ミーナ視点
雑談は楽しい。
大変な訓練の合間であっても、みんなと話していればいつの間にか疲れもどこかへ飛んでしまっている。
エレンとジャンはいつものように喧嘩を始めているし、それを止めるのもいつものようにミカサだけれど、遠くから眺めている分にはどれも微笑ましい事だった。
アニからは変わってるねアンタ、なんて言われたけれど、アニだって笑ってるんだから一緒だよね。
笑ってないよ、とかなんとかアニは言っているけど無視だ。そんな分かりやすい嘘には騙されないからね!
そんな会話をしていると、コニーがはっと声を上げた。ある一点を指差している。
「あれナナシ分隊長じゃねーか!?」
「あ、本当ですね!呼んでみましょう!」
すぐにそっちを見てみると、コニーの言った通りの人物がそこに居た。
ナナシ分隊長だ。なんでここに居るんだろう?けど、なんでもいい!
サシャが声を張り上げながら手を振っている。私もそれに続く事にした。
「ナナシ分隊長ー!」
「ナナシ分隊長ー!!って…あれ?隣に誰か居ない?すごく目付きの鋭い…ひっ!?」
「どうしたミーナ!?」
「に、にら、にに睨まれた!?」
「えっ!?ナナシ分隊長にか!?」
いつの間にこっちに来たんだろう。エレンがびっくりしたように目を丸くして私を見ている。って、違うよ!ナナシ分隊長が睨んでくるわけないよ!
「隣でしょ?」
「あ、そっちか」
「そうだよ、エレン。ナナシ分隊長がそんな事するはずがないよ」
アニが冷静に指摘してくれた。さすがアニ!そしてアルミンも!
エレンってあれだよね。時々天然だよね。いや、悪い意味じゃないよ!?いい意味で!いい意味で!!だから睨まないでミカサ!なんで心の声がわかるの!?
「どうした?」
ミカサに向かってぶんぶんと手を振っていると、ごく至近距離からそんな落ち着いた、低い声音が聞こえてきた。
バッとそちらへ振り向けば、さっきまで自分たちが呼んでいた人物が目の前に!
コニーが弾んだ声音で分隊長の名前を呼んだ。目が輝いている。純粋に憧れているんだろうな。
「お久しぶりです!」
「久し振りだな、スプリンガー。相変わらずいい頭をしている」
「へへ」
「お久しぶりです、今日は視察か何かですか?」
「ああ、そんな所だ。ボット、今は休憩中か?」
「はい!」
頭をグリグリと撫でられて、コニーは嬉しそうだ。
気付けばマルコやライナー、ベルトルトたちもこちらへ集まっていた。
ダズも近付きたそうにチラチラと視線を送ってきていた。クリスタ!そんな!ダズの手を引いたりなんてしたら…!ほらユミルが直ぐさま引き離しにかかってる!
ユミルに睨まれたダズがビクッと身を竦めたものの、雑な仕草で背中を押されて意を決したようにこちらにやって来ていた。
「そう言えば、明日の午後からの立体機動術だが…俺も採点に参加する事になった 」
「ナナシ分隊長が!?」
「これは余計に頑張らなくちゃいけないね、ジャン!」
「ミーナ?なんでいきなり俺に振るんだよ?」
「だって、いつもいい所でサシャやコニーに先越されてるんでしょ?」
私は見た事はないんだけど。というか、ジャン達のスピードには追い付けない。
いつも終わった後に騒いでいる姿を見かけるだけだ。
私の言葉にぐっと息を詰まらせたジャンが、闘志を燃やして拳を握り締めた。
「そうだった…いつもいつもアイツら、俺の獲物を…!おいコニーにサシャ!明日は負けねぇからな!」
「負けないのはコニーとサシャにだけでいいのか?」
「ライナー…!」
ニヤニヤと、ライナーがそんな口を挟む。ベルトルトが止めていたけれど、立体機動ならベルトルトもいい成績だったよね。
「お前らにも負けねぇ!」
「勝負するか」
負けられない戦いが、ここにある。
そんな雰囲気だ。
少しだけ羨ましくなってきた。
「ねぇダズ、私達も勝負しようか?」
「俺と!?」
「正直付いていくのに精一杯だけど、ナナシ分隊長にいいとこ見せた方の勝ち!」
「そ、それなら…!」
たまには、悪くないよね。
そんな風に盛り上がっていると、お前達、と。静かだけれとよく通る声が、私達を呼んだ。
ナナシ分隊長が、穏やかな瞳に苦笑を浮かべている。
「燃えるのはいいが、事故は起こさないようにな」
「気を付けます…!」
「よーし!やるぞお前ら!!」
「おう!!」
男子達の、やる気をみなぎらせた声が響く。
その後もわいわいとナナシ分隊長を囲んで、色々な話をした。こんなに長く話せる機会は滅多にないのだ。
キース教官も事情を汲んでくれたのか、この日の休憩時間はいつもより少しだけ長くなった。
***
友情出演・リヴァイ
なんて…睨んだ訳ではなくただチラッと見ただけですすみませんでした!
お兄さん的になれていればいいなと思います…!
吹雪さま、リクエスト有り難うございました!(*^^*)
back