お正月企画 | ナノ


▼ 分隊長主で、兵団の資金集めのパーティーでハンジと甘い話

貴族の集い。
彼らをもてなすためのパーティーは、調査兵団を維持する為の大事な資金源になる。面倒そうにしながらも、あのリヴァイでさえ参加している。
ただ、大体の事はエルヴィンに任せておけばどうとでもなるのだろう。簡単な挨拶の後は人の輪を外れ、ただただこの時間が終わるのを待つ。
着なれない正装も、見慣れてしまえばそこそこ似合って見えるようにはなるだろう。


「あれ?飲んでないのかい?」

「……止められているからな」


グラスを片手に、ハンジが歩み寄ってくる。
貴族に囲まれ何かと話し込んでいるエルヴィンとは違い、ハンジは食事や飲み物にと、楽しんでいる様子だ。
壁際からは、その動きが良く見えていた。


「今日はみんないるから大丈夫じゃない?」

「手に取ろうとした瞬間に、ミケがすかさず割り込んでくる」

「そんな事になってんの!?」


パーティー前にエルヴィンからそれとなく止められてはいたのだが、まさかそれが物理的なものにまで及ぶとは思わなかった。
どういう訳か、ミケは俺が手にする飲み物を瞬時に嗅ぎ分けているらしい。
まるで見張りだ。
俺は子供か。
飲む分量さえ間違わなければ悪酔いする事もないのだが。


「ナナシが壁と一体化してるのはいつもの通りだけど、たまにミケと話し込んでるから何か真剣な話題でもあるのかと思ってたら……ぶふっ……そんな愉快な事になってたなんて……」

「………………」

「これ、あげようか?」


笑いを堪えきれていない。
ニヤニヤとした残念すぎるその表情も、今日の衣装ではいつもと随分違って見える。
兵団に所属していると普段着でさえ滅多に目にする機会はないというのに、今日はドレス姿だ。
結い上げられた髪は、普段の脂ぎった様子は微塵もなくサラリと項に垂れている。
ハンジから差し出されるグラスは無視し、その髪へと手を伸ばした。


「……綺麗だな」

「!!?」


触れてみても、やはりいつものギトギト感はまるでない。
ふと視線を横へとずらすと、顔を赤くしたハンジがなにやら小さく呻いていた。
ああもう、と聞こえたような気がする。


「……ハンジ。髪だけじゃなく、そのドレス姿も──」

「い、いい!言わなくていいから!」

「綺麗だ」


無視して、言い切る。
恥ずかしがるハンジというのも、なかなか見られるものでもない。
髪から、赤く染まった頬へと手のひらを移動させる。少し熱い。

グラスを持ったままでは咄嗟に後ずさる事も出来なかったのか、僅かにピクリと後ろへと動きかけたものの、ハンジはそのまま俺を見上げてきた。


「ナナシ、酔ってないんだよね?」

「今日は飲んでない」

「あー……うん、そっか……。ナナシも格好いいよ」


似合って見えるようにはなっていたらしい。退屈なだけのパーティーにならないのは、ハンジのおかげだろう。


「……なんか熱くなってきたんだけど」

「風にでも当たりに行こう」

「エルヴィンに言っておかないと」

「大丈夫だ」

「うん……?なにがだい?」


不思議そうにそう訊ねてくる彼女に、半歩分程距離をあける。
視線でその理由を示せば、俺の目線を追ったハンジがガクリと膝を付いた。


「見てたとか……!!」


軽く手を振っているエルヴィンは、とてもいい笑顔を浮かべていた。




***
零れた中身はきっとモブリットが綺麗にしてくれる
樹春さま、遅くなりまして申し訳ございません!リクエスト有り難うございました!!

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