お正月企画 | ナノ


▼ 分隊長主がもし104期生だったらで、超大型巨人と遭遇する話

一巻時にもし夢主がいたらの内容です

解散式を終え、あとは配属を希望する兵団を決めるばかりとなった日の午後。
固定砲を整備する傍らで、エレンが頓狂な声を上げていた。


「はぁ……!?調査兵団にするって?コニー……お前8番だろ!?前は憲兵団に入るって……」

「憲兵団がいいに決まってるだろ……けどよ……」


その相手であるコニーは、若干気まずそうに答えを言い淀んでいる。
憲兵に入れば安定した暮らしを送れる、だけではなく、調査兵団に入ってしまえば命すら危うくなる。
どちらを選ぶかと問われれば、ほぼ全ての者が憲兵を選ぶだろう。
怪訝そうにコニーを見つめるエレンに、トーマスが空気を読まずにあっさりと口を開く。


「お前の昨日の演説が効いたんだよ」

「は!?」

「イ……イヤ!!オレは……アレだ……そう!ジャンだ。ジャンと同じ兵団に入りたくねぇだけだ!」

「どれだけ嫌なんだ……」


あまりの言われようについ口を挟んでしまっていた。皆の視線が一斉にこちらを向く。
確かに昨日のジャンの言い分は開けっ広げが過ぎて同意しにくいものとはなっていたが、コニーが調査兵団を選んだ理由は明らかにそれとは違うだろう。
トーマスの方が正しい。
隠さなくてもいいだろうに。
笑いを堪えきれていなかったせいか、コニーがギラリとこちらを睨み付けてくる。


「う、うるせぇ!つーかオレだけじゃなくてナナシもだろ!?」

「は……はあ!?」

「言っていなかったか……?俺も調査兵団希望だ」

「いつの間に!?」


エレンは目を剥いて驚愕していた。
そう言えば昨日の送別会はミカサに連れ出されたまま、結局戻っては来なかったのだったか。
確かに以前まで……と言うより、最近までずっと、俺は憲兵団を目指してきた。
わざわざ死に急ぐような真似をする意味が、理解出来なかった。
昨日のジャンの言葉も、共感出来るものが多い。
…………帰還する調査兵団の姿を見るまでは、そうだった。


「色々あったんだ」

「色々って……」

「あのぅ、みなさん……上官の食糧庫からお肉盗ってきました」

「……!!?」


唐突に、懐に肉の塊を忍ばせたサシャが現れた。
まるで共犯者へ成果を発表するような様子で。
何か聞きたそうだったエレンの表情が真っ青に変化している。他の皆も、あまりの事に言葉を失っていた。
俺自身も数秒、固まってしまっていた。
内容が恐ろしすぎて理解が追い付かない。

上官の食糧庫から。
肉を。
盗ってきた?


「………………」

「サシャ……お前独房にぶち込まれたいのか……?」

「お前……本当にバカなんだな」

「バカって怖えぇ……っておい、どこ行くんだナナシ?」

「…………俺は何も聞いてない」

「一人で逃げる気か!?」


踵を返した途端に声を掛けられてしまったが、何も見ていないのだから、逃げるもなにもない。
逃げる必要がない。
そうだ、俺たちは今固定砲の整備をしているだけだった。

サシャ達から距離を取り、作業に取りかかる。
ミーナ、トーマス、サムエルと、何やら盛り上がり始めたような気配は感じたが、戻る気にもなれなかった。
無意識にか、皆の背中を押したサシャの一手は俺にはリスクが大きすぎる。
独房は体験したくない。

この場に居る6人と、あとはミカサ。アルミンはどうするか分からないが……
調査兵団を希望する人数は、確実に増えている。エレンの影響だろう。
俺には良いとも悪いとも言えない状態だった。入団は多い方がいい。けれど、どれだけが生き残れるのだろうか。

壁の外は地獄だと言う。


「───!!!!?」

「熱ッ…………!?」

「な!!?何が───!!?」


気付いた時には熱気に体が吹き飛ばされていた。
抗う術もなく押し出され、体が宙に投げ出される。
蒸気が視界を覆っていた。

熱い。
見えない。
一体何が。

聞こえたのは皆の戸惑う声と悲鳴。

──落ちている。


「立体機動に移れッ!」


そう理解した瞬間に、エレンが叫んでいた。
落下により、蒸気からは抜け出せていた。
目前に見えた壁面へアンカーを撃ち出す。
体勢を立て直し、見上げた先。
五十メートルの壁を越えて。

五年前、シガンシナの壁を破壊したという超大型巨人が、顔を覗かせていた。


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