お正月企画 | ナノ


▼ 分隊長主でほの甘なペトラ夢A

髪を撫でる、ひどく優しい感触が先程から続いている。
そっと、何度も。その手がいつも数多の巨人を葬っているとは思えないような、優しい触れ方だった。

肩、腰、腿と体を締め付ける立体機動のベルトは、今日は外されている。
その膝……というよりは、少し上の太股のあたりに頭を乗せ、いわゆる膝枕をしてもらっている状態だった。
好かれていると実感できる。
その上私の独り占めだ。


「…………ナナシ分隊長」

「どうした?」


上から降ってくる声はとても穏やかだった。手の動きが止まり、温かい感触だけが耳の少し上あたりで止まっている。
正面から見上げてみたい、けれど。
やっぱりそれはまだ恥ずかしい。
横を向いたまま、ナナシ分隊長の手に自分の手のひらを重ねた。


「…………固くないか?」

「それがいいんです」


寝心地は、とてもいい。
ナナシ分隊長を近くに感じられるなら、なおさら。
普段はこんなに近付けない。それはナナシ分隊長が纏う空気が違うせいでもあり、おいそれとは近寄れない環境のせいでもあった。
オルオやエレンに、自分のこんな姿は見せられない。ましてや、兵長にだなんてとてもとても……!


「俺は柔らかい方がいい」


落ちてきた正直な感想に、思わず笑ってしまった。
あとで、変わってみてもいいのかもしれない。ナナシ分隊長が、それを望むなら。


「…………幸せですね」


思わず溢れた呟きに、ナナシさんが笑った気配がした。



********


膝……と言うよりは、少し上。太股の辺りに、ペトラの頭が乗っていた。
正面で向き合うのは恥ずかしいのか、横を向いた顔はそれでも耳が赤く染まっている。表情は窺えないが、照れているらしい事はすぐに分かった。
ベルトを外した不思議な解放感と、暖かな陽射し。
すぐ近くに感じる体温は心地いいものだった。


「…………ナナシ分隊長」

「どうした?」


耳の上、額から頭頂部のあたりを撫でサラサラとした感触を楽しんでいると、ぽつりと呼び掛けられた。
髪に触れていた右手の上に、そっと彼女の手が重ねられる。
言葉はない。
変わりに、ぎゅっと手が握られた。


「…………固くないか?」

「それがいいんです」

「俺は柔らかい方がいい」


正直に告げると、ペトラは笑ったようだった。
普段からこうあってくれればいいのに、とは思う。
古城ではいつも、距離がある。なかなか近付いては来てくれない。
俺はリヴァイのせいだと思っている。


「……………幸せですね」


ぽつりと溢された呟きには、同意するしかない。
そう思ってくれるのなら、許してもくれるだろうか。
こちらを見て唖然と口を開けているボザドとエレンの姿が見えたのは、少し前の事だった。
驚きすぎて声も出なかったらしい。
ペトラは隠したがっていたようだが。
そろそろ諦めてもらう事にしようか。


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