お正月企画 | ナノ


▼ 分隊長主が貧血で倒れて周りが心配する話


ドサリ、と。
重い何かが倒れる音に、ナナバは足を止めた。
いや、何か、ではなくまるで人の──そう思い振り返った先で、見覚えのある頭が俯せに倒れている。

え……?
と、時間が止まったかのような静寂。
一拍置いて、誰かが悲鳴のような声を上げた。


「ナナシ分隊長っ!?」

「しっかりしてください、ナナシ分隊長!」


ナナシ、が、倒れている。
ペトラやモブリットの呼び掛けにも、まるで反応がない。

すぐそばに膝を付いたのはリヴァイだった。その表情は険しい。
抱き起こされた顔色は、とても、悪かった。ぐったりと、目を閉じている。
次第にざわつき始める周囲の中で、団長だけが的確に、救護の指示を出していた。



***


ゆっくりと開かれた瞼に、知らず安堵の息が漏れる。
貧血だろうね、と告げたハンジは今は席を立っている。何か精のつくものを持ってくるよ、と、青い顔になんとか苦笑を貼り付けていた。

まさかナナシが倒れるだなんて。
ミケに医務室に運んでもらってからは、目覚めるまでにそれほどの時間はかからなかったけれど。
完全に意識を失ってしまっていたナナシに、どれ程の人間が肝を冷やした事だろうか。

何度か瞬いた後、ナナシの視線が私と、隣に立っているミケを捉える。
良かった、と思わず呟くと、不思議そうに名前を呼ばれた。


「……ナナバ、ここは?」

「医務室だよ。ミケが運んでくれた」

「そうか……倒れたのか、俺は……。ミケ、すまなかった」

「あぁ」


まだ顔色は悪い。
深く息を吐き出したところに、リヴァイが壁際から離れてこちらへ近付いてきた。


「人騒がせな野郎だ」

「…………悪かった」

「後でガキ共にも顔を見せておけ」


ガキ共、と言うのは104期生の事だった。
特にリヴァイ班として私たちの近くに──あの場にいたエレンは、ひどく狼狽してしまったようだ。
エルヴィンの指示によって解散はされたものの、ナナシの様子を一目見に来ようとする者は多い。みな不安なのだろう。

ただ、あまり騒がしくする訳にもいかない。
人払いをするためにも、リヴァイはずっと入口近くの壁に背を預けてナナシの快復を待っていた。


「今回は本当に驚いたよ。ナナシ、無理はしないで欲しい」

「あまり心配をかけるな」


ミケが続けて言ってくる。
顔には出ていなかったけど、やっぱり心配していたようだ。
私たちの視線を受けて、ナナシは僅かに眉尻を下げていた。


「あぁ。すまない」


わかればいいんだけど。
もう、あんな気分は味わいたくないものだ。

どこから調達してきたのか、皿一杯の肉を持ち帰ってきたハンジが目覚めたナナシに飛び付くのは、もう少し後の事だった。



***

ものすごく強制的に無理矢理食べさせられる展開です
貧血でここまで完全に意識を失う事はないかと思いますが……フィクションです!
刹那さま、リクエスト有難うございました!

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