ご無事でいてください。
自分で言ったその言葉が、いまだに頭に残っている。
どうして、あんな事を言ってしまったんだろうか。
このところ、どうも、おかしい。
いつもエレンが心配だった。
私がいないと早死にしそうで。
守らなければ。
もう家族を失いたくない。
ずっとそう思っていた。
なら…
このナナシ分隊長への感情は、なんなのだろうか?
どうしてこんなに、心配なのだろうか。
ナナシ分隊長は強い。誰よりも強い。人類最強と呼ばれるあの人にも、負けないくらいに。きっと。
不安にさせているのは、むしろ私達の方なのだろう。
すべてを守れるほど、人は強くない。そう言ったナナシ分隊長は、悲しげだった気がする。
守れなかったのだろうか…
ナナシ分隊長も、誰かを。
胸が痛い。
どうすればいいのだろうか。
安心して欲しい。
笑って欲しい。
もうなにも、失って欲しくない。
駆逐…
駆逐すれば、それが叶う?
一匹残らず。私たちから、ナナシ分隊長から、大切なものを奪っていく巨人達を。
☆
「アルミン。有り難う。結論が出た」
「待ってミカサ!途中からおかしくなっちゃってるから…!」
「?」
「落ち着いて、考えなおそう!」
アルミンには正解を導きだす力がある。そう思って悩みを聞いてもらっていた。
話すうちにすっきりとした気分になっていたのだけれど、どこか慌てたようにアルミンに制止された。
なにか駄目だっただろうか。
「おかしい?」
「うん。途中まではすごくいい感じだったんだけど、最後の最後でエレンが出てきちゃった感じかな」
困ったように、アルミンが眉を寄せている。
それは確かに、おかしい。今は、ナナシ分隊長の事を考えていた筈だった。
「ミカサはさ、どうしてナナシ分隊長が心配なの?」
「……わからない」
「ミカサが守る必要がないくらい、強い人だよね」
「けれど、もう傷付いて欲しくない」
そう…
そうだ。
きっと、傷付いている。
失う事を、恐れている。
あんな目を、して欲しくない。
「それはさ、ナナシ分隊長の事が大切だからじゃない?」
「大切…」
「好きなんだよ、きっと」
「…………」
大切で、
好き。
それは、とてもわかりやすい。
納得するしかない言葉だった。
あんなにわからなかった感情が、すとんと胸に落ちてくる。
とても、簡単な事だった。
言われてみれば、それしかない。
やっぱりアルミンはすごい。
「も、もちろん尊敬的な意味でだと思うんだけど、どうかな…!?」
黙ってしまったからだろうか。
アルミンが焦ったようにパタパタと手を振っている。
「アルミンはすごい」
「えっ?」
今日は相談して良かった。
ありがとう、と。
その手を取って、ぎゅっと握る。
なんだかとても久し振りに触れたような気がする。あたたかい。え?あ、うん?と戸惑ったような、どこか照れたようなアルミンの声を聞いて、それからもう一度、ナナシ分隊長の事を考えた。
「なにしてんだ、お前ら…?」
というエレンの不思議そうな声を聞くのは、そのすぐ後の事だった。
***
ミカサの乙女度3割増し…くらいでしょうか…
変化させすぎたかもしれません…!
そして気付けばアルミンが出ていました!
リクエスト有り難うございました!(*^^*)
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