ご無事でいてください。
自分で言ったその言葉が、いまだに頭に残っている。
どうして、あんな事を言ってしまったんだろうか。


このところ、どうも、おかしい。

いつもエレンが心配だった。
私がいないと早死にしそうで。
守らなければ。
もう家族を失いたくない。
ずっとそう思っていた。

なら…
このナナシ分隊長への感情は、なんなのだろうか?
どうしてこんなに、心配なのだろうか。
ナナシ分隊長は強い。誰よりも強い。人類最強と呼ばれるあの人にも、負けないくらいに。きっと。

不安にさせているのは、むしろ私達の方なのだろう。
すべてを守れるほど、人は強くない。そう言ったナナシ分隊長は、悲しげだった気がする。

守れなかったのだろうか…
ナナシ分隊長も、誰かを。

胸が痛い。

どうすればいいのだろうか。

安心して欲しい。
笑って欲しい。
もうなにも、失って欲しくない。


駆逐…
駆逐すれば、それが叶う?
一匹残らず。私たちから、ナナシ分隊長から、大切なものを奪っていく巨人達を。





「アルミン。有り難う。結論が出た」

「待ってミカサ!途中からおかしくなっちゃってるから…!」

「?」

「落ち着いて、考えなおそう!」


アルミンには正解を導きだす力がある。そう思って悩みを聞いてもらっていた。
話すうちにすっきりとした気分になっていたのだけれど、どこか慌てたようにアルミンに制止された。
なにか駄目だっただろうか。


「おかしい?」

「うん。途中まではすごくいい感じだったんだけど、最後の最後でエレンが出てきちゃった感じかな」


困ったように、アルミンが眉を寄せている。
それは確かに、おかしい。今は、ナナシ分隊長の事を考えていた筈だった。


「ミカサはさ、どうしてナナシ分隊長が心配なの?」

「……わからない」

「ミカサが守る必要がないくらい、強い人だよね」

「けれど、もう傷付いて欲しくない」


そう…
そうだ。
きっと、傷付いている。

失う事を、恐れている。
あんな目を、して欲しくない。


「それはさ、ナナシ分隊長の事が大切だからじゃない?」

「大切…」

「好きなんだよ、きっと」

「…………」


大切で、
好き。

それは、とてもわかりやすい。
納得するしかない言葉だった。

あんなにわからなかった感情が、すとんと胸に落ちてくる。
とても、簡単な事だった。
言われてみれば、それしかない。
やっぱりアルミンはすごい。


「も、もちろん尊敬的な意味でだと思うんだけど、どうかな…!?」


黙ってしまったからだろうか。
アルミンが焦ったようにパタパタと手を振っている。


「アルミンはすごい」

「えっ?」



今日は相談して良かった。
ありがとう、と。
その手を取って、ぎゅっと握る。
なんだかとても久し振りに触れたような気がする。あたたかい。え?あ、うん?と戸惑ったような、どこか照れたようなアルミンの声を聞いて、それからもう一度、ナナシ分隊長の事を考えた。


「なにしてんだ、お前ら…?」


というエレンの不思議そうな声を聞くのは、そのすぐ後の事だった。


***

ミカサの乙女度3割増し…くらいでしょうか…
変化させすぎたかもしれません…!
そして気付けばアルミンが出ていました!
リクエスト有り難うございました!(*^^*)

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