い。
今回も犠牲者はゼロではない。
苛立つのも仕方のない事だろう。


「…リヴァイ」

「チッ…やるしかねぇな」

「あぁ」


片付けて、合流する。
ナナシが頷く。
幸い、替えのガスも刃もここには山程置いてある。やるならやるで、一秒でも早く終わらせる方がいい。
最小限の会話で、決定する。

刃を構えたナナシが、アンカーを射ち出した。軽く屋根を蹴り、空中に身を投げ出す。
不気味な程に凪いだその眼差しは、巨人の弱点、その一点を見据えている。

標的を誤る事はない。正確に、確実に。
一撃で決めて、ナナシは次へと向かう。
大口を開けて迫る12メートル級を立体機動でかわし、その勢いのままで物陰に潜んでいた小型の巨人を削ぎ落とした。
左のアンカーを撃ち、先程の巨人の背後に回る。また一体。

ナナシを掴もうと伸ばされる手は空を切り、勢い余ったのかどうなのか。転んだ巨人に数体が巻き込まれている。
当然、その隙は見逃さない。

蒸気でその姿が見えなくなるのを見計らい、別の方角へと向かって俺も身を躍らせた。
補充のタイミングをずらすなら、この程度で十分だろう。

あとは、削ぎ落とすだけだ。
全部を。
加減はいらない。
周りを気にする必要もない。

動く巨人が見えなくなるまで、俺達はひたすら討伐を続けた。





「救援は不要だったようだな」


部下を引き連れたエルヴィンがやってきたのは、それから間もない頃だった。
撤退命令に姿を現さない俺達二人を心配したんだろう。
無駄な心配だ。


「撤退しようにも囲まれて動けなかった。わざわざすまない、エルヴィン」

「いや、無事で何よりだ」


ナナシはもう落ち着きを取り戻している。さすがに疲労はしているようだが、怪我は無い。
補給所も無事、と言っていいだろう。所々崩れてはいるが、問題は無い筈だ。


「これを…お二人で…?」

「すごい…」


エルヴィンに連れられてやってきた部下達がそんな事を呟いていたが、それを聞いたエルヴィンはと言えば苦い笑みを浮かべていた。


「あまり無茶はしてくれるなよ」


それはどっちに言ってるんだ?
問う気にもなれず、聞き流す事にする。
蒸発した後も不快な感触の残る手を拭い、そのままハンカチをナナシへと押し付けた。


***

バッサバッサと…
かっこいい男主とリヴァイ…
………を書きたかった!!!のですがこれが限界でしたorz
リクエスト有り難うございました!(*^^*)

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