▼ リヴァイ班で餅つき
ペトラ視点
「なんですか、これ?」
不思議そうに、私達を見つめて問いかけてきたのはエレンだった。
視線の先にあるものは、正確には杵と臼。そして湯気を立てている餅米だった。
掃除と草むしりを終えた庭に、その一式を運び出したのだ。
「餅つきって言ってね。これを突いて、お餅にするのよ」
「熱そうですね…」
「冷える前に仕上げる。それがプロの仕事ってもんだ」
オルオがまた、よく分からない事を言っていた。何の説明にもなっていない。プロでもないでしょ。
そうなんですか、と答えたエレンも、きっと良く分かってはいないのだろうけれど。最近は流す事も覚えたらしい。
「掃除をしている時に見つけたんだが、せっかくだからと材料を用意して貰えてな。エルヴィン団長に会ったら礼を言っておけよ、エレン」
「はい!」
ジャケットを脱いでシャツの袖を捲っているエルドは、やる気に溢れているようだった。
杵を手に、早速餅米潰しに取りかかっている。
グンダには、リヴァイ兵長とナナシ分隊長を呼びに行ってもらっていた。
参加してもらえるかどうかは分からないけれど、出来上がったものを何よりあの二人に食べて貰いたい。
「エレンにも頑張ってもらうからね!」
「はい!」
水の入った桶も準備出来た。
あとは交代でつき始めるだけだった。
***
ぺったん、ぺったん、とつかれるタイミングに合わせて、餅を返していく。
初めは慣れない様子だったエレンも、大分コツを掴んできたようだった。
「頑張れエレン!」
「まだまだ行けるぞ!」
「いや…ちょっ、もう結構、しんどいんですけど…!?」
大分息が上がってきている。
餅つきを続けながらも、無責任な声援に弱気な声を上げていた。
エルド、グンダ、オルオの三人は完全に休む体勢に入っている。エレンに任せるつもりのようだった。
杵は意外と重い。慣れない姿勢も、腰にくる。見た目の楽しさとは裏腹に、重労働な行為だった。
「変わろう」
そんな時だった。
ナナシ分隊長が、立ち上がったのは。
エレンの元まで歩み寄り、杵を受け取っている。
まさか。ナナシ分隊長が。
来て貰えただけでも、最近までは考えられない事だったと言うのに。
リヴァイ兵長やナナシ分隊長と一緒に、餅つき。特別作戦班のメンバーに選んでもらえて、本当に良かったと思える瞬間だった。
「リヴァイ、お前も参加しろ」
「……おい」
ナナシ分隊長はそう言うと、先程エレンから受け取ったばかりの杵を、リヴァイ兵長へ手渡してしまった。
それからこちらへと向かってくる。
「ラル、交代する」
「あ、有難うございます…!」
すぐ側で膝を落とした分隊長と、入れ替わるように場所を交代する。
杵を渡されたリヴァイ兵長は暫くの間ナナシ分隊長の行動を眺めたあと、
「ナナシ、てめぇ…楽な方を選んだだろう」
そう言いながらも、立ち上がってくれたのだった。
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兵長と分隊長の本気の餅つきが始まります!(爆)
二人は椅子に座ってリヴァイ班の餅つきを眺めていました。
りゅうなさま、リクエスト有難うございました!