お正月企画 | ナノ


▼ ミカサ夢で、分隊長主が怪我をしてミカサが取り乱して心配をする話。その後ラブラブ


頭から、血を流している姿を見つけた。

右目までをも覆うようにぐるぐると巻かれた包帯には、じわりじわりと止まる事なく血が滲み込んでいる。
遠目からも分かる程に、赤い。
一人で歩くその姿に、思わず目を見開いた。


「ナナシ分隊長……っ!」


声に驚いたように、ナナシ分隊長が顔を上げる。
傷口を押さえているのだろうか。右手は頭に添えられたまま。髪は血で固まってしまっている。
軽傷にはとても見えない。
さっと血の気が引いていくのが自分でも分かった。

急いで駆け寄る。
背後から、ミカサ!?と私を呼ぶ声がした。サシャだ。けれど、答えている余裕はなかった。
ドクリ、ドクリと大きく心臓が鳴っている。
どうして、そんな状態で一人で!


「っ、どこでお怪我を……!?」


正面から見上げると、やはり驚いたような眼差しが私を見ていた。
近付くと良く分かる。血の臭い。死の臭いだ。
半ば無意識に、下ろされた方の腕を掴んでいた。


「歩いてはいけない!早く、内地に──治療しないと…!」


上手く言葉が出てこない。
焦る気持ちが空回っている。
目元が熱い。
泣き出しそうになってしまっていたのかもしれない。
ナナシ分隊長が、困ったよう私を呼んだ。


「……ミカサ。大丈夫だ」

「でも」

「落ち着け。出血は酷いが、それほど深い傷じゃない」

「……………」

「医療班に見てもらうだけで十分だ。……心配をかけて、すまない」


安心させる為だろう。片方だけ覗くその目が、少しだけ細められる。笑ったようだった。

ナナシ分隊長は、たまに、とても無茶をする。
ぐるぐると巻かれた包帯も、それを心配した誰かが巻いたものだろう。
誰か。私ではない誰かが。

立体機動装置も外されている。
応急手当ては、もう済んでいる。
口調もはっきりしていた。
大丈夫。


「大丈夫だ」


不安な気持ちを読まれたのだろうか。
もう一度、ナナシ分隊長はその言葉を繰り返した。


「…………とても、心配した」

「あぁ」

「ので、ナナシさんは、今日は私の傍にいるべき」

「そうだな」


あっさりと。
頷かれた事に驚く。
今の言葉は、ただの我が儘だった。離れたくない。傍にいたい。安心させて欲しい。
そんな勝手な感情だ。


「治療が終わってからで構わないか?」


けれど、そんな。
私を甘やかすような言葉を口にするナナシ分隊長の声は、どこまでも優しいものだった。
いいのだろうか。戸惑い力を失った指先が、掴んでいた腕から離れる。

けれど、その手を。
ナナシ分隊長の左手に、包み込まれた。
するりと、手が繋がれる。


「傍にいてくれ、ミカサ」

「!」


はっきりと、鼓動が跳ねた。
生きている温度がする。
返事の変わりにぎゅっと手を握り返すと、ナナシ分隊長が微かに笑った気配がした。



***


いちゃついてないで早く治療しろ、とか周りに思われていたらいいと思います(笑)
Keoさま、リクエスト有難うございました!

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